〔国内〕2025年の災害を振り返る

2025年を締めくくるにあたり、今年発生した国内での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。 ※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。 ●1月 【自然災害】強い冬型の気圧配置により青森県で記録的な大雪 [被害]死者9人 負傷者140人 全壊3軒 半壊5軒 一部損壊83軒 2024年12月27日から2025年1月5日にかけて、東北地方の上空に流入した寒気と冬型の気圧配置の影響により、青森県では津軽や上北を中心に断続的な降雪となった。特に12月27日と1月2日から3日にかけては警報級の大雪となり、青森県の酸ヶ湯で357cm、弘前で115cmの積雪を観測するなど、記録的な降雪が見られた。 この大雪の影響で屋根の雪下ろし中の事故などにより9人が死亡、140人が負傷したほか、住宅被害や通信障害、交通機関の麻痺など大きな被害をもたらした。弘前市では、国の重要文化財に指定されている岩木山神社の本殿や弘前城二の丸未申櫓が損壊するなどの被害が出た。 今回の大雪を受け、県は12月28日に「豪雪対策本部」を設置していたが、1月4日にはこれを「豪雪災害対策本部」に格上げし対応にあたった。1月7日には青森市、弘前市、黒石市、五所川原市、平川市、藤崎町、大鰐町、田舎館村、板柳町、鶴田町の10市町村に災害救助法が適用された。災害救助法の適用は2月3日までに全市町村で終了したが、県は住宅に大きな被害があった世帯を対象に、県の被災者生活再建支援制度を適用して支援金を支給することを決定した。 【自然災害】日向灘でM6.6の地震 宮崎県で震度5弱、沿岸に一時津波注意報 [被害]負傷者4人 一部損壊2軒 2025年1月13日21:19頃、日向灘を震源とするM6.6の地震が発生した。宮崎県宮崎市や高鍋町、新富町で最大震度5弱を観測したほか、九州から中部地方にかけて震度4~震度1の揺れを観測した。この地震の影響で大分県、宮崎県、鹿児島県であわせて4人が負傷したほか、宮崎県内では住宅2軒が一部損壊する被害があった。 気象庁は地震直後、地震の波形の一部から規模をM6.4と推定して津波の心配はないと発表したが、地震発生から約10分後に別の手法を用いた計算によりM6.9に更新し、宮崎県と高知県に津波注意報を発表した。その後、13日21:48頃には宮崎市の宮崎港で20cmの津波が観測された。マグニチュードが更新されたことにより、南海トラフ地震との関連を調査する基準(監視領域内でM6.8以上の地震を観測)を上回ったことから、13日21:55に「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」が発表され、有識者による臨時の評価検討会が開かれた。検討会で地震の波形全体が精査された結果、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表する基準には達していないと評価され、13日23:45に「南海トラフ地震臨時情報(調査終了)」が発表された。なお、14日に気象庁はこの地震のマグニチュードを6.6に更新した。 気象庁によると、この地震は2024年8月8日に起きた日向灘を震源とするM7.1の地震と一連の地震活動とみられるという。 【事故】埼玉県八潮市で道路が陥没しトラック巻き込まれる、救助活動難航 [被害]死者1人 負傷者2人 2025年1月28日10:00頃、埼玉県八潮市中央の交差点内で道路が突然陥没し、走行中のトラック1台が巻き込まれ車両ごと転落した。トラックの運転手の70代男性とは当初連絡が取れていたが、陥没した穴の周辺の土砂が断続的に崩れ、救助隊員2人もけがをするなど救助活動は難航した。さらに、29日未明には転落したトラックをクレーンで吊り上げる作業中に新たな陥没が発生し、周辺の電柱が傾くなどした。29日明け方までにトラックの荷台部分は引き上げられたものの、運転席部分は陥没した穴の中に残されたままとなった。陥没した穴は当初は幅9~10m、深さ5mほどだったが、相次ぐ陥没で幅40m、深さ15mほどに拡大した。 1月30日からは地下のがれきや土砂を撤去するための重機を投入するスロープが作られたものの、地下には下水を含んだ土砂が堆積し救助活動を阻んだ。2月9日には穴からの救助活動を断念することが地元消防から発表され、下水道のバイパス工事の後の5月2日に行われた下水管の中からの捜索でトラックの運転席で男性を発見、救助するも死亡が確認された。 今回の陥没事故を受けて、現場周辺に警戒区域が設定され、住民の避難が続いている。また、陥没した現場では下水道管の破損のほか、NTT東日本の通信ケーブルも断線し周辺では通信サービスが一時利用できない状態となったほか、二次災害防止のためガス供給も一時停止されるなどライフラインにも大きな影響が生じた。 この陥没の原因としては、下水道管が腐食により破損し、破損した部分の亀裂から土砂が入り込むことによって地中に空洞ができたためとみられている。さらに、現場付近が下水道管が曲がる部分にあり、汚水から発生する硫化水素が溜まりやすく下水道管の腐食が進みやすかったこと、さらにこの地域がかつては海に近く、地盤が軟弱で土砂の崩壊が進みやすかったことも被害の拡大の要因と考えられている。 埼玉県は復旧工法検討委員会を組織し、下水道管の復旧方法の検討を行っているが、下水道管の損傷が大きいとみられることから、完全な復旧までには少なくとも2~3年程度かかるとの見方もある。 ●2月 【自然災害】日本海側を中心に広い範囲で大雪 各地で大きな被害 [被害]死者13人 負傷者187人 半壊2軒 一部損壊23軒 床下浸水3軒 2025年2月4日から9日にかけて、強い冬型の気圧配置が続き、今シーズン一番の強い寒気が流れ込んだ影響により、北日本から西日本の日本海側を中心に広い範囲で大雪や暴風雪となった。交通機関等に大きな影響が予想されることから、国土交通省と気象庁は2月3日に大雪に対する緊急発表を行い、広く警戒を呼び掛けた。また、7日夜には重大な災害の発生する可能性が高まり、一層の警戒が必要となるような短時間の大雪となることが見込まれたことから、気象庁は石川県と新潟県に「顕著な大雪に関する気象情報」を相次いで発表した。 各地で記録的な降雪となり、帯広市では4日09:00までの12時間降雪量が120cmと全国のこれまでの記録を更新した。また、新潟市や岐阜県白川村などで統計開始以来最多の積雪を更新したほか、普段雪の少ない九州~甲信地方の太平洋側でも積雪となった所があった。 