2025年を締めくくるにあたり、今年発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。 ※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。 ●1月 【自然災害】中国・チベット自治区でM7.1の地震、死者126人 [被害]死者126人 負傷者188人 2025年1月7日09:05頃(日本時間同日10:05頃)、中国・チベット自治区シガツェ市ティンリ県でM7.1(日本の気象庁発表)、震源の深さ10kmの地震が発生した。この地震の後も、周辺では1200回を超える余震が発生した。この地震で、13日時点までに126人が死亡、188人が負傷したほか、3600棟余りの住宅が倒壊した。被災した地域は、エベレストの麓に位置し海抜4000mを超え、最低気温が氷点下10度を下回る環境のため、救助活動や避難生活は厳しいものとなった。 また、耐震性の低い木造やれんが造りの住宅が多かったことが被害の拡大につながった可能性があると指摘されている。 【自然災害】アメリカ・ロサンゼルス近郊で山火事、29人死亡 鎮圧まで3週間以上 [被害]死者29人 行方不明者31人 家屋全焼1万6000軒以上 2025年1月7日頃から、アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス西部のパシフィックパリセーズなど複数箇所で相次いで山火事が発生し、地元消防当局は住民3万人に避難命令を出した。山火事は強風によって燃え広がり、8日には北部アルタデナ周辺など合わせて3か所で山火事が発生、10万人が避難命令の対象となった。 発生から1週間の時点でも鎮火に至らず、8万人以上が避難命令の対象となり、この時点で少なくとも約150平方キロメートルが焼け、死者25人、住宅など1万2000軒以上が焼失した。その後、2週間後の時点でも鎮圧に至らず、発生から24日が経過した1月31日にようやく鎮圧が宣言された。この一連の山火事で、29人が死亡、1万6000軒以上の家屋が全焼した。焼失した地域の一部には、世界的な知名度を持つ俳優や歌手など多くの著名人が居住する地域も含まれており、ハリス前副大統領の家も焼損したと報じられた。 火災が拡大し消火活動に手間取った背景としては、空気の乾燥と強風が続いたことに加え、消火に用いる水の不足や、もとより消防官の人手が少ないという理由が挙げられた。また、アメリカ大統領の政権交代時期とも重なり、政治的な対立が持ち込まれるなどの混乱も見られた。 【事故】アメリカ・首都ワシントン近郊で旅客機と軍用ヘリが空中衝突、双方の乗客乗員全員死亡 [被害]死者67人(旅客機64人、軍用ヘリ3人) 2025年1月29日21:00頃(日本時間1月30日11:00頃)、アメリカ・首都ワシントン近郊のロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港付近で、着陸態勢に入っていたカンザス州ウィチタ発のアメリカン航空5342便(グループ会社のPSA航空が運航・ボンバルディアCRJ-700型機)とアメリカ陸軍のヘリコプター「UH60ブラックホーク」が空中衝突し、両機とも空港近くのポトマック川に墜落した。 旅客機には乗客60人と乗員4人の合わせて64人、軍用ヘリには兵士3人が搭乗していたが、これまでに双方の乗客乗員67人全員の遺体が収容された。旅客機の出発地のカンザス州ウィチタでは、同地で開催されたフィギュアスケートの全米選手権にあわせて育成強化合宿が行われており、旅客機にはこの合宿に参加していた選手やコーチなどが多く乗っていたとみられる。 ロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港は、首都ワシントンの中心部に近く、利便性が高いため旅客機の発着が多い。その一方で、ホワイトハウスや国防総省(ペンタゴン)などの重要施設にも近く、その周辺は飛行禁止区域となっていることから、限られた空間に旅客機、軍用機、政府高官などを乗せた専用機などが多数飛行する過密な空域となっている。 そうした中、事故当時は軍用ヘリが通常よりも高い高度を飛行していたとみられることから、管制官の指示が軍用ヘリに正確に伝わっていたかや、管制官の人数や配置が適切だったかどうかなどが事故原因の特定に関わってくるものとみられている。 ●2月 【テロ】スウェーデン南部の教育施設で銃乱射、11人死亡・6人負傷 [被害]死者11人 負傷者6人 2025年2月4日昼過ぎ、スウェーデン南部エーレブルの教育施設で銃乱射事件があり、犯人を含めた11人が死亡し、6人が負傷した。 犯人は30代の男で、警察によるとギャングなどには所属しておらず事件の動機に思想的なものがあるとは考えていないという。男は猟銃を乱射したのち自殺したとみられる。 教育施設は、21歳以上を対象としており、職業訓練や数学、物理を教えていたほか、移民にはスウェーデン語の授業が提供されていた。 スウェーデンでは銃撃事件がたびたび発生しており、社会の脅威となっている。今回事件の起きたエーレブルでも、2022年5月にシリア系移民の多い地区で若者3人が射殺される事件が起きている。 今回の事件に対して、クリステション首相は「スウェーデン史上最悪の銃乱射事件だ」と非難した。 