「菊池事件」で再審開始認めず ハンセン病の特別法廷で死刑判決受け執行

昭和27年に熊本県で起きた「菊池事件」で、熊本地裁(中田幹人裁判長)は28日、ハンセン病の特別法廷で殺人罪で死刑判決を受け、執行された男性の再審開始を認めない決定をした。菊池事件の審理を巡っては「違憲」とする民事判決が確定。弁護側は男性が「犯人ではない」と訴えるとともに、憲法違反が再審開始の理由になるとも主張していた。 男性の裁判が行われたのは、国立ハンセン病療養所菊池恵楓園(熊本県合志市)内などに仮設された特別法廷。熊本地裁は令和2年の民事判決で、当時の審理が憲法14条(法の下の平等)などに違反したと認定した。裁判の公開原則を定めた憲法37条に違反する疑いもあると指摘した。 刑事訴訟法では「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠を発見したとき」などに再審を認めているが、この民事判決は「手続きに憲法違反があることが再審事由に当たると解することにも相当の理由がある」と判示していた。 弁護側は憲法違反を理由に「裁判をやり直すべきだ」と主張。一方で検察側は「現行法には規定がなく認める余地はない」と反論していた。 さらに弁護側は事件自体が「冤罪(えんざい)」だったとも訴えた。新証拠として、遺体に凶器とされた短刀と整合しない傷があることなどを示す法医学者の鑑定書や、殺害告白を聞いたとする親族の供述が「実体験に基づく蓋然性は極めて低い」とする心理鑑定書を提出していた。 確定判決などによると、昭和27年7月に熊本県内の山道で地元の村の元職員が全身20カ所以上を刺され失血死しているのが見つかり、当時29歳の男性が逮捕された。 公判で男性は無実を訴えたが、28年8月に死刑判決が言い渡され、その後に確定。元職員が男性がハンセン病患者だと県に報告したことで、県が男性に療養所への入所を勧告したとされ、これに対する逆恨みが動機と認定された。 ■ハンセン病の特別法廷 裁判所法は、最高裁が必要と認めれば外部で特別法廷を開くことができると規定。強制隔離政策がとられていたハンセン病患者の裁判では、事務総局の形式審査で設置が認められ、昭和23~47年に95件開かれた。死刑判決は菊池事件の1件のみだった。最高裁は平成28年に特別法廷の運用の違法性を認め、「差別的取り扱いで患者の人格と尊厳を傷つけたことを深く反省し、おわびする」と明記した調査報告書を公表した。

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