この大雪の影響により全国で13人が死亡、200人近い負傷者が出たほか、鉄道などの交通機関への影響も長期間にわたった。また、関西電力管内では最大約12820軒、東北電力管内では最大約3160軒、中部電力管内では最大2460軒など、各地で大規模な停電が発生した。この大雪について、福島県では3市11町5村、新潟県では5市2町に災害救助法が適用された。 【自然災害】東北・関東で強風 建物への被害や交通機関の乱れ相次ぐ [被害]負傷者10人以上 2025年2月13日、三陸沖で発達した低気圧の影響で全国的に北寄りや西寄りの風が強まり、東北地方や関東地方を中心に被害が相次いだ。 各地で建物の屋根が飛ばされたり工事現場の足場が崩れたりする被害があり、埼玉県春日部市では飛ばされた屋根の一部とみられるものとぶつかった60代の女性が軽傷を負った。また、宮城県仙台市若林区では、強風によりコンテナが飛ばされ、中にいた50代の男性作業員が負傷したほか、福島県や新潟県で少なくとも8人が転倒するなどして軽傷を負った。神奈川県横浜市神奈川区では、風に飛ばされた帽子を拾おうとしたとみられる小学生が車にはねられ意識不明の重体となる事故も発生した。 茨城県坂東市と常総市にまたがる地域では、13日午後、雑木林から出た火が強風にあおられて付近の建物に燃え広がり、一時、720世帯2043人に避難指示が出された。火災は翌14日朝に消し止められ、けが人はいなかった。 強風の影響で交通機関にも乱れが生じた。13日、東海道新幹線と東北新幹線の架線に飛来物が付着し、それぞれ一部区間で一時運転を見合わせたほか、在来線でも運転見合わせやダイヤ乱れが相次いだ。また、全日空と日本航空は13日の計47便を欠航とした。 【自然災害】岩手県大船渡市で大規模な林野火災、建物などに大きな被害 [被害]死者1人 建物被害210軒(うち住家102軒) 2025年2月26日昼過ぎ、岩手県大船渡市で発生した林野火災は、3月9日夕方に鎮圧状態となるまで11日間を要した。焼損面積は市の面積の約9%にあたる約2900ヘクタールにおよび、平成以降の林野火災としては最大の規模となった。 2月26日13:02頃、岩手県大船渡市赤崎町合足(あったり)地内で林野火災が発生した。大船渡市では、12月から2月にかけての冬の期間降水量が37.0mmと平年の24%にとどまり、特に2月の降水量は2.5mmと平年のわずか6%という記録的な少雨となって乾燥が進んでいた。そこへ、最大瞬間風速が18m/sを超えるような強風も加わったことで飛び火もしつつ広範囲に燃え広がり、集落にも延焼した。 岩手県は陸上自衛隊に災害派遣要請を行ったほか、北海道・東北・関東甲信越の10道県からなる緊急消防援助隊も組織され消火活動を行ったが、延焼範囲が広いことに加え、リアス海岸特有の複雑な地形により火元に近づくことが難しく、消火活動は難航した。延焼の拡大に伴い、大船渡市は避難指示の対象地域を順次拡げ、一時は市の世帯人口の10%を上回る1896世帯・4596人に避難指示が発令された。 その後、3月5日に日降水量26.5mmのまとまった雨が降ったことをきっかけに火災の延焼は収まり、3月9日17:00に火災の鎮圧が宣言され、翌10日10:00までにすべての地域で避難指示が解除された。 この火災で、90代の男性1人が死亡、住家102軒を含む210軒の建物が被害を受け、このうち住家75軒を含む171軒の建物が全壊した。今回、被害を受けた建物のなかには、2011年の東日本大震災での津波被害を受けて、高台や内陸に移転した先で火災に巻き込まれた建物も少なくないとみられている。 この火災について、岩手県は大船渡市に災害救助法を適用、さらに火災被害においては3例目となる被災者生活再建支援法の適用を決めた。また、石破首相は今回の火災を激甚災害に指定する方針を示し、復旧事業の補助率を引き上げるなど政府として支援していくことを表明した。 ●3月 【自然災害】東北・関東甲信で積雪 予防的通行止めも実施 [被害]負傷者少なくとも10数人 2025年3月4日から5日にかけて、低気圧が本州の南岸に停滞する前線上を進んだ影響により、東北および関東甲信地方では広く雪となった。東京都心では4日22:00に1センチの積雪を観測したほか、埼玉県では5日05:00までの24時間に秩父市で15センチの積雪が見られ、北部に一時大雪警報が発表された。 高速道路や国道で安全な通行ができなくなるおそれがあることから、国土交通省と気象庁などは2日と3日にそれぞれ合同記者会見を実施し、予防的通行止めを行う可能性のある区間について示し警戒を呼び掛けた。4日午後からは首都高速や東名高速道路、新東名高速道路など多数の高速道路や国道が通行止めとなったほか、JR東日本の特急や一部の在来線などが運休した。 この雪の影響により、JR中央本線では4日夜に山梨と神奈川の県境付近で列車が倒竹に進路を阻まれ7時間近く停止したほか、関東各地で雪による事故が多数発生し、少なくとも10数人が負傷した。 【自然災害】各地で林野火災相次ぐ 建物被害やライフラインなどに影響 [被害](岡山県)建物被害6軒 (愛媛県)負傷者3人 建物被害22軒 2025年3月も前月に続き、全国各地で林野火災が相次いで発生し、建物被害や停電などライフラインへの影響が生じたほか、避難指示が発令された自治体もあった。ここでは、岡山県岡山市南区と愛媛県今治市で発生した林野火災についてまとめる。 2025年3月23日15:02頃、岡山県岡山市南区の貝殻山付近で林野火災が発生し、強風にあおられて延焼した。岡山市は23日夜に南区の一部に避難指示を発令、翌24日夕方に火災が制御できているとしていったん解除したものの、その後再び延焼が拡大したため、25日夜に再度避難指示を発令した。さらに、尾根を挟んで岡山市と隣接する岡山県玉野市にも延焼が拡大するおそれが出てきたため、25日夜には玉野市の一部にも避難指示が発令された。 その後、27日午後から28日午前にかけてまとまった雨が降ったことで火災の勢いが収まり、28日正午に火災の鎮圧が宣言され、避難指示もすべて解除された。この林野火災で、倉庫など非住家4軒が全焼、2軒が部分焼し、焼失面積は565ヘクタールと岡山県内で発生した林野火災としては過去最大の規模となった。 その後の警察と消防の調べで、伐採した木を山で焼却処分していた際に、火が風にあおられて周囲に燃え移ったことが火災の原因とみられている。 一方、2025年3月23日15:53頃、愛媛県今治市で林野火災が発生した。火災は強風にあおられて延焼し、飛び火をしながら火元から離れた別の山林にも燃え広がり、さらには麓の集落にも延焼の範囲が拡大した。