【テロ】ドイツ南部ミュンヘンで開催中のデモに車が突入、2人死亡・37人負傷 [被害]死者2人 負傷者37人 2025年2月13日午前、ドイツ南部バイエルン州ミュンヘンで、中央駅の近くで開催されていたデモに、男が運転する車が突入した。この事件で、2人が死亡、37人が負傷した。警察は、車を運転していた24歳のアフガニスタン出身の男を拘束した。 男は、2016年頃ドイツに到着し、難民申請は拒否されたものの、居住の許可を得ていた。治安当局によると、SNSでイスラム過激思想などに関する投稿を行っていたほか、事件発生後にも「神は偉大なり」と叫ぶなどしたとの報道もある一方、過激派組織との直接的な関係はないとみられている。なお、翌14日から16日まで、ミュンヘンでは国際安全保障会議が行われる予定だったが、犯人は同会議とは無関係に事件を起こした模様だ。 ドイツでは、2024年12月にもサウジアラビア出身の男がクリスマスマーケットに車で突入するなどのテロ事件が相次いでおり、23日に投票が行われるドイツ連邦議会の総選挙に向けて、移民政策が争点となっている中での事件だった。 【事件】ミャンマー東部の特殊詐欺拠点で数千人の外国人を保護、複数の日本人も含まれる 2025年2月22日から23日にかけて、ミャンマー東部のタイとの国境付近にある複数の特殊詐欺拠点に対して、現地を支配する武装勢力「国境警備隊(BGF)」が捜索を行った。特殊詐欺拠点では、中国やインド、アフリカの国々など世界各地から多くの外国人が集められ、監禁状態の下で金や暗号資産などの詐取に加担させられていた。 これまでの捜索により、日本人を含む外国人7000人以上が保護または確保され、順次タイへ移送を進めているが、保護施設が足りず移送に時間を要しているほか、移送を拒み逃走を続ける外国人もいるなど現地では混乱が続いている。 この問題が日本で大きく取り上げられたのは、今年1月から2月にかけて男子高校生2人がミャンマー東部の特殊詐欺拠点で相次いで見つかり、タイ警察によって保護されたことがきっかけとなった。男子高校生らは、ネット上で知り合った人物から海外での仕事に誘われタイへ渡航した後、ミャンマー東部の特殊詐欺拠点に連れていかれ、日本の高齢者に向けて特殊詐欺の電話をかけていたとみられている。 これらの特殊詐欺拠点は中国系の犯罪組織によって整備され、ミャンマーの軍事政権と対立し政権の統治が及ばない武装勢力の支配地域で拠点を拡大していったと考えられている。 今回、中国系の犯罪組織による大規模な特殊詐欺が国際社会に明るみになったことで、中国政府がタイ政府と協力し、現地の武装勢力へ働きかけて特殊詐欺拠点の捜索や外国人の保護を行ったが、犯罪組織は潜伏しながら活動を続けているとの情報もあり、犯罪組織の根絶にはなお時間がかかるものとみられている。 ●3月 【政変・政情不安】シリア治安部隊と前政権支持勢力が衝突、市民に犠牲多数 [被害]死者1860人以上 2025年3月6日、2024年12月にアサド政権が崩壊したシリア北西部のラタキア郊外で、前政権支持勢力が暫定政府の治安部隊を襲撃する衝突が発生した。この衝突に端を発した攻撃は、ラタキア、西部タルトス、中部ハマなどで数日にわたって続き、在英のシリア人権団体は3月12日までに市民1380人以上、治安部隊と前政権支持勢力480人以上が死亡したと伝えた。 攻撃が発生していた地中海沿いはアサド前大統領と同じ少数派のイスラム教アラウィ派が多く暮らす地域で、前政権の支持基盤だった。 アハマド・シャラア暫定大統領は「国の統一と市民の平和を維持しなければならない」と述べ、事態の沈静化を呼びかけた。 【自然災害】韓国各地で過去最大規模の山火事、約4万8000ヘクタール焼失し30人死亡 [被害]死者30人 負傷者40人以上 約3300軒全焼 2025年3月21日頃から、韓国各地で山火事が発生し、乾燥した空気と強風により慶尚南道や慶尚北道など広い範囲で燃え広がった。一時は全北特別自治道や首都ソウルに隣接する京畿道でも発生した。 21日、慶尚南道中部の山清で山火事が発生、隣接する河東郡まで延焼した。この21日に、韓国の各地で山火事が発生したものと見られている。 翌22日には、慶尚北道義城で、墓参時の失火が原因とみられる山火事が発生、強風により隣接安東市など東側へ燃え広がり、一時は日本海沿岸まで達した。被害はこの火災で多く見られ、消火活動に従事していた地元住民や、逃げ遅れた高齢者施設の入居者などが犠牲となった。また、消火活動を行っていたヘリコプター1機が墜落し、操縦士1人も死亡した。さらに、この地域に所在していた文化財も火災に巻き込まれ、義城では、7世紀に建立された寺院の建物が全焼するなど、国家指定遺産30軒が被災した。隣接する河東市では、伝統的家屋が保護される世界文化遺産の河回村にも一時火の手が迫った。 出火から10日後の3月31日に、韓国政府は全ての山火事の鎮圧と、死者30人、負傷者40人以上、3300軒が全焼するなどの被害を発表した。韓国山林庁によると、約4万8000ヘクタールが焼失し、過去25年間で最大の被害面積となった。大統領代行の韓悳洙首相は「史上最悪の山火事だ」と述べた。 また30日には、一連の山火事のうち、慶尚北道の火災で発端となった失火をしたとみられる男性が山林保護法違反の疑いで捜査された。 