「ネタを探し求めて奔走する者たちのもとに、その夜、事件が自らやってきた」。 25日(現地時間)、米ワシントンヒルトンホテルで開催されたホワイトハウス記者団(WHCA)の年次夕食会で発生した銃撃事件について、AP通信はこのような表現とともに記者らの激しい取材エピソードを伝えた。社交場が一瞬にして事件現場へと一変した状況下でも記者魂はテーブルの下でも機能していた。本能が生み出した決定的な特ダネはもちろん、緊迫した状況の中で生じた誤報もすべて同じ場所から発信された。 ◆通信不良・携帯電話カメラが生み出した決定的な特ダネ AP通信によると、この日、容疑者が逮捕される場面をいち早く撮影できたのは会場特有の通信不良が関連している。特ダネの主人公であるAP通信のフォトジャーナリスト、アレックス・ブランドン氏は、取材陣ではなくゲストとしてこの席に招待され、普段使用しているカメラを持っていなかったという。 トランプ米大統領の演説を前に銃声が響いたとき、ブランドン氏は携帯電話を取り出すしかなかった。ブランドン氏はシークレットサービス(大統領警護隊)の要員に囲まれながら壇上から急いで去っていくトランプ大統領に向けてシャッターを切った。 問題は送稿だった。携帯電話の電波を探して夕食会場の外へ飛び出した彼の目の前に、シャツが脱げた状態で地面にうつ伏せになっている一人の男がいた。ブランドン氏は直感的にこの男が容疑者だと判断し、再びシャッターを切った。ブランドン氏は「正直、それは筋肉の記憶(マッスルメモリー)だった」と振り返った。 ◆トイレの前で銃撃犯と出くわしたアンカー、夕食会場は臨時プレスルームに 危うい対面もあった。CNNの看板アンカー、ウルフ・ブリッツァー氏はトイレから戻る途中、制圧される直前の銃撃犯と出くわした。警察はブリッツァー氏を床に伏せさせた後、安全のためにまた男子トイレに戻した。数々の紛争地を渡り歩いてきたベテランのブリッツァー氏でさえも「自分を撃とうとしているのかという考えが頭をよぎり、本当に怖かった」と語った。混乱した現場は事実上プレスルームと化した。ワシントンポスト(WP)のモラ・ジュドキス氏は「活字メディアの記者らは身をかがめたまま周囲の目撃者にインタビューを行い、放送記者は壇上が背景に映るよう角度を調整し、自撮りモードで生放送を続けた」と語った。 ◆速度と正確性が試される…誤報も 致命的なミスも発生した。CNNのアンカー、ケイトラン・コリンズ氏は生放送中、近くに座っていた治安関係者の言葉を引用し「容疑者の死亡が確認された」と報じたが、これは誤報だった。ジュドキス氏はテーブルの下から会社に「銃声」というメッセージを送った後、後悔したという。「本当に銃声だったのか、あるいは別の音だったのか、その瞬間には確信が持てなかったため、『未確認』という但し書きを付けるべきだった」。AP通信は「現場は、速報性と正確性の間という、記者という職業における最も古い試験台になった」と評価した。 レビット大統領報道官の行事前の冗談も改めて注目された。レビット報道官は行事のレッドカーペットで大統領の演説を予告しながら「楽しい場になるだろう」とした上で「部屋の中で数発の銃撃(shot)があるだろう」と述べた。ジョークや攻撃的な発言を機転の利いた表現で表そうとして「銃撃(shot)」という言葉を使ったのだ。AP通信は「その後、実際に銃撃が発生したことで、時系列的に不適切な発言となってしまった」と指摘した。 ◆しばらく和合を話したトランプ大統領、直ちにメディア攻撃 今回の事件は、トランプ大統領とメディアの関係においても奇妙な場面を残した。夕食会はトランプ大統領が2期目に入って初めて出席した席だった。事件直後にホワイトハウスに戻ったトランプ大統領は「大変な愛と和合を見た」とし「完全に一つになった部屋は、ある意味、非常に美しい光景だった」と述べた。「この行事は表現の自由を称える場であり、両党の要人と記者を一堂に集めようとするものだった」としながらだ。主流メディアの記者らと激しい舌戦をしてきたトランプ大統領の姿を考えると異例のことだった。CBSのスーザン・ジリンスキー氏は「トランプ大統領の発言から新たな敬意を感じた」と語った。 しかしトランプ大統領の好戦的なメディア観はすぐにまた表れたとAP通信は指摘した。CBSのノーラ・オドネルル氏が自身の放送「60ミニッツ」で容疑者が書いたメッセージを引用したことに対し、トランプ大統領は「放送でそれを読んではいけない。あなた(オドネル氏)は恥ずべき人」と話した。