このため、今治市は最大で市内の約3000世帯、また隣接する西条市でも約800世帯に避難指示が発令された。 その後、27日午後から28日午前にかけてまとまった雨が降ったことで火災の勢いが収まり、31日11:00に火災の鎮圧が宣言され、避難指示もすべて解除された。この林野火災で、今治市・西条市であわせて3人が負傷、住宅5軒を含む22軒が被害を受けた。 さらに、延焼の拡大に伴って四国電力が林野火災の現場近くを経由する送電線の系統を止めたため今治市内で断続的に停電が発生したほか、JR予讃線で運転見合わせや一部の駅で乗降の取扱いを中止するなどの影響が出た。この火災について、愛媛県は今治市と西条市に災害救助法を適用した。 ●4月 【通信・システム障害】NEXCO中日本管内の高速道路でETCシステムに大規模な障害 2025年4月6日00:30頃、NEXCO中日本管内の高速道路の一部の料金所でETCのシステム障害が発生した。この障害により、ETCレーンでの課金処理ができなくなったため、有人の料金所に渋滞が発生、2km以上の渋滞はあわせて10か所に及んだ。このため、NEXCO中日本では、障害の発生した料金所のETCバーを開放する措置を取った。 今回のシステム障害の原因は、料金収受システム内の送信データの破損によるものだったが、原因の特定に時間を要したため、復旧は発生から1日半以上が経過した4月7日14:00となった。障害の発生した料金所は東名、新東名、名神、中央道などの8都県17路線106か所にのぼった。 当初、NEXCO中日本は障害の発生した時間帯に開放されたETCバーを通過した料金所利用者に対して、後日精算を呼びかけていた。しかし、5月2日、NEXCO中日本の社長が記者会見を行い、今回のシステム障害の重大性を踏まえ、障害の発生した時間帯の料金所利用者に対して料金を請求しない方針を明らかにした。既に支払いを済ませた利用者については、ETCマイレージサービスの還元額の付与や利用料金と同額分のクオカードの送付などで対応するとしている。 また、社内で今回のような広域での大規模なシステム障害に対応するマニュアルが存在していなかったことから、中野国交相はNEXCO中日本に対して、6月までに対応マニュアルを整備するよう指示した。 【事故】奈良市の学校のグラウンドに落雷 生徒2人が意識不明 [被害]負傷者6人 2025年4月10日17:50頃、奈良県奈良市の学校法人帝塚山学園のグラウンドに落雷があった。グラウンドにはサッカー部、野球部、硬式テニス部の生徒114人と顧問の教員など8人がおり、サッカー部の男子中学生5人と野球部マネジャーの女子高校生1人が病院に搬送された。このうち男子中学生2人は意識不明の重体(うち1人はその後意識が回復)、他の4人の生徒にも意識がもうろうとしていたり、手足のしびれを訴えたりしているものがいた。 学校側が12日に開催した記者会見では、18:00前に急に雨が強くなり、サッカー部の顧問が雨雲の動きを確認しようとしたところに、いきなり雷の音がして生徒たちが倒れたと説明があった。当時、奈良県全域に雷注意報が発令されていたが、サッカー部の顧問らは注意報の発令を把握していなかったと学校側に説明している。また、グラウンドの横には約140人を収容できる避雷針がついた屋根付きのスタンドがあったが、避難させる余裕がなかったという。 17日には学校から部活動の再開に向けた安全管理指針が公表された。専門家を交えた事故調査委員会の提言に基づいた安全管理体制を構築するとし、提言がでるまでの間については、雷注意報が発令されている状況での当該グラウンドでの活動は自粛するとした。また、雷注意報が発令されていない場合であっても、気象庁等の情報から危険が予測される場合については活動を中止し避難することを定めた。 【自然災害】長野県北部でM5.1の地震 大町市などで震度5弱 [被害]負傷者1人 住宅被害40軒以上 2025年4月18日20:19頃、長野県北部を震源とするM5.1の地震が発生し、長野県の大町市と筑北村、小川村で震度5弱の揺れを観測した。 この地震で、長野県山形村で男性1人が避難中に転倒し軽傷を負った。また、大町市で道路脇の石垣が崩れたり、寺の仏像が倒れて破損したりする被害があったほか、長野県内では屋根瓦が落ちるなどの住宅への被害が40軒以上で確認された。 交通機関にも影響があり、北陸新幹線や一部の在来線が安全確認のため一時運転を見合わせた。 ●5月 【事故】大型連休中にバスなどが関連する多重衝突事故が相次ぐ [被害]負傷者23人 大型連休終盤の2025年5月4日、5日に10人以上が負傷する衝突事故が相次いで発生した。 5月4日16:50頃、佐賀県佐賀市の長崎自動車道の金立SA付近の上り線で、大型観光バスが渋滞で止まっていた乗用車に追突するなどあわせて3台が関係する衝突事故が発生した。この事故でバスの乗客や乗用車に乗っていた人など12人が搬送された。観光バスは佐賀県武雄市から福岡県福岡市に向かっていた。 5月5日11:20頃、神奈川県横須賀市大滝町2丁目の交差点で、路線バスや複数の乗用車などあわせて9台が関係する多重衝突事故が発生した。この事故で11人が病院に搬送された。最初に追突事故を起こした乗用車を運転していた30代の男性から基準値の約3倍のアルコールが検出されたことから、警察は道路交通法違反(酒気帯び運転)の疑いで運転手を現行犯逮捕した。また、6月11日に自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の疑いで再逮捕した。 【自然災害】北海道太平洋側で震度4を観測する地震相次ぐ 2025年5月中旬以降、北海道の太平洋側を震源とするM5~6程度、最大震度4を観測する地震が相次いで発生した。 ・5月15日22:05頃 十勝地方中部 深さ95km M4.7 太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震 震度4(北海道浦幌町) ・5月23日06:28頃 浦河沖 深さ53km M5.4 太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震 震度4(北海道浦河町、様似町) ・5月26日17:47頃 十勝地方南部 深さ50km M5.3 太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震 震度4(北海道浦河町) ・5月31日17:37頃 釧路沖 深さ20km M6.0 陸のプレート内で発生した地震 震度4(北海道釧路市、えりも町、浦幌町、釧路町、標茶町、標津町) ・6月2日03:51頃 十勝沖 深さ27km M6.1 太平洋プレートと陸のプレートの境界で発生した地震 震度4(北海道大樹町、浦幌町) これらの地震のうち、5月31日の釧路沖と6月3日の十勝沖の地震では、津波予報(若干の海面変動が予想されるが被害の心配なし)が北海道太平洋沿岸東部と太平洋沿岸中部(6月3日の地震ではさらに岩手県)に一時発表された。