【自然災害】ミャンマー中部でM7.7、死傷者多数 タイなど周辺国でも大きな被害 [被害]死者3586人(ミャンマー3564、タイ22) 行方不明者約280人(ミャンマー210、タイ約70) 負傷者6753人(ミャンマー5012、中国1705、タイ36) ※4月6日現在 2025年3月28日12:50頃(日本時間同15:20頃)、ミャンマー中部のザガイン地方域を震源とするM7.7の地震が発生し、ミャンマーのほか周辺のタイや中国などでも大きな被害が生じた。 今回の地震はミャンマー国土の中央部を南北に走る活断層「ザガイン断層」の活動によるものとみられている。ザガイン断層は総延長約1000kmに及ぶとされているが、今回の地震ではこのうち200kmほどが動いたとみられている。 震源の近くには人口約120万人を擁するミャンマー第2の都市マンダレーがあり、市内では11~12階建てのマンション4棟のうち3棟が倒壊、残る1棟も低層部分がつぶれており、このマンションに住む日本人1人と連絡が取れなくなっている。マンダレー市内ではこのほかにも住宅や仏教寺院、ミャンマー最大の河川であるエーヤワディー川に架かる橋など多くの建造物が倒壊した。 ミャンマーには友好関係の強いロシアや中国などが支援に入っているが、ミャンマー国内では軍事政権とこれに抵抗する勢力との戦闘が地震後も断続的に発生し、中国からの救援車両が戦闘に巻き込まれるなど救助や支援活動が難航している。 一方、今回の地震では、震源から約300km離れた中国・雲南省や約1000km離れたタイの首都バンコクでも地震の揺れに伴う建物の損壊や人的被害があった。特にバンコクでは建設中であった30階建ての政府機関のビルが倒壊し多くの死者・行方不明者が出たほか、高層マンションの鉄骨が損傷するなどの被害が相次いだ。このように震源から大きく離れた地域での被害は長周期地震動によるものとみられている。 ●4月 【自然災害】インド東部・北部で雷雨、100人超死亡 [被害]死者100人超 2025年4月9日から、インドの東部・北部が落雷、雷雨に襲われた。この荒天による死者は100人を超えた。 9日にはインド東部ビハール州で落雷により13人が死亡し、10日も落雷や雷雨が続き少なくとも80人が死亡した。また、北東部ウッタル・プラデシュ州でも同様に22人が死亡した。 インドは例年6月頃から風水害が増えてくるが、今回は季節外れの被害となった。 なお、隣国のネパールでも被害が出た模様である。 【事故】イラン南部の港で大規模な爆発、死傷者1000人超 [被害]死者少なくとも70人 負傷者少なくとも1000人 2025年4月26日12:00頃(日本時間同日17:30頃)、イラン南部ホルモズガーン州の州都バンダルアバスで、港に置かれたコンテナで大規模な爆発が発生した。この爆発に伴って火災も発生し、多くのコンテナと中の商品が焼損したほか、港の周囲数kmにわたって建物の窓ガラスが割れるなどの被害があった。爆発音と衝撃は約50km先まで伝わったとの情報もある。この爆発で、これまでに少なくとも70人が死亡、少なくとも1000人が負傷した。 爆発の発生した港のあるバンダルアバスは、ペルシャ湾とオマーン湾との間の交通の要衝であるホルムズ海峡の北側に位置し、イランの重要な貿易港の一つであると同時に、軍事上の重要な拠点となっている。爆発の原因について、イラン政府はコンテナ内の化学製品が爆発した可能性が高いとしており、欧米メディアが報じた港に保管していたミサイル用固形燃料の取扱ミスの可能性については、イラン政府としてこれを否定している。 【ライフライン】スペイン・ポルトガルで大規模停電、一時は非常事態宣言も [被害]スペイン・ポルトガルのほぼ全域とフランスの一部で停電 2025年4月28日12:30頃(日本時間同日19:30頃)、スペインの全域で停電が発生した。欧州電力網からスペインを通じて供給を受けるポルトガルでも、ほぼ全域で停電したほか、隣接するフランス南西部の一部でも停電し、モロッコでもインターネット接続などに影響が生じた。 停電は、ほとんどの地域で同日中に復旧したが、スペインの首都マドリードやバルセロナなど主要都市で学校や医療機関の運営や交通機関の運行に支障が生じたほか、インターネット接続やクレジットカードなどの決済に影響が発生した。スペイン内務省は非常事態を宣言し、警察官3万人が動員された。また、ポルトガルでも、首都リスボンやポルトなどを中心に道路渋滞や交通機関の運行、決済システムなどが混乱した。 停電の原因は不明だが、スペイン国内で何らかの原因で電圧の急変動など電力供給に異常が生じ、欧州電力網からスペインへの電力供給が停止し、スペインから供給を受けるポルトガルでも連鎖的に停電が発生したものとみられている。一時、サイバーテロが原因との見方による混乱も発生したが、EU大統領が確証が無い旨の声明を発表するなどの状況も生じた。 ●5月 【自然災害】アメリカ3州で竜巻や暴風、27人死亡 [被害]死者27人 2025年5月16日~17日にかけて、アメリカのケンタッキー州、ミズーリ州、バージニア州で竜巻や暴風が発生し、多くの死傷者が発生した。ケンタッキー州で18人、ミズーリ州で7人、バージニア州で2人が死亡し、ミズーリ州では38人が負傷した。他にも多くの負傷者がでているとみられ、10人以上が重体となっている模様。物的被害も甚大で、最も多くの被害がでたケンタッキー州では数百棟の住宅が損壊したとみられる。 また、上記3州のほかミシガン州と合わせて、約46万軒で停電した。 