10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックを今ふたたびふり返る【プレイバック・フライデー】。今回は20年前の’05年12月23日号の『〝白いワゴンの男〟は栃木県南部にいる! 「ロリコン殺人犯」はここまで追いつめられた』と12月30日号の続報より「栃木小1女児殺害事件」について取り上げる。 ’05年12月1日午後2時50分ごろ、同級生3人とともに下校した栃木県今市市(現・日光市)の小学生・Aちゃん(当時7)は、学校から数百m離れた三叉路で同級生らと別れた後にこつ然と姿を消した。翌2日の午後に約60km離れた茨城県常陸大宮市の山林で発見されたときには、すでに変わり果てた姿となっていたのだった。 事件当初、警察にはさまざまな不審人物や車の目撃情報が寄せられ、すぐにでも犯人逮捕と思われたのだが……(《》内の記述は過去記事より引用、年齢は当時のもの)。 ◆捜査線上に浮かんだ“白いワンボックスカー” 発見されたAちゃんの遺体は全裸の状態で、胸には鋭利な刃物による10ヵ所もの刺し傷があり、手足に粘着テープで拘束されたあとがあった。現場に犯人に結び付く遺留品はほとんどなかった。だが、県警は今市から常陸大宮に至る道路沿いの監視カメラの分析などから、不審車両のピックアップを進めており、犯人像はある程度絞り込まれていると思われた。 《最初に不審者として報道されたのは、事件現場周辺で女子小学生に声をかけていたという、髪がボサボサで銀縁眼鏡をかけた中年男性である。その後、連れ去り現場に近い日光宇都宮道路の大沢インターチェンジのビデオカメラに、Aちゃんと見られる女児と、男の乗った白いワゴン車が映っていたという新聞報道があった。ナンバーも映っていたと推測されたことから、逮捕も間近ではないかと思われたが、「捜査関係者は、白い車は犯行車両ではない、と強く否定」(民放記者)。 早期解決への期待はしぼんでいった》 「黒いセダン車」の情報もあった。目撃した女性によれば、11月にAちゃんとその友達が駐車場にいたので声をかけると、「いつも黒い車で来る目のきれいなお兄ちゃん」と待ち合わせていると話したという。さらに、捜査線上に浮かんだ1台の車があった。 《「目撃情報から、警察が一台の車を割り出したんです。それは白いワンボックスカーなのですが、車の特徴から持ち主である30代半ばの独身男にたどりついた。この男は、今市市近辺に、両親と一緒に住んでいるそうです」(全国紙記者) この白いワンボックスカーは事件発生の数日前から、Aちゃんが行方不明になった現場付近で目撃されている。また、当日も同じような白い車が、現場付近で目撃されている。さらに遺体が発見された12月2日の早朝にも、異常にゆっくりと遺体発見現場付近を走る白いワンボックスカーが目撃されているのだ。 警察はこの男に任意で事情を聴いているようだが、男は犯行を否認。仕事で現場付近に行ったことはあるが、事件当日は行っていないと語っているという。 「この男は仕事柄、県内各地を車で回っており、道路事情にも通じていることから、警察は興味を持って調べているようです」(前出・全国紙記者)》 Aちゃんの命を奪った冷酷な殺人鬼の逮捕はもはや時間の問題のようにも思われたのだが……。 ◆犯人は「殺していません」と主張 捜査は難航した。事件直後には多くの不審者情報が寄せられたものの、結局どれも決め手には欠けた。本誌の記事の“白いワンボックスカー”も事件とは関係なかったようだ。捜査が行き詰まったのは現場の遺留品が乏しかったことが大きかった。また、遺体から発見され、犯人のものと思われたDNAが、実は現場にいた捜査官のものだったことが後から判明するなどのミスもあった。 ’14年6月、警察は有名ブランドのコピー品を販売した商標法違反容疑で逮捕されていた無職の男・X(当時32)を事件の犯人として逮捕した。捜査のなかでAちゃんの殺害についてほのめかしたということだった。 Xは取り調べでAちゃんの殺害を自白したが、’16年2月から始まった裁判では一転して「殺していません」と無罪を主張。裁判では自白の信憑性が争われることとなった。 実はXは’06年の時点ですでに捜査線上に名前があがっていた。目撃情報の中にあった不審な「白いセダン」をXが所有していたこと、Aちゃんと同じ小学校にかつて通っていたからだったが、決め手となる証拠がなく、あくまで「怪しい人物」の1人にすぎなかった。しかし、’13年にXの義父が警察に「(Xは)ひきこもりのような生活を送っていた」「ナイフを集めていたようだ」などと情報提供をしたことからXが再び捜査線上に浮かんだのだという。 警察はXの内偵捜査を開始。同時期に古物商を営む母親とともに商標法違反容疑で逮捕されたのだ。弁護側はこの点を別件逮捕による違法な取り調べだと指摘。「自白まで身柄拘束は123日間に及び、不当に長く拘束された」ために自白に任意性は認められないと主張した。検察側が提出した証拠はどれも決定的なものではなく、Xの自白とAちゃんの遺体の状況にも矛盾する点があった。 だが、裁判所は自白が信用に足るものとして、求刑どおりXに無期懲役の判決を言い渡す。弁護側は控訴したが、高裁、最高裁でも判決が覆ることはなかった。そして’22年3月に刑が確定したのだった。 刑の確定後もXの冤罪を指摘する声は少なくない。支援者や家族らは再審請求を目指して活動しているという。 もし、Xが冤罪だったとすれば、Aちゃんを殺害した犯人はどこで何をしているのだろうか。