なお、いずれの地震とも大きな被害の情報はなかった。 今回の一連の地震の震源域は「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の範囲内にあり、モーメントマグニチュード(Mw)7.0以上の地震が発生した場合は、その後一週間程度、巨大地震発生への注意が呼びかけられることになる。 今回の地震は、いずれもM5~6程度でそれぞれの地震の震源が離れていることなどから、気象庁や政府の地震調査委員会はそれぞれの地震に関連はなく、巨大地震の発生に影響があるものではないとの見解を示している。その一方で、この地域は普段から地震活動の活発な地域であり、これまでも繰り返し規模の大きな地震が発生していることから、日頃から地震への備えを進めるよう呼びかけている。 ●6月 【自然災害】梅雨前線の影響により鹿児島県を中心に大雨 線状降水帯も発生 [被害]床下浸水3軒 2025年6月9日から11日にかけて、九州南部に停滞した梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響により大気の状態が非常に不安定となり、鹿児島県を中心に大雨となった。 鹿児島県では、9日明け方に薩摩、大隅、種子島・屋久島地方に線状降水帯予測情報を発表、さらに同日19:00過ぎに大隅地方に線状降水帯の発生情報を発表し、土砂災害や低地の浸水、河川の増水・氾濫に厳重な警戒を呼びかけた。指宿市では11日までの72時間降水量が観測史上最大の514mmを観測した。 この大雨により、鹿児島県内では鉄道各線が運転を見合わせたほか、鹿屋市、指宿市、肝付町で道路の冠水や法面崩落、土砂崩れなどの被害が確認された。また、肝付町では3軒の床下浸水があった。 【自然災害】新燃岳が噴火 航空便などに影響 [被害]断水34軒 2025年6月22日、鹿児島、宮崎両県にまたがる霧島連山の新燃岳で2018年以来7年ぶりとなる噴火が観測された。火山活動がさらに高まったと判断されたことから、気象庁は23日、新燃岳の噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げ、火口から概ね3kmの範囲で大きな噴石や火砕流への警戒、火山灰や小さな噴石、爆発に伴う空振に注意するよう呼びかけた。 新燃岳ではその後も断続的に噴火が発生し、7月3日には噴煙が火口から5000mの高さに達するなど、7月にかけて火山活動が活発な状態が続いた。新燃岳の南西約20kmに位置する鹿児島空港では、降灰の影響で航空便の欠航が相次いだ。また、7月10日には、鹿児島県霧島市の霧島地区で火山灰を含む土砂によって水道や温泉の配管が損傷し、供給が停止する被害があった。 ●7月 【自然災害】トカラ列島近海で約2400回の活発な地震活動 一時島外避難者も 2025年6月21日以降、鹿児島県のトカラ列島近海を震源とする活発な地震活動が続いている。6月21日から11月30日までに震度1以上を観測した地震は2395回に達し、1日あたりの地震回数が180回を超えた日もあった(6月23日・7月6日)。一連の地震活動では震度5弱以上の地震がこれまでに8回発生し、このうち7月3日16:13には鹿児島県十島村の悪石島で最大震度6弱を観測するM5.5の地震が発生した。地震活動は7月下旬以降は次第に低下してきているものの、8月に入ってからも1日数回ながらも震度1~3程度の地震が続いており、気象庁はこのような地震活動が当分続く可能性があるとして、今後の地震活動や降雨の状況に十分注意し危険な場所に立ち入らないなど身の安全を図るよう呼びかけている。 十島村では、大きい揺れが相次いだ悪石島と小宝島の住民のうち、島外への避難を希望した71人が鹿児島市内の宿泊施設や親族の家などに一時滞在していたが、地震活動が次第に低下傾向にあることから8月9日までに全員が帰島している。 今回地震が発生した地域の周辺では、これまでにも地震活動が活発な期間がたびたび観測されており、断続的に数か月以上地震活動が継続していたこともあった。1995年12月17日(M5.5)、2000年10月2日(M5.9)、2021年12月9日(M6.1)など、M5.5を超える規模の大きな地震もたびたび観測されている。国の地震調査委員会によると、今回の一連の地震活動は1995年以降に発生した地震活動の中では最も地震の回数が多いとのことである。 十島村は、地震が続く悪石島と小宝島の住民に生活支援給付金として2万円~5万円を、ふるさと納税の災害支援金などを原資とする独自の給付金として支給することを決定した。 【自然災害】関東地方で大気の状態不安定による大雨 [被害]負傷者2人 床上浸水7軒 床下浸水9軒 2025年7月10日、関東地方では南下する前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で大気の状態が非常に不安定となり、所によって猛烈な雨が降るなどして広い範囲で大雨となった。 この大雨に先立ち、気象庁は10日09:40、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京地方で夕方から夜のはじめ頃にかけて、線状降水帯が発生して大雨災害発生の危険度が急激に高まる可能性があるとする気象情報を発表、厳重な警戒を呼びかけた。結果として線状降水帯の発生こそなかったものの、10日午後から関東甲信地方では積乱雲が発達し、各地で猛烈な雨が降った。記録的短時間大雨情報の発表は埼玉県の12回をはじめ、群馬県で6回、東京地方で3回など複数回発表された地域もあった。1時間雨量は埼玉県ときがわ町89mm、群馬県館林市86mm、神奈川県横浜市港北区日吉83mmなどこれまでの観測史上1位の記録を更新したところもあった。 この大雨で、横浜市港北区では、下水道に大量の雨水が流れ込み下水道管の中の圧力が高まる「エアーハンマー現象」によるとみられる影響でマンホールの蓋が飛び、大量の水が噴き出して周辺の道路のアスファルトが割れた。この際に割れたアスファルトの破片が走行中の車に当たり、乗っていた2人が軽傷を負った。また、東京都渋谷区で7軒が床上浸水するなど都心部でも被害があった。さらに、東京電力管内の延べ1万2000軒以上で停電したほか、東海道新幹線や首都圏のJR・私鉄各線でダイヤが大幅に乱れるなどライフラインや交通への影響も大きかった。 