【自然災害】スイス南部のアルプス山脈で氷河の崩落による大規模な土石流発生 [被害]行方不明者1人 現地時間2025年5月28日15:30頃、スイス南部バレー州のアルプス山脈にあるビルヒ氷河で大規模な崩落が発生した。崩落した氷河は土砂を巻き込みながら渓谷を流れ下り、土石流となって山麓にある人口約300人のブラッテン村に達した。土石流に襲われたブラッテン村では、村の約90%が土砂に覆われたとみられている。 この氷河の崩落に伴う土石流により、60代の男性1人が行方不明となった。なお、土石流の発生する可能性が地元当局から事前に呼びかけられていたため、村民のほとんどは5月中旬までに避難を終えていた。 今回の氷河の崩落は、スイスアルプス地域では少なくとも20世紀以降では前例のない規模とみられ、地球温暖化に伴う氷河の後退や永久凍土の融解との関連が研究者から指摘されている。 【事件】韓国ソウルで走行中の地下鉄車内で放火、20人以上搬送400人避難 [被害]負傷者21人 2025年5月31日08:45頃(日本時間同時刻)、韓国の首都ソウル市を走る地下鉄5号線麻浦駅~汝矣ナル駅間で、トンネルを走行していた車両内に男が可燃性の液体を撒いて放火した。乗客約400人が車外へ避難し、煙を吸うなどした20人以上が病院へ搬送された。火は乗務員や乗客が消し止めた。 火をつけた男は現場から逃走したが、約1時間後、警察によって身柄を確保された。男は、離婚訴訟の結果に不満を持ち、地下鉄にガソリンを持ち込み火をつけたと供述した。 韓国では、2003年2月18日に大邱市で、今回の事件と同様に地下鉄車内にガソリンを撒いて火をつけ、死者192人負傷者151人の火災となる大惨事が発生したが、その後に行われた車両の不燃化や防火対策が今回の火災で被害拡大を防いだ結果となった。 現場は、ソウルを代表する河川、漢江(ハンガン)を潜る区間で、対岸の汝矣島は国会議事堂や放送局、大企業の本社が集中する韓国の政治経済の中心。地下鉄を運営するソウル交通公社は、6月3日に控えていた大統領選挙を前に、警戒を強化した。 ●6月 【安全保障】パレスチナガザの物資配給拠点周辺で市民が攻撃され死傷者多数 [被害]死者334人 負傷者2600人以上 2023年10月からパレスチナのガザ地区ではイスラエルとの戦闘が続いているが、2025年6月になってイスラエル側と見られる攻撃で物資配給拠点周辺で市民の死傷者が多発している。攻撃は6月1~3日、6日、8~12日、14~17日、21日、23日、28日、30日に行われたことが確認されており、合計で死者326人、負傷者は2600人以上となっている。 また、6月12日には物資配給を行っている「ガザ人道財団」の現地スタッフが移動中に、イスラム組織ハマスからとみられる攻撃を受け少なくとも8人が死亡した。 【事故】エア・インディア機 離陸直後に市街地へ墜落 付近の住民も巻き込み260人以上死亡 [被害]死者260人以上 負傷者乗客1人(ほか複数の周辺住民) 2025年6月12日13:40頃(日本時間同日17:10頃)、インド西部のグジャラート州アーメダバード空港を離陸したエア・インディア機が墜落し、乗員12人乗客230人の合わせて242人のうち、乗客1人を除いた全員が死亡した。同機は離陸直後に空港周辺の市街地に墜落し、付近の医科大学宿舎の学生ら住民も巻き込まれる事故となった。現地報道は、乗員乗客と学生ら合わせて265人が死亡したと伝えた。また、周辺住民にも複数の負傷者がいる模様である。 同機は、離陸直後に機長が「推力がなく、上昇できない」と管制に伝え、救難信号を発信したが、離陸からおよそ30秒後に高度約190mから墜落した。墜落後、燃料に引火して爆発したものと見られている。 現場からはフライトレコーダーとボイスレコーダーが回収され、インド政府を中心にアメリカ、イギリス政府の航空当局や製造企業などの支援による調査委員会が原因究明を行った。その後、事故から1か月が経過した7月12日に、離陸直後からエンジンへの燃料供給が絶たれていたとする暫定報告書が発表され、なお調査が続いている。 【安全保障】イスラエル・アメリカがイランの核関連施設などを攻撃、イランも報復攻撃で死傷者多数 [被害]死者600人以上(イラン)・20人以上(イスラエル) 負傷者4700人以上(イラン)・3000人以上(イスラエル) 現地時間2025年6月13日未明(日本時間同日朝)、イスラエル軍はイラン国内にあるウラン濃縮施設をはじめとした核関連施設や軍事拠点など100か所以上を空爆した。 この空爆について、イスラエル軍はイランが核を含む大量破壊兵器の開発を進めており、その開発能力を削ぐことも目的に行ったとしている。この最初の空爆で、イラン側では革命防衛隊の総司令官をはじめとする政府高官や核開発に関連する科学者などが死亡したが、空爆はそれ以降も続き、民間人の死傷者も相次いだ。 これに対して、イランも報復攻撃としてイスラエルへ向けて多数の弾道ミサイルを発射した。ミサイルの多くは迎撃されたものの、一部は商業・経済の中心都市であるテルアビブなどへ着弾、市民にも死傷者が生じた。 さらに現地時間22日未明、アメリカ軍はイランの核関連施設3か所を空爆した。この空爆では地下深くにつくられた核関連施設を破壊するための特殊爆弾「バンカーバスター」が使用されたとみられている。これに対して、イランも中東のカタールにあるアメリカ軍基地へミサイルによる報復攻撃を行ったが、事前に予告されていたため大きな被害はなかった。 