作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回のテーマは女性とプレコンセプションケアについて。 * * * 「自然妊娠はできないと思っている人が増えている」 産婦人科医の友人がそう言っていた。 「そろそろ子どもがほしいので」と30代の夫婦がいきなり不妊治療を希望してきたり、30代を前にした女性が「そろそろ卵子凍結を考えたい」と、まるでそれが新常識のように考えていたりするという。子どもがほしいという男女に医師として「セックスの頻度は?」と聞くと、「していない」と答えるカップルも少なくないとか。 確かに若い世代と話していると、妊活をしなければ妊娠できない、と考える人が増えているように感じる。「妊活」とは性交のことではなく、よく眠りバランスの良い食事を取り健康的な生活を送るとか、身体を冷やさないとか、基礎体温を測って排卵日を意識して性交するとか……その上で病院に行って自分の妊孕性を確認するというような健康管理のことだ。今の時代、“子ども”とは「できちゃった」というようなものではなく、「つくる」という意思のもと、医療というテクノロジーに投資する、というプロジェクトになったかのように。 古い話だが、2008年に女性歌手さんがラジオの中で、「35歳を過ぎると羊水が腐る」という趣旨の発言をして、大バッシングを受けたことがある。あのとき、私は女性の言う“羊水が腐る分岐点にいる女”だったこともあり、ひどいこと言うなぁ~と驚いたものだけど、今にして思えば、20年近く前から「高齢出産は危険」「産むなら早いうちに」という声は大きくあった。 当時、団塊ジュニア世代が30代半ばの頃だった。団塊ジュニアが産まなければこの国は衰退していくしかない。少子化対策は何をおいても重要な政策のはずで、社会の声としても、「30代のみなさーん、そろそろ産みませんか~」という声は脅しのように響いていた。女性の「羊水が腐る」はそういう世の中の空気を反映したものだった。