【事故】福岡県大牟田市の工場で塩素系ガス漏洩、住民など200人以上が体調不良を訴え医療機関受診 [被害]医療機関受診者234人 2025年7月27日17:31頃、福岡県大牟田市の三井化学大牟田工場で、ウレタン原料を生産するプラントで塩素系ガスが漏洩した。プラントは緊急停止措置がとられ、19:15過ぎにガスの漏洩は止まったが、工場周辺でも異臭が確認されたことから、警察や消防が周辺住民に対し、外出を控え窓を閉めるよう広報にあたった。 この漏洩事故で、これまでに周辺住民や警察官・消防隊員など、234人が吐き気や息苦しさなどの体調不良を訴え医療機関を受診した。塩素ガスの漏洩した原因として、会社側はプラントで使用したガスを再利用するための施設にあるステンレス製の配管が破損した可能性を挙げており、引き続き調査を進めている。 この漏洩事故を巡っては、大牟田市が市内の各工場と対応マニュアルに定めていた事故発生直後の工場から消防や警察、市への通報がされなかったことが問題視された。警察や消防が異常を覚知したのは異臭がするという周辺住民からの通報によるもので、通報を受けて警察・消防が工場に出動し、ガス漏れを確認した段階で発生から既に1時間半近くが経過していた。 【自然災害】ロシア・カムチャツカ半島東方沖でMw8.8の地震 北海道から沖縄県にかけての広い範囲で津波を観測 [被害]死者1人 負傷者16人 日本時間2025年7月30日08:24頃、ロシア・カムチャツカ半島東方沖の深さ35kmを震源とするMw(モーメントマグニチュード)8.8の地震が発生した。この地震により、日本国内でも北海道から九州地方にかけて震度2や震度1の揺れが観測された。気象庁は08:37、太平洋沿岸の一部に津波注意報を発表したが、その後の分析で地震の規模が当初の推定よりも大きかったことが判明したため、09:40に北海道から和歌山県にかけての太平洋沿岸の広い範囲で津波警報へ切り替えた。津波は北海道から沖縄県にかけての広い範囲で観測され、岩手県の久慈港では13:52に1.4mの津波が観測された。 津波警報や津波注意報が発表されたことを受け、全国で一時200万人以上に避難指示や緊急安全確保などが発令されたが、避難する車によって渋滞が発生したり、自治体内の混乱により避難指示の発令が遅れたりするなどの課題もあった。また、三重県熊野市では避難場所に向かう途中だったとみられる車が崖から転落する事故があり、運転していた50代の女性が死亡した。このほか、避難中に転倒して負傷したり、熱中症の症状で搬送されたりする人も相次いだ。 また、交通にも大きな影響があった。各地で高速道路を含む一部の道路が通行止めとなったほか、仙台空港が一時閉鎖され、発着予定だった計110便が欠航となった。鉄道では、津波警報が発表された北海道から和歌山県にかけての沿岸を通る路線を中心に多数の路線が長時間運転を見合わせ、帰宅ラッシュを直撃した。安全の確認に時間を要したため運転再開が31日午前となった路線もあった。さらに、フェリーや高速バス、路線バスでも運休や遅れが相次いだ。 津波警報は30日夕方から夜にかけて段階的に津波注意報に切り替えられたが、その後も海面の変動が続いたため、津波注意報の全面解除は最初に発表されてから約32時間後の31日16:30となった。この地震で津波の影響が長時間続いたり、最大波が遅れて観測されたりしたのは、カムチャツカ半島付近で発生した津波が太平洋周辺の陸地や「天皇海山列」とよばれる海底地形で繰り返し反射し、次々と日本の沿岸に押し寄せたことが一因とみられている。 ●8月 【自然災害】前線の影響で北日本から西日本にかけて記録的な大雨 鹿児島県・熊本県に大雨特別警報発表 [被害]死者8人 行方不明者1人 負傷者25人 住宅被害1万1000軒以上 2025年8月6日から12日にかけて、日本付近に停滞した前線や前線上の低気圧に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、北日本から西日本にかけての広い範囲で大気の状態が非常に不安定となり、各地で記録的な大雨となった。 なかでも、石川県や九州地方の一部では、線状降水帯が発生して非常に激しい雨が同じ場所で降り続き、河川の氾濫、住宅や土地の浸水、土砂崩れなどにより大きな被害が生じた。 石川県では7日明け方に線状降水帯が発生し、大雨となった。県内各地で住宅への被害が相次ぎ、金沢市で660軒以上に浸水や一部損壊の被害があったほか、能登半島地震の影響で地盤が沈下した石川県能登町の沿岸部では、大雨や高潮による床下浸水が150軒以上で発生した。 鹿児島県では8日午前に線状降水帯が繰り返し発生し、8日05:00には鹿児島県霧島市に大雨特別警報が発表された。霧島市牧之原で観測された24時間雨量は515.5mmに達し、観測史上1位を記録した。大雨となった鹿児島県姶良市では家屋が土砂崩れに巻き込まれ、1人が死亡した。また、霧島市や姶良市を中心に鹿児島県内で1300軒以上の住宅が浸水したほか、断水や停電、通信などのライフラインの障害や、道路の法面崩壊、鉄道の線路への土砂流入といった交通障害も生じた。 福岡県や熊本県を含む九州北部地方では、9日夜遅くから11日にかけて線状降水帯が繰り返し発生し、11日には熊本県玉名市、長洲町、八代市、宇城市、氷川町、上天草市、天草市に大雨特別警報が発表された。8月6日から12日にかけての総雨量は多いところで600mmを超え、この大雨で福岡県で2人、熊本県で4人が死亡した。また、全壊や半壊、浸水などの被害があった住宅は両県で計9000軒近くにのぼったほか、各地で道路や河川、鉄道といったインフラや公共施設にも被害があった。熊本県内では、農地の広範囲にわたる浸水や山林の土砂崩れなどにより農林水産業に大きな損害があり、被害額は150億円以上に達した。 【自然災害】台風12号が発生から約8時間後に鹿児島県へ上陸 [被害]死者1人 負傷者5人 家屋損壊78軒 床上・床下浸水208軒 2025年8月21日09:00、鹿児島県薩摩川内市の西約90kmの海上で発生した台風12号は、同日17:00過ぎに鹿児島県日置市付近に上陸した。その後、ゆっくりとした速度で九州南部を横断して、22日09:00に日向灘で熱帯低気圧に変わった。速度が遅く、猛烈な雨が同じような場所で降り続いたため、鹿児島県では21日から22日にかけての総雨量が300mmを超えたところがあり、8月の平均月降水量を上回る記録的な大雨となった。また、21日14:30にいちき串木野市付近で1時間に約120mmの雨を解析し、記録的短時間大雨情報が発表された。 この台風の影響で、鹿児島県では1人が死亡、5人が負傷した。