その後、現地時間24日、イスラエルとイラン双方が停戦に合意したことがアメリカのトランプ大統領より発表され、同日停戦が発効した。 攻撃開始当初、イランには約280人、イスラエルには約1000人の在留邦人がいたが、イランからは100人あまりが隣国アゼルバイジャンへ、イスラエルからは20人あまりが隣国ヨルダンへそれぞれ外務省の支援により陸路で退避した。 ●7月 【自然災害】アメリカ南部テキサス州の洪水で135人が死亡 [被害]死者135人 行方不明者3人 2025年7月4日04:00頃、集中豪雨によりアメリカ南部テキサス州のグアダルペ川で水位が45分で8メートル上昇し氾濫した。この影響で、多くの死者や行方不明者がでる被害が発生した。7月20日までに135人の死者が確認された。行方不明者も一時160人にのぼっていたが、その後連絡がとれるなどして最終的な行方不明者は3人となっている。 グアダルペ川の流域には複数のキャンプ場があり、当時はキリスト教系の女子向けのサマーキャンプイベントが行われていたため、多くの子供が集まっていたという。 この洪水では警報がならなかったことが問題視されており、システムの再検討などをおこなっている。 テキサス州で洪水によりこれほどの規模の被害が発生したのは1921年以来。その際には少なくとも215人が死亡している。 【事故】バングラデシュの首都ダッカの学校に空軍機墜落 児童ら31人死亡 [被害]死者31人 負傷者約170人 2025年7月21日13:18頃(日本時間同日16:18頃)、バングラデシュの首都ダッカ北部に位置する学校の校舎に、バングラデシュ空軍の訓練機が墜落した。この事故で登校していた児童ら30人と、訓練機のパイロットの合わせて31人が死亡、約170人が負傷した。訓練機は、日本の小学校に相当する年齢の児童が通う校舎に墜落したとみられている。 墜落した訓練機は、中国製戦闘機F-7BGI型機で、離陸から約10分後に何らかのトラブルが発生し墜落した。空軍当局は「故障が発生した」と発表し、詳しい原因は調査中としている。 事故を受け、同国暫定政権のユヌス首席顧問は、翌日22日を服喪日とし、事故原因について徹底的な調査を実施するとの声明を発表した。 【安全保障】タイ・カンボジア国境地帯で軍事衝突、死傷者多数 [被害]死者40人以上 負傷者90人以上 2025年7月24日朝、タイとカンボジアが領有権を巡って争う国境地帯で両国の軍事衝突が発生した。タイ軍によると国境地帯での銃撃戦の後、カンボジア側から砲撃があり、砲弾がタイ側の集落やコンビニエンスストアに着弾、子供を含む民間人10人以上が死亡、20人以上が負傷した。一方、タイはカンボジア軍の拠点を空爆するなどしてカンボジア側で10人以上が死亡、70人以上が負傷した。また、両国国境近くにある世界遺産で、国際司法裁判所によりカンボジアへの帰属の判断が示されたプレアヴィヒア寺院周辺に砲撃などを行い、建造物の一部が破損した。 その後も断続的に衝突が続いたが、ASEAN(東南アジア諸国連合)の今年の議長国でもあるマレーシアの仲介でアメリカ・中国の駐マレーシア大使同席のもと、28日にタイとカンボジア双方の首脳が協議し即時・無条件の停戦で合意、翌29日00:00(日本時間同日02:00)を以って停戦が発効した。今回の一連の軍事衝突で、これまでに両国の死者は民間人を含め40人を超え、約30万人が避難したとされる。 タイとカンボジアの国境地帯のうち、特にダンレク山地周辺では両国が領有権を巡り長年にわたって争いを続けてきた。とりわけ山地の頂に近いプレアヴィヒア寺院遺跡周辺では、2008年の遺跡の世界遺産登録を契機に両国の領有権争いが激しくなり、これまでにもたびたび武力衝突が繰り返されてきた。今年に入ってからも、5月に国境地帯の交戦でカンボジア兵1人が死亡、7月には巡回中のタイ兵が地雷を踏んで負傷する事件があった。 ●8月 【自然災害】中国各地で豪雨により多数の被害 [被害]死者67人 行方不明者50人 住宅損壊約2万4000軒 中国では2025年7月末から8月上旬にかけて複数回の豪雨で多数の被害が発生した。 北京市では7月23日から29日にかけて降った雨で、密雲区などの山間部の複数個所で土砂災害が発生したほか、洪水が発生するなどして44人が死亡、9人が行方不明となった。特に69人が入居していた密雲区の高齢者施設では、一帯が洪水に見舞われ救助が難航したこともあり、この施設だけで31人が死亡した。また、家屋にも被害が発生し、約2万4000軒の住宅が損壊した。 また、河北省では7月26日に大雨により2人が死亡、28日には大雨による地滑りが発生し4人が死亡、8人が行方不明となった。 8月に入ってからは、広東省広州市白雲区で8月6日に山崩れが発生し、7人が死亡した。また、甘粛省蘭州市では8月7日以降、川が氾濫し洪水が発生するなどして10人が死亡、33人が行方不明となった。 【自然災害】パキスタン・インドで豪雨被害 死者400人以上 [被害]死者400人以上 2025年8月14日頃から、パキスタン各地で豪雨による洪水や土砂崩れによる被害が相次いだ。被害は、北部山岳地帯のカイバル・パクトゥンクワ州を中心に広がり、降り続く雨の影響で多数の家屋が倒壊し、同州だけで死者320人以上となった。また、道路や通信網の途絶によって救助活動も遅れ、救援物資を輸送していたヘリコプターが墜落し5人が死亡する事故も発生した。 