1984(昭和59)年から翌年に発生したグリコ・森永事件以降、食品会社を脅迫する模倣犯が相次いで現れた。とはいえ、大企業相手に成功する例はほとんどなく、後追いの犯罪者たちはターゲットを変える必要があったようだ。 一方で当時の日本は、高齢の入院患者を集めて大量の検査や投薬を行い、莫大な収益をあげる“老人病院”が社会問題となっていた。国会問題にもなったこの件に、70年代から盛んに報じられた医学部の裏口入学などもあってか、医師のイメージがお世辞にも良いとは言えなかった時代である。 そこに前述の“企業脅迫”のムーブメントが合わさったのか、1987年に福岡で200人、東京で十数人の開業医に脅迫状が届いた。その文面は粗雑で、脅迫する内容を匂わせる程度のシロモノだったが、東京では数人の開業医が実際に金銭を支払っている。何か後ろめたいことがあるのでは――という犯人の読みが当たっていたこの事件とその背景を、「週刊新潮」のバックナンバーで振り返る。 (以下「週刊新潮」1987年4月2日号「開業医たちの『黒い医療』を狙った『脅迫犯人』の着想」を再編集しました。文中の肩書き等は掲載当時のものです) ***