また、200軒以上の住宅被害が発生したほか、がけ崩れや道路等の損壊やライフライン等への被害が確認された。また、特に住宅に多くの被害が生じた鹿児島県南さつま市には災害救助法が適用された。 台風12号のもととなった熱帯低気圧は、8月18日に気象庁から「今後24時間以内に台風に発達する見込み」とされていたが、翌19日10:00過ぎに「台風に発達する可能性は小さくなった」と一度発表された。しかし、21日04:30に再び「今後24時間以内に台風に発達する見込み」と発表され、同日09:00に台風に発達、その約8時間後には鹿児島県に上陸するという異例の経過をたどった。これは、沖縄県より北の海域の海面水温が平年より高くなっており、九州付近で台風に発達する条件が整っていたためとみられている。 ●9月 【自然災害】台風15号が太平洋沿岸を横断 静岡県では国内最大規模の竜巻が発生 [被害]死者1人 負傷者80人以上 家屋損壊・浸水2500軒以上 2025年9月4日に奄美大島の東で発生した台風15号は、宮崎県沖を北上し、5日01:00頃に高知県宿毛市付近に上陸、同日09:00頃に和歌山県北部に再上陸した。その後、台風は東日本の太平洋側を東に進み、5日21:00に日本の東で温帯低気圧に変わった。台風本体や台風周辺の暖かく湿った空気が流れ込み大気の状態が非常に不安定となった影響で、九州南部から東北地方の広い範囲で大雨となり、宮崎県都農では24時間降水量が平年の9月1ヶ月分を上回る465.5mmに達するなど記録的な大雨となった。また、宮崎県、静岡県、神奈川県では線状降水帯が発生したほか、静岡県、東京都、千葉県、宮城県で記録的短時間大雨情報が発表された。 この台風の影響で、各地で住宅被害や土砂災害、死者を含む人的被害があった。特に静岡県では、5日昼過ぎに県内各地で相次いで竜巻などの突風が発生し、大きな被害をもたらした。このうち、12:50頃に牧之原市静波から榛原郡吉田町大幡で発生した竜巻は風速約75m/sと推定され、気象庁の突風の評定に用いられる「日本版改良藤田スケール(JEFスケール)で上から3番目の「JEF3」に該当すると認められた。これは国内で観測された突風の中でも最大級の規模で、一連の突風などにより住宅被害は静岡県全体で2000軒以上にもおよび、一週間もの間停電が続いた地域もあった。 一方で、大きな被害のあった静岡県牧之原市が県に対して自衛隊の災害派遣を求めていたにもかかわらず、県が自衛隊に対して派遣要請を行っていなかったことが明らかになった。これは、災害派遣の3要素である「緊急性」「公共性」「非代替性」に合致しなかったため、県と自衛隊が事前協議のうえ、正式な派遣要請を県が見送ったためである。静岡県の鈴木知事は、現場の判断で派遣要請を見送ったことは反省すべきとしたうえで、国に対しても制度の見直しなどを要望したいとコメントしている。 【自然災害】東京など首都圏で大雨 河川が氾濫し一時「緊急安全確保」の発令も [被害]死者1人 行方不明者1人 負傷者2人 浸水1200軒以上 2025年9月11日午後、本州付近に停滞していた秋雨前線に南から暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、関東地方では大気の状態が非常に不安定になった。特に東京都や神奈川県では非常に激しい雨が降り、記録的短時間大雨情報が複数回にわたり発表された。 東京都内では、目黒区で15:20までの1時間に134mmの猛烈な雨が降った。観測点に近い自由が丘駅周辺では、道路が冠水したり建物の地下が浸水したりする被害があった。また、品川区を流れる立会川が溢れ、一時約5000世帯に対し警戒レベルの最も高いレベル5の緊急安全確保が発令されたほか、大田区の呑川や丸子川周辺などでも緊急安全確保が発令された。さらに、世田谷区でも14:30までの1時間に92mmの雨が降り、観測史上最大を記録した。この大雨で、区内を流れる谷沢川で氾濫が確認された。 このほか、都内では落雷や突風による被害もあった。14:30頃、立川市若葉町4丁目の共同住宅で落雷が原因とみられる火災が発生し、居住者の女性が煙を吸って救急搬送された。大田区令和島のコンテナ埠頭では、15:30頃、突風が発生し、横転したコンテナの下敷きになった作業員の男性1人が死亡した。 ライフラインや交通にも大きな影響があった。落雷や風雨の影響で、東京都目黒区や大田区、神奈川県川崎市、千葉県市原市など各地で相次いで停電が発生した。鉄道では、東海道新幹線が東京~三島駅間で一時運転を見合わせたほか、東急目黒線の西小山駅で線路が冠水し夜まで運転ができない状態になるなど、首都圏の複数の路線で運転見合わせやダイヤの乱れが生じ、帰宅ラッシュに大きな影響があった。また、羽田空港では、雷雨のため14:00過ぎから地上作業ができなくなり、一時航空機の離着陸が中断された。11日の羽田空港発着便は日本航空と全日空の2社だけでも計120便以上が欠航となり、影響は翌日にも及んだ。 【自然災害】北海道で初の線状降水帯発生 大雨や突風による被害 [被害]負傷者3人 家屋損壊61軒 家屋浸水25軒 2025年9月20日から21日にかけて、前線を伴った低気圧が発達しながら北海道付近を通過した影響で、北海道では太平洋側を中心に記録的な大雨となり、十勝地方と釧路地方では線状降水帯が発生した。2021年6月に気象庁が「顕著な大雨に関する気象情報」の運用を開始して以降、これが道内で初となる線状降水帯の発生となった。 北海道の太平洋側では、低気圧や前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が非常に不安定となったため、9月20日夜遅くから21日朝にかけて発達した雨雲がかかり、大雨となった。1時間降水量は胆振地方の厚真で88.5mm、12時間降水量は釧路地方の二俣で186.5mm、白糠で171mmなど観測史上1位の記録を更新する地点が相次いだ。 この大雨で、北海道では胆振・日高・十勝・釧路・根室地方で家屋の損壊や浸水の被害が相次いだ。また、日高地方の新ひだか町では突風が発生し、3人が負傷した。このほか、道内では約1万4000軒で停電が発生したほか、高速道路では道東道の一部区間が土砂流入の影響で9月25日夕方まで約4日半にわたり通行止めとなった。最も影響が長期化したのは鉄道で、JR根室本線は十勝・釧路地方にまたがる十弗~音別駅間のあわせて9か所で路盤の流出やレールの歪みなどの被害があり、10月5日の全線での運転再開まで約2週間を要した。 今回の線状降水帯発生の背景としては、今年の夏の猛暑の影響で北海道の南の海面水温が平年より3~5℃ほど高かったことがあり、ここに低気圧が発達しながら通過したことで、上昇した大量の水蒸気が北海道の太平洋側に流れ込み、雨雲を発達させたとみられている。 ●10月 【事故】川崎市高津区の東急田園都市線梶が谷駅構内で列車衝突事故 回送列車が脱線 [被害]負傷者1人 2025年10月5日23:04頃、神奈川県川崎市高津区の東急田園都市線梶が谷駅構内で、引き込み線に向かう途中で停車していた回送列車に渋谷行き上り列車が衝突する事故があった。この事故で回送列車の最後部車両1両が脱線し、乗務していた車掌1人が負傷した。上り列車の乗客乗員計約150人にけがはなかった。事故発生後、東急田園都市線は翌6日深夜にかけて24時間以上にわたり一部区間で運転を見合わせた。同線に乗り入れる東急大井町線の列車を含む計1107本が運休となり、計約65万2000人に影響した。 衝突事故が発生した原因は、連動装置とよばれる信号システムの設定不備により、回送列車が引き込み線に完全に入りきっていない状態でも上り列車の進行を許可する信号が表示される状態になっていたことであった。東急電鉄が東急線各駅の信号システムを調査した結果、梶が谷駅だけでなく別の2駅でも同様の設定不備が見つかり、順次改修が行われた。 また、事故の発生を受けて国土交通省は10日、全国の鉄道事業者などに対して信号システムの設定を緊急点検するよう指示した。緊急点検によりJR西日本や阪急電鉄などでも一部の駅や車両基地で信号システムの条件設定に不備があったことが判明し、各社で対策が講じられることとなった。 【自然災害】台風22号と23号が立て続けに伊豆諸島に接近 八丈島を中心に大きな被害 [被害]住宅被害多数 停電最大約7000軒 断水最大約4100軒 2025年10月5日に小笠原近海で発生した台風22号は、発達しながら日本の南を北西に進んだあと、進路を北東にかえて10月9日明け方に伊豆諸島南部に最も接近した。この時の中心気圧は940hPa、中心付近の最大風速は50m/sの非常に強い勢力であった。 台風接近に伴い、伊豆諸島ではこれまでに経験したことのないような記録的な暴風・高波が予想されたことから、気象庁は8日16:50、伊豆諸島南部の東京都八丈町と青ヶ島村に暴風・波浪特別警報を発表した。東京都に台風を要因とする暴風・波浪の特別警報を発表したのはこれが初めてのことであった。その後、21:10には伊豆諸島南部の三宅村、御蔵島村に加え、伊豆諸島北部の利島村、新島村、神津島村にも暴風・波浪特別警報が発表された。さらに、翌9日明け方には伊豆諸島南部で線状降水帯が発生し、猛烈な雨が降り続いたことから、06:20に八丈町に大雨特別警報が発表された。 この台風の影響で、八丈島では最大瞬間風速54.7m/sを観測したほか、線状降水帯の発生などにより、1時間に92mmの猛烈な雨を観測した。また、降り始めからの総雨量が430mmを超える大雨となった。被害状況としては、八丈町と青ヶ島村を中心に建物被害が多数あるとの報告があったほか、最大約7000軒で停電が発生し、最大約4100軒で断水が発生した。断水は10月末時点でも八丈町の一部地域で継続している。このほか、通信障害やフェリー・飛行機の欠航といった影響も見られた。この台風に伴い、東京都は利島村、新島村、神津島村、三宅村、御蔵島村、八丈町、青ヶ島村の7町村に災害救助法の適用を決定した。 また、10月8日にフィリピンの東で発生した台風23号は、台風22号の後を追うような進路で北上し、13日に伊豆諸島南部に最も接近した。八丈島空港で42.7m/sの最大瞬間風速を観測したほか、青ヶ島村では降り始めからの総雨量が200mmを超えた。 【事故】全国各地でクマによる人身被害相次ぐ [被害]死者13人 2025年秋以降、全国各地でクマによる人身被害が相次いでいる。環境省によると、今年度のクマの被害による被害者数は11月30日現在で230人、このうち死者数は13人となり、いずれも統計がある2006年度以降では最多となった。 死者13人を都道府県別にみると、多い順に岩手県5人、秋田県4人、北海道2人、宮城県と長野県でそれぞれ1人となっており、岩手県、秋田県での多さが目立っている。また、被害の多くが人の日常生活圏で発生していることも特徴で、クマが本来の生息域である森林に近い環境から人里に侵入する事例が相次ぐことで広い範囲で人身被害が増えている。さらに、クマが商業施設や行政機関、駅など多くの人々が利用する場所に出没する事例も多く、市民生活や経済活動にも大きな影響をもたらしている。 こうした人身被害の増加を受けて、政府は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」(鳥獣保護法)を改正し、クマやイノシシなどの危険鳥獣が人の日常生活圏に出没したり、建物への侵入が見られた場合などに、安全確保などの一定の条件下で市町村長の指示により、ハンターなどによる市街地での駆除を可能とした。これが「緊急銃猟制度」で、9月1日の制度運用開始後、11月14日までに24件のクマへの発砲事例があった。都道府県別では新潟県6件、秋田県5件をはじめ、北海道から福井県にかけての日本海側の地域での事例が多くなっている。 さらに、秋田県では県内の広い範囲でクマによる人身被害が相次いでいることを受け、10月28日に県知事から防衛大臣に支援の要請があり、11月5日から陸上自衛隊による活動が始まった。11月13日時点で、鹿角市や湯沢市など県内5市1村で活動しており、箱わなの運搬や駆除後のクマの運搬、ドローンなどによる情報収集などを行っている。 ●11月 【自然災害】三陸沖でM6.9の地震 岩手県沿岸に津波注意報 [被害]なし 2025年11月9日17:03頃、三陸沖を震源とするM6.9の地震が発生した。この地震により、岩手県盛岡市、矢巾町、宮城県涌谷町で最大震度4を観測したほか、北海道から中部地方にかけて震度3~1の揺れを観測した。また、岩手県大船渡で16cm、岩手県宮古で9cmの津波を観測した。気象庁は17:12に岩手県の沿岸に津波注意報を発表し、海の中や海岸から離れるよう呼びかけたが、同日20:15にすべて解除された。 この地震の震源付近では、11月に入ってから活発な地震活動が継続して見られており、これまでにM6.0を超える地震が4回、M5.0を超える地震が20回以上観測されている。今回の地震は同規模の地震が続けて発生しやすい領域(続発領域)内で発生していることから、気象庁は「地震発生から1週間程度はM6.9と同規模以上の地震に注意が必要である」と呼びかけた。 