被害はこの他、ギルギット・バルチスタン地域や、インドと領有を争うカシミール地方でも発生した。カシミール地方のうち、インドが実効支配する領域に位置するチャショッティは、ヒンズー寺院巡礼の拠点で、豪雨の発生時多数の巡礼者が滞在していたとみられ、少なくとも50人が死亡、この他に60人程の負傷者と、80人程の行方不明者がいるとみられている。 両国では例年、夏になるとモンスーンによる大雨で多数の被害が発生しており、雨季の間続く大雨によって今後もさらなる被害が出るものと予想されている。 【自然災害】アフガニスタン東部でM6.0の地震、死傷者多数 [被害]死者2200人以上 負傷者3600人以上 住宅倒壊6700軒以上 2025年8月31日23:47頃(日本時間9月1日04:17頃)、アフガニスタン東部のパキスタン国境に近いナンガルハル州とクナール州の境界付近でM6.0の地震が発生した。地震の揺れは震源から約200km離れたアフガニスタンの首都カブールや、約300km離れたパキスタンの首都イスラマバードでも感じられた。 地震の被害はクナール州を中心にナンガルハル州など周辺の州にも及び、これまでに死者2200人以上、負傷者3600人以上の人的被害が生じた。また、家屋の倒壊はクナール州だけでも6700軒以上に及び、集落全体が壊滅状態となった村も複数あるとみられているが、大きな被害を受けた地域が山岳地帯にあるため救助活動や支援活動は難航している。 アフガニスタンは、ユーラシアプレートにインド・オーストラリアプレートが衝突するプレート境界に位置するため地震活動が活発な地域で、これまでにも規模の大きな地震が度々発生しているが、今回の地震の死者数は過去数十年でみても最も多くなっている。 ●9月 【政変・政情不安】ネパールでSNS禁止に抗議したデモが暴徒化、30人死亡 [被害]死者30人 負傷者1033人 2025年9月8日から9日にかけて、ネパールでSNSを禁止した政府に対しての各地でのデモが暴徒化し、多数の死傷者が出た。 前週、ネパール政府はフェイクニュースやヘイトスピーチに対処するためとして、SNSの使用を禁止し、実際にインスタグラムやフェイスブックなど26のSNS、プラットフォームへの接続が遮断された。これを受けて8日、首都カトマンズを中心に各地で大規模なデモが起きた。 デモは次第に暴徒化し、車への放火や投石などのほか、議会庁舎、最高裁判所、オリ首相の私邸などへの放火もあった。またデウバ外相は自宅で暴行を受けた。デモの鎮圧を図った警察とデモ参加者が衝突し、30人が死亡、1033人が負傷した。 こうした事態を受けて、軍トップがデモ隊の代表と9日夜に会談し要望の聞き取りが行われ、政府はSNS禁止を撤回し、オリ首相は辞任した。12日にスシラ・カルキ元最高裁判所長官が暫定首相に就任した。 【自然災害】マレーシアで大雨 13人死亡、多数が避難 [被害]死者13人 2025年9月12日頃から20日頃にかけて、カリマンタン島(ボルネオ島)の各地で降り続いた大雨のため、土砂崩れや洪水の発生が相次ぎ、マレーシアのサバ州では13人が死亡、隣接するサラワク州でも市街地での浸水や通信の途絶などの被害が生じた。 サバ州では、西海岸を中心に各地域で被害が発生し、土砂崩れや洪水で13人が死亡した。また、400人以上が浸水した家屋からの避難を迫られた。一部報道では、避難者の総数を3000人以上としている。サラワク州ロングラマでは、一時水位が60cmまで上昇し、停電や通信障害が発生した。また、長期化した雨の影響による洪水で、両州合わせて被災したおよそ150人が9月21日まで避難を余儀なくされた。 マレーシアや隣接するインドネシアでは激しい雨による水害が各地で発生しており、今回の大雨の前にも、インドネシアのバリでは9月7日頃からの洪水で17人が死亡するなど被害が相次いでいた。 【自然災害】台風18号 台湾やフィリピンなどで大きな被害 [被害]死者25人(台湾14人、フィリピン11人) 負傷者約100人 2025年9月22日から24日にかけて、台風18号が台湾、フィリピン、中国に接近し、各地で大きな被害が生じた。 日本時間9月18日21:00にフィリピンの東で発生した台風18号は、発達しながら西寄りに進んだ。22日には中心気圧905hPa・最大風速55m/sの大型で猛烈な勢力、JTWCでは最も強いカテゴリー5のスーパー・タイフーンとして台湾とフィリピンの間のバシー海峡を通過した。その後、台風は南シナ海を西寄りに進み、24日に中国・華南に上陸した。 特に被害が大きかったのは台湾で、23日午後、東部の花蓮県で土砂災害によって形成されていた天然ダムが台風による大雨で決壊し、大量の土砂を含んだ水が下流にある人口約1万2000人の光復郷の街に流れ込んだ。水位は一時、光復郷の中心部の住宅の2階に達するほど上昇し、逃げ遅れた住民など14人が死亡した。この天然ダムは、今年7月の台風6号接近時に発生した地すべりによって形成されていたもので、除去作業が難航していた中での新たな台風による被害となった。 また、フィリピンでは漁船が高波と暴風により転覆し漁民が死亡したほか、香港のホテルでは高波で窓ガラスが損壊し、室内に大量の海水が流入するなどの被害があった。 ●10月 【自然災害】ネパールとインドで豪雨、少なくとも64人死亡 [被害]死者少なくとも64人 2025年10月3日から、ネパールでは豪雨が続き、洪水、土砂崩れ、落雷などで大きな被害が発生した。