「報道があった前日、1月18日に『新春大歌舞伎』を中村鶴松が休演すると松竹から発表があったんです。何かあったな、とは思っていました」 スポーツ紙の文化部担当記者がこう語る。 19日、若手歌舞伎俳優の中村鶴松(本名:清水大希)が建造物破損容疑で18日に逮捕されていたことが報じられた。現場は休演が発表された台東区浅草の浅草公会堂近くのケバブ店という。大手紙の社会部記者が明かす。 「鶴松さんは現場になったケバブ店での注文時のトラブルから、店の出入り口の自動ドアを蹴って破損させたようです。店が110番通報して、駆けつけた警察官に現行犯で逮捕されました。鶴松さんは逮捕時に泥酔状態だったようで、警察での取り調べにも、『覚えていない』と語っていたそうです」 酔った上での軽微な犯罪でもあり、すでに鶴松は釈放もされている。所属事務所は19日、HPで当分の間謹慎すると発表した。釈放直後に警察署前で集まったメディアに一礼した鶴松は、迎えの車に乗り込んだ。謝罪も含めた会見の予定はないという。 報道後のSNSでは、厳しい意見が数多く投稿された。しかしその一方で、「それこそ国宝のように這い上がってほしい」などと、早期の復帰を望む声も少なくない。 「鶴松さんは故・中村勘三郎さんの部屋子の出身で、一般家庭から歌舞伎界に入った歌舞伎役者です。鶴松さんの休演が伝えられている『猿若祭2月大歌舞伎』では、彼の初代舞鶴としての襲名披露と、幹部昇進の発表がおこなわれる予定でした」(スポーツ紙記者) 謹慎の期間は不明だが、「猿若祭2月大歌舞伎」では、代役は中村勘九郎と中村七之助が務めることになった。当然襲名披露も先延ばしということになる。 「これまでにも部屋子から幹部になった役者がいますが、ほとんどの場合、師匠の『芸養子』や法律的な養子になっています。 例えば、前者のケースでは澤村精四郎さんが、後者のケースでは片岡愛之助さんがいます。一門に留まったまま、芸養子にもならず幹部になる鶴松さんは、後に続く部屋子にとって、希望の星でもあったんです」 鶴松の師匠であった故・勘三郎は、実子の勘九郎と七之助に、部屋子の鶴松を加えた3人を“中村屋三兄弟”として修業させたという。しかし、名門の御曹司である勘九郎や七之助と鶴松には、歴然たる格差があった。歌舞伎を題材に昨年から大ヒットした映画『国宝』は、主人公の部屋子の俳優と名跡の実子とが芸で競い合う姿が描かれていた。鶴松は、まさに『国宝』の主人公のリアル版と言えるのだ。 「歌舞伎関係者と映画館で『国宝』を観た鶴松さんは自身の修業を思い出したのか、最後まで観られずに退席したとも言います。 2000年に勘三郎さんが『平成中村座』を立ち上げたことで、中村屋は地方公演も多い。勘九郎さんや七之助は勘三郎さんの楽屋で支度をしますが、鶴松さんはトイレや会場の外で支度をしている姿を目撃されています。鶴松さんは中村屋のファンからは『鶴松君』と君付けで呼ばれていますが、御曹司の勘九郎さんや七之助さんよりもそれだけ身近な存在でもあるわけです。これまでの修業の苦労を知っているだけに、反省して復帰してほしいと願っているファンは多いと思いますね」(同前) 現在、事務所が仲立ちしてケバブ店との弁済や和解を進めているともいう。中村屋では七之助が2005年、勘三郎の襲名披露の祝賀パーティーに出席後に泥酔してタクシーに無賃乗車する事件を起こした。この時の謹慎が3カ月だったことから、鶴松も同程度の期間になるのではと推測されているが、逆に伸びる可能性もあるという。 「休演が決まった『猿若祭2月大歌舞伎』は、初代中村勘三郎の起こした猿若座(後の中村座)に由来します。10月には『平成中村座』の発祥の地である浅草で、『平成中村座10月大歌舞伎』が上演されることが発表されています。中村屋一門にとって一つの大きな区切り。ここで鶴松さんが復帰すれば、彼を一門で支え、再起をかける興行になるのでは、とも見られています」(同前) 2月1日に幕を開ける『猿若祭2月大歌舞伎』。休演する鶴松は、どんな気持ちで観るのだろうか。