「先生と生徒の垣根を越えた関係」教え子2人にわいせつ行為の塾講師”やる気スイッチが入った瞬間”

「胸部への接触は、偶然に手の甲や腕で触れてしまったことがきっかけでした。その感触が残ってしまい、いつしか手のひらで触れたいと思うようになってしまいました」 勤務していた学習塾の教え子にわいせつな行為をして逮捕された45歳の男は、“やる気スイッチ”が入った瞬間を公判でこのように述べた。 「’25年9月14日、警視庁少年育成課と野方署の合同捜査本部は、株式会社『やる気スイッチグループ』が運営する個別指導の学習塾『スクールIE』の元教室長・石田親一被告(45)を不同意わいせつの疑いで逮捕しました。石田被告は教え子である女子中学生Aさん(当時15歳)の胸や太ももなどを触った疑いがもたれています。 10月2日、やはり教え子である女子中学生Bさん(当時13歳)に塾校舎内で抱きつくなどのわいせつな行為をした不同意わいせつの疑いで捜査本部は石田被告を再逮捕。石田被告は過去にも生徒の体に触れ、保護者からクレームが入ったことがあったといいます。事件後、学習塾を懲戒解雇になっています」(全国紙社会部記者) その後、検察はAさんに対する不同意わいせつ、Bさんに対する暴行の罪で石田被告を起訴した。 11月28日、東京地裁で初公判が開かれた。 石田被告が勤務していた学習塾は、生徒の横に先生が座る個別指導のため、座席ごとに仕切りがあり、周囲からは見えにくい環境になっていたようだ。AさんもBさんも小学生の頃から石田被告の授業を受けており、被害者本人たちだけでなく、その家族からも信頼されていたという。 しかし、検察官が読み上げた起訴状や冒頭陳述などから明らかになったのは、自分を慕う生徒の気持ちを逆手にとった、石田被告の卑劣な犯行だった。 ◆何事もなかったかのように触り続けた 「被告人はAさんの個別指導を継続して担当しておりました。そしてAさんの隣に座る際、手をAさんの太ももに置いて触るということを繰り返していました。また、Aさんの胸を着衣の上から触ることもありました。 今年3月の授業中、被告人はAさんの服の中に手を入れて下着の上から胸を触ったのです。Aさんが体を避けても、被告人は胸から手を離さず、何事もなかったかのように話しかけておりました。Aさんは被告人に止めるよう言っても、何事もなかったかのように振る舞われたらどうしようなどと考え、言い出すことができなかったのです」(Aさんへの犯行) 「被告人はBさんが中学生になった頃から、隣に座ると、Bさんの太ももを触るようになりました。今回の犯行に至るまでに10回程度、触っています。 今年の1月、被告人は『誕生日プレゼントを渡したい』とBさんを塾校舎に呼び出しました。誕生日プレゼントのマンガ本を受け取ったBさんが帰宅しようとすると、被告人は突然Bさんの正面から手を回して抱きつき、『もう少しこのままでいい?』などと言いました。Bさんは気持ち悪いと感じましたが、突然のことで呆然とし、拒否できませんでした」(Bさんへの犯行) これら、検察が指摘した罪を石田被告は認めている。しかし、捜査段階で、「Bさんに抱きついたのは性的な目的があったわけではなく、感情が高まり、親愛の情から抱きしめたいと思った」と供述していたことで、逮捕容疑の不同意わいせつではなく暴行の罪で起訴されたようだ。 被告人質問で、石田被告は最初にAさんにわいせつ行為をしたときの気持ちを振り返った。 ◆「先生と生徒という垣根を越えてしまった」 「Aさんから相談を受けて会話をたくさんしていくうちに、精神的な距離が縮まったというふうに誤解していたのは事実です。私がもともとスキンシップが多いということもあって、そのスキンシップが行き過ぎたものになり、ここまでだったら許されるだろうとか、身勝手な解釈をしていたのも事実です」(石田被告) そして冒頭のように授業中に偶然、Aさんの胸に腕などが当たることがあり、Aさんが反応しなかったために、欲望が大きくなっていったのだという。 「手のひらで触れたいと思うようになり、会話をしていくなかで、どさくさに紛れて5回から6回の犯行に及んだのが、ここまでに至る原因となります」(同前) またBさんとは「塾の授業以外に、学校の課題を手伝ったり指導したこともあった」というほど親しい関係だったとも供述した。Bさんを抱きしめたときの心情はこのように述べている。 「私とBさんの関係性は、本来はあってはならないことですが、先生と生徒という垣根を私が越えてしまっていました。友人に近いものだったと思います。その日、誕生日が近いということもあって、お祝いの意味で、おめでとうの意味で、ハグをしてしまいました」 Bさんの「おうちに帰る」という言葉を聞いて我に返り、手を離したという。 検察官が「他人のお子さんの体に触れることができる精神的な距離感の近さとは、何ですか」と質問すると、石田被告はこう答えた。 「あくまでも私が身勝手に、自分勝手にそのように解釈しただけです。申し訳ございませんでした」 検察官が「お子さんに触っていいとなる解釈とは何なのか、わからないから教えてください」と質問を重ねると、石田被告は「少し時間をください」と黙り込んだ。そしてそのまま何も言葉を発しなかったため、検察官は「話したくなったら、また話してください」と次の質問に移ったのだった。 ◆Aさんは不登校になっていた 取り調べで石田被告は「Aさんの体を触り始めたのは今年の2月ごろからです」と供述しているが、Aさんは「1年くらい前(’24年11月ごろ)から触れていた」と主張していた。その点について検察官が「Aさんの言っていることは合ってるんですか? 間違ってるんですか?」などと質問したが、「当時の記憶がはっきりしないのでわかりませんが、Aさんが言っていることが正しいかもしれません」とあいまいな答えに終始している。 Bさんに対して使った「友人に近いものだった」という表現については次のようなやり取りがあった。 検察官 石田さんはいま何歳ですか? 石田被告 45歳です。 検察官 預かっているお子さんと、先生と生徒の垣根を越えた友人の関係なんてものがあるんですか? 石田被告 いまとなってはないと思いますが、当時はそういう関係があったと誤解しておりました。 石田被告は被告人質問の間、何度も「申し訳ございません」という言葉を口にしたが、「直接、被害者の方に手紙を送ることがはばかられた」「弁護士の先生から送っていただくことに考えが及ばなかった」と被害者に謝罪文を送っていない。 被告人質問の最後、弁護人がAさんが学校に通えていないことに触れ、「原因はあなたの犯行のみによるものだと思いますか?」と問うと、石田被告はこう答えた。 「勉強や進路で悩むことが多いお子さんで、そういうセンシティブな部分をきちんと理解していなかったことは反省しています」 検察官が読み上げたAさんの供述調書はこのような一文で締めくくられていた。 「私はこれまで先生に洗脳されていたような気持ちであり、信頼していた先生に裏切られて気持ち悪く、許せない気持ちです。先生には重い罰を受けてほしいと思っています」 最後まで「先生」という言葉を使ってくれたAさんの気持ちを、石田被告はどのような気持ちで聞いたのだろうか。 公判は次回で結審する予定だ。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit 取材・文:中平良

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