特に被害が大きかったのは東部コシ州で、山間部での洪水や土砂崩れで少なくとも39人が死亡した。また、南東部マデシ州では落雷で3人が死亡し、ネパール全土で少なくとも44人が死亡し、5人が行方不明となった。このほか、中部では土砂崩れが発生し、複数の地点で高速道路が通行止めとなった。 一方、インドでも豪雨の影響で、東部の西ベンガル州ダージリンで地滑りが発生し、少なくとも20人が死亡したほか、西ベンガル州と北隣のシッキム州とを繋ぐ幹線道路が寸断されるなどの被害があった。 南アジアでは、例年6月~9月のモンスーンの時期に大雨による土砂崩れや鉄砲水などが発生し、多くの被害が出ている。 【政変・政情不安】マダガスカルでクーデター 大統領は国外へ逃亡 軍が権力掌握 [被害]死者少なくとも22人 負傷者100人以上 2025年9月25日、マダガスカルの首都アンタナナリボで、電力不足や断水に対する学生の抗議デモが発生、その際デモ隊と治安部隊が衝突したほか、各地で公共施設への放火や商業施設での略奪行為が行われ、少なくとも22人の死者、100人以上の負傷者が発生した。 抗議活動はその後も継続し、ラジョエリナ前大統領は首相を更迭するなどの妥協策を探ったが、軍の一部が離反、10月13日に予定されていた国営放送での演説前に国外へ逃亡していた。前大統領は演説の前週末にフランス軍機でマダガスカルを離れた模様で、退避先は明かさなかった。 その後、10月17日に軍の中枢部隊CAPSAT司令官のランジリアニリナ大佐が大統領へ就任し、2年間の暫定政権による統治と、民政移管のための選挙実施を表明した。ランジリアニリナ新大統領は、2023年にラジョエリナ前大統領への批判により投獄されていたものの、翌年学生や軍の一部の抗議で釈放されていた。 マダガスカルでは、2009年にもCAPSAT主導のクーデターが発生し、その後ラジョエリナ氏が大統領に就任していたが、経済の悪化に伴う貧困や前大統領関係者の汚職、電力や水の不足を背景に、学生など若者を中心としたデモが拡大していた。 【自然災害】ハリケーン「メリッサ」 カリブ海諸国を中心に大きな被害 [被害]死者75人以上(ハイチ43人、ジャマイカ32人など) 2025年10月28日から30日にかけて、ハリケーン「メリッサ」 がカリブ海を北上し、特にハリケーンの直撃を受けたジャマイカとキューバ、さらに周辺のハイチやドミニカ共和国などを中心に大きな被害が生じた。 10月21日に西アフリカ沖の大西洋上で発生したハリケーン「メリッサ」は西寄りに進みカリブ海で急速に発達、27日には最も強いカテゴリー5となり、28日にジャマイカ、続いて29日にキューバに上陸した。ジャマイカ上陸時の中心気圧は900hPaを下回り、中心付近の最大風速は約80m/sに達し、この地域に襲来したハリケーンとしては過去150年で最も強い勢力となった。 ジャマイカでは降り始めからの降水量が1000mmを超え、この地域の年平均降水量を上回る記録的な大雨となった。また、ジャマイカの沿岸部には4mを超える高潮が押し寄せ、衛星画像からも壊滅状態となった集落が数多くあることが確認された。また、ハリケーンの直撃は免れたものの、ハイチでも大雨による被害が広い範囲で発生した。ジャマイカやキューバなどの被災地ではライフラインの被害も深刻で、大規模な停電や通信障害により被害状況の把握が進んでおらず、孤立した集落が数多くあることから、実際の被害はさらに大きくなることが懸念されている。 今回のハリケーンによる被害に伴い、日本政府はジャマイカとキューバ両政府からの要請を受け、テントや毛布などの緊急援助物資の供与を決めた。 ●11月 【事故】アメリカ貨物大手UPSの貨物機が墜落、14人死亡 [被害]死者14人 負傷者23人 2025年11月4日17:15頃(日本時間5日07:15頃)、アメリカ南東部ケンタッキー州にあるルイビル・モハメド・アリ国際空港近くで、ハワイ州ホノルルに向かっていたアメリカ貨物大手のユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)の貨物機が離陸直後に墜落し、機体は炎上した。さらに、墜落した機体は空港近くの石油リサイクル施設など複数の建物を破壊した。この事故で、乗員3人が死亡したほか、地上にいた11人が死亡し、死者は合計14人となった。また、23人が負傷した。 国家運輸安全委員会(NTSB)は、報告書で離陸時にエンジンから火が上がり、脱落したと発表している。また、エンジンを主翼に固定する部品に疲労亀裂や過負荷の兆候があったとも指摘されている。 墜落した機体はマクドネル・ダグラス社の「MD-11F」で、米連邦航空局(FAA)は「MD-11」と「MD-11F」を運航停止とした。UPS社によると事故機とは別に26機の「MD-11」を保有しているという。 【事故】香港の高層住宅7棟で大規模火災、159人死亡 [被害]死者159人 安否不明31人 2025年11月26日15:00頃(日本時間16:00頃)、香港北部新界地区の大埔区にある高層住宅群「宏福苑」で火災が発生し、31階建ての高層住宅8棟のうち7棟に延焼した。いずれの棟でも多数の住民が取り残される中、最上階まで延焼し、火災発生から8日後の時点で159人の死亡が確認され、31人が安否不明のままとなった。 