また、日本海溝・千島海溝沿い(北海道の根室沖から東北地方の三陸沖)の巨大地震の想定震源域及び想定震源域に影響を与える外側のエリアでMw7.0以上の地震が発生した場合に発表される「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の発表基準には達しなかったため、今回の地震による発表はなかった。 【火災】大分県大分市で大規模火災、187軒が焼損 [被害]死者1人 負傷者1人 建物焼損187軒 2025年11月18日、大分県大分市佐賀関で住宅など187軒が焼損する大規模な火災が発生した。この火災で、火元とみられる住宅に住んでいた男性1人が死亡し、1人が軽傷を負った。 被害が大きかったのは佐賀関漁港の北東に位置する住宅地で、漁港から南東に約1.5km離れた無人島の蔦島にも燃え広がり、焼損範囲は約4.9ヘクタールにのぼった。これは2016年12月に発生した新潟県糸魚川市での大規模火災の焼損範囲よりも大きく、2024年1月の能登半島地震により石川県輪島市で発生した大規模火災の焼損範囲に匹敵する大きさであった。 大分市の火災では、住宅が密集していたことや強風により飛び火が発生したことなど複数の要因により消火活動が難航したとみられ、蔦島を除く佐賀関半島部分で火災の鎮圧が確認されたのは同月20日、全域の鎮火が確認されたのは火災発生から2週間以上経過した12月4日となった。 この火災について、大分県は大分市への災害救助法の適用を決定した。 ●12月 【自然災害】青森県東方沖でM7.5・最大震度6強の地震 初の「北海道・三陸沖後発地震注意情報」発表 [被害]負傷者47人 家屋被害337軒 2025年12月8日23:15頃、青森県東方沖(八戸の東北東80km付近)を震源とするM7.5の地震が発生した。この地震で青森県八戸市で最大震度6強を観測したほか、北海道から近畿地方にかけての広い範囲で震度6弱~震度1の揺れを観測した。また、北海道太平洋沿岸中部、青森県太平洋沿岸、岩手県に津波警報、北海道太平洋沿岸東部、北海道太平洋沿岸西部、青森県日本海沿岸、宮城県、福島県に津波注意報が発表され、岩手県の久慈港で70cmの津波を観測した。 この地震の後も青森県東方沖を震源とする地震が相次ぎ、12月12日11:44頃にはM6.9の地震が発生、北海道・青森県・岩手県・宮城県・秋田県の38市町村で最大震度4を観測した。この地震では北海道太平洋沿岸中部、青森県太平洋沿岸、岩手県、宮城県に津波注意報が発表され、北海道えりも町庶野と青森県の八戸港で20cmの津波を観測した。 この一連の地震で、北海道、青森県、岩手県であわせて47人が負傷したほか、住宅被害は青森県だけで335軒にのぼった。また、停電や断水などライフラインへの影響のほか、青森県八戸市では中心部にあるNTT東日本の鉄塔が倒壊するおそれがあるとして、周辺の最大48世帯に最長2週間近くにわたって避難指示が発令されるなどの影響があった。 12月8日の地震を受け、気象庁と内閣府は2022年12月の運用開始後初となる「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表し、「北海道の根室沖から東北地方の三陸沖にかけての巨大地震の想定震源域では、新たな大規模地震の発生可能性が平常時と比べて相対的に高まっている」として、社会経済活動を継続しながらすぐに逃げられる態勢の維持や家具の固定、避難経路の確認などの日頃からの地震への備えの再確認を地震発生から1週間にわたって呼びかけた。 【自然災害】群馬県妙義山と神奈川県日向山で林野火災続く、群馬では鎮火まで約2週間 焼失面積(群馬県)30ha (神奈川県)1.3ha(神奈川県) 2025年12月8日午前、群馬県富岡市妙義町諸戸の妙義山で、林野火災が発生した。地元消防が消火活動に当たるが火の勢いは収まらず、群馬県と隣接県、航空自衛隊のヘリも出動し散水を行った。2日後の10日11:47にこれ以上延焼しない鎮圧状態となったが完全な鎮火に至らず、約2週間経過した23日11:53に火が完全に消し止められ鎮火した。この火災で林野約30haが焼損したが、人や建物の被害はなかった。 2025年12月9日15:00、神奈川県伊勢原市日向の日向山で、林野火災が確認された。現場は山の中で、夕刻からの消火活動が難しく、翌10日朝に地上から機材を持った消防隊員が現場へ上ったほか、応援を要請した横浜市消防などのヘリコプターによる散水が行われたものの鎮火に至らず、11日からは災害派遣要請によって活動した陸上自衛隊のヘリによる散水も行われた。結果、12日16:50に鎮圧、さらに4日後の16日16:35に鎮火した。この火災で林野約1.3haが焼損した他、9日21:20から12日まで、近隣に自主避難所が開設された。 2025年は、2月に岩手県大船渡市で、3月には岡山県岡山市と玉野市、愛媛県今治市と西条市で住民避難を伴う大規模が林野火災が発生し、また11月には大分県大分市佐賀関で大規模な火災が発生し、林野にも延焼していた。これらを受けて、総務省消防庁が全国の自治体へ林野火災注意報・警報の運用開始を呼びかけ、2026年1月から全国で順次運用が始まるほか、気象庁も「少雨に関する気象情報」において、林野火災を明示し火の取り扱いへの注意を呼びかけるなど、対策が行われることとなった。 【事故】群馬県みなかみ町の関越道で車両67台の関係する多重事故、28人死傷 [被害]死者2人 負傷者26人 2025年12月26日19:30頃、群馬県みなかみ町石倉の関越自動車道下り線の水上IC付近で、トラック同士の事故をきっかけに、これを避けようとした後続の車両同士が相次いで衝突する多重事故が発生した。事故の範囲は約300mにおよび、関係した車両はトラック42台を含むあわせて67台にのぼり、このうち20台が炎上した。この一連の事故で、衝突の前のほうで巻き込まれた乗用車に乗っていた1人と中央付近で炎上したトラックに乗っていた1人の合わせて2人が死亡し、重傷5人を含む26人が負傷した。 事故当時、みなかみ町には大雪警報が発表されており、雪が降る中で路面は凍結し積雪もあった。警察は凍結した路面でスリップしたことが原因とみて状況を調べている。 事故現場には衝突・炎上した車両が多数残され、路面や案内装置も損傷したことから、関越自動車道は群馬・新潟県境にまたがる月夜野IC~湯沢IC間の上下線で通行止めとなっていたが、上り線の全区間と下り線の水上IC→湯沢IC間は事故発生から29時間あまり経った28日00:45に解除された。また、最後まで通行止めとなっていた下り線の月夜野IC→水上IC間も、事故発生から41時間あまり経った28日13:00に解除された。

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