「読者の目となり耳となる」 初の拘置所取材、被告との面会室で再認識した記者の本分 記者ノートfrom湊町

「150番の方、面会エリアへお進みください」。自動生成された音声に呼ばれると、ノートとペンを手に面会室へ向かった。 大阪市都島区の大阪拘置所で先月、窃盗罪で起訴された男へ面会したときの一場面。記者になって4年になるが、拘置所で遮蔽板越しに被告へ取材するのは初めての経験だった。 男は約8年間、東大阪市内の民家で窃盗を繰り返し昨年8月に逮捕された。無施錠の窓などから侵入する手口で、財布から金を抜くなどし、被害は府警が裏付けただけでも80件を上回った。 「どんな人が来るのか」。手のひらにジワリとにじむ汗を感じながら、無人の部屋に入室すると数分後、トレーナー姿で白髪交じりの男が現れた。連続窃盗犯との面会。緊張の瞬間だったが、動機や手口について包み隠さず話す男の姿に拍子抜けした。約20分の面会で、男は「申し訳ない。働いて必ず返していきたい」と何度も繰り返した。 入社以来、ほとんどの時間を警察担当として事件を追いかけてきた。だが、事件取材では逮捕された容疑者から直接話を聞く機会はほとんどない。記事に出てくる供述も、捜査関係者から「また聞き」で得た情報だ。読者の目となり耳となるのが新聞記者の使命だが、事件取材では高いハードルが生じる場面もある。 ただ唯一、自らの言葉で問い、自らの耳で答えを聞けたのが今回の面会取材だった。「自分の目で見て聞いたことを記事にする」。初心に戻り、記者の本分を改めて感じた時間だった。(木下倫太朗)

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