この高層住宅では、近接している全ての棟で外壁などの改修工事が行われており、現場には竹製の足場に張られた防護ネットや発泡スチロールの建材などが設置されていた。いずれも防火基準を満たさない可燃性の素材が用いられており、そのため急速に別棟まで延焼し、上層階まで燃え広がった可能性が指摘されている。また、設置されていた足場などにより消火活動や救助が難航した。 現場の高層住宅は、8棟に約4000人が暮らしており、高齢者の多くは避難できなかったものと見られている。犠牲者の中には、香港に多い外国人メイドとして、住み込みで働いていたフィリピンやインドネシアからの労働者も含まれていた。 火災現場などでは、市民が追悼や原因究明を訴える中で、抗議活動や反政府デモへの発展を恐れた香港政府が集会を開いた市民を逮捕した。一方で29日から3日間を追悼期間とし、半旗の掲揚や記帳台の設置を行ったほか、警察や汚職取締機関の廉政公署が、この火災に関係した建設コンサルティング会社などの役員合わせて15人を逮捕し、工事を巡る不正を調査する動きも見られた。また、香港政府の指示により、全ての大規模建物の改修工事現場で、防護ネットの撤去も行われた。 【自然災害】東南アジアを中心に大雨による大きな被害 [被害]死者2100人以上(インドネシア1006人、スリランカ約850人、タイ267人など) 2025年11月15日頃から月末にかけて、東南アジアの広い範囲とスリランカで大雨が続き、各地で大きな被害が生じた。一連の大雨による死者は、インドネシア、スリランカ、タイを中心にこれまでに2100人を超えた。 タイでは、北東モンスーンの影響で南部を中心に11月22日を中心に大雨となり、22日の日降水量が600mmを超えるなど300年に一度と言われる記録的な大雨となった。ソンクラー県ハートヤイ(ハジャイ)では高さ2mを超える浸水に見舞われ、住民に加え外国人観光客が孤立、救出される事態となった。このソンクラー県を中心にタイでは267人が死亡した。 インドネシアでは、赤道に近いマラッカ海峡で極めて異例となるサイクロン「セニャール」(センヤール)が発生し、スマトラ島では11月25日から26日にかけての2日間で600mmを超えるような大雨となった。スマトラ島では北部を中心に洪水や地すべりが相次ぎ、これまでに死者は1006人となった。アチェ州では現地のインフラ整備にあたっていた日本人8人が一時孤立し、インドネシア政府が手配した航空機で避難した。 スリランカでは、11月28日にサイクロン「ディトワ」が東海岸を通過し、北部州バブニヤでは27日の日降水量が356mm、28日までの一週間の総降水量が797mmに達した。各地で洪水や土砂崩れが相次ぎ、死者は約850人と今世紀に入って最も死者の多い大雨災害となった。 今回の大雨の要因として、日本の気象庁は、インド洋からの西風と太平洋熱帯域の東寄りの貿易風がともに強く、これらの風が収束する東南アジア周辺でサイクロンを相次いで発生させるような積乱雲の活動が活発化したことに加え、東南アジア周辺の海水温が高く大量の水蒸気が供給されたことを挙げている。 ●12月 【テロ】オーストラリア・シドニーのボンダイビーチ付近で銃乱射、16人死亡 [被害]死者16人 負傷者約40人 2025年12月14日、オーストラリア、シドニーの観光地ボンダイビーチで2人組の男による銃乱射事件があり、この事件で15人が死亡、約40人が負傷した。また、犯人のうち1人が警察に銃撃され死亡、1人は拘束された。 この日、ボンダイビーチではユダヤ教の祭りである「ハヌカ」を祝うため、ユダヤ人をはじめ1000人以上の人が集まっており、犯人はビーチ付近の路上で周囲に向けて銃を乱射した。 犯人の男2人は親子で、2人の車からは爆発装置が見つかった。2人は直前にフィリピンを訪問し軍隊式の訓練を受けており、また「IS(イスラミックステート)」に影響を受けていたとみられる。犯人のうち1人がISに関連の可能性がある人物として当局が調べていたとの報道もあった。オーストラリアのアルバニージー首相は、犯人の行動について、反ユダヤ主義的な主張に基づく悪意ある行動だとした上で、暴力を助長するような憎悪表現に対し罰則を強化するなどの対策を表明した。 【事件】台湾・台北中心部の繁華街で指名手配中の男が襲撃、犯人含む4人死亡 [被害]死者4人 負傷者11人 2025年12月19日、台湾・台北市の台北駅で、地下道で男が発煙弾や火炎瓶を投げ、この際制止しようとした男性1人を刺殺し、逃走した。その後、隣接する地下鉄中山駅の近くで発煙弾と刃物を持ち通行人を切りつけ、さらに男性2人を死亡させた。犯人は商業施設に押し入り、飛び降りて死亡した。男は最初の犯行現場である台北駅へ行く途中も路上のバイクに放火しており、台北駅から中山駅へ向かう際に滞在中のホテルで発煙弾など凶器類を追加していたと見られている。 台湾当局によると、犯人の男は、昨年4月からサバイバルゲーム用と偽り発煙弾を購入していたほか、今回の事件で使用した防毒マスクなどを買い集めていた。また、男は軍の予備役として定期的な教育招集に応じる義務があったが、転居届を出しておらず招集通知が送付できなかったため、今年7月に指名手配されていた。 事件を受けて、警察などが警備を強化していたが、いたずらとみられる爆破予告などが相次いだ。また国家安全局も、社会の安定を確保する必要があると強調したが、襲撃の動機は不明となっている。