若者むしばむオーバードーズ 売人捜査で「グリ下の薬屋さん」逮捕も

若者による市販薬の過量摂取(オーバードーズ=OD)の低年齢化が深刻になっている。 5月に医薬品医療機器法が改正施行され、18歳未満への販売上限が厳しくなった。 ODが広がる背景には若者の孤立や不安があるとみて、大阪府警少年課は6日、ドラッグストアなどで、実演を交えた啓発イベントを行った。 「せき止めの薬で、量が多いものを買いたいのですが」 大阪市中央区の「ドラッグアカカベえびす千日前店」。少女役の2人組が訪れると、店員は身分証の提示を求めた。 うち1人が「持っていません」と答えると、「乱用につながるおそれがあるため当店では売れません」と告げた。 顔を見合わせて戸惑う2人に店員は「何か困りごとでもありますか、お話をうかがいますよ。相談窓口もあるので相談してはどうですか」などと声をかけていた。 実演したアカカベ店員の上野好美さん(28)は「ミナミでは未成年の子どもが薬を買い求めることも多いので、年齢や使用目的をきちんと確認して乱用防止につなげたい」と話した。 ■18歳未満への販売を規制する法改正 医薬品医療機器法の改正法施行で、一般的なかぜ薬などにも含まれる8種類の成分を含む薬を、18歳未満の子どもは最大で5~7日分にあたる「小容量」の1箱しか買えなくなった。 店側も購入者の手の届かないところに商品を陳列し、購入者の年齢や氏名、使用目的、購入履歴を確認することが必要になった。 背景には、ODが10代前半を含む低年齢層に広がっている実態がある。 厚生労働省の研究班が2024年度に行った調査では、全国の中学生約3万8千人に過去1年間のODの経験を尋ねたところ、724人(1.8%)が「ある」と答えたという。 府警によると、府内ではOD関連で25年に13~17歳の計6人が街頭補導されたり、検挙・補導後に府警から立ち直りに向けた「継続補導」を受けたりした。「精神的につらい時に市販薬を大量に飲んでしまう」と話した少女もいたという。 厚労省によると、ODは神経などに一時的に強い刺激を与え、依存性を引き起こす。内臓への負担も大きく、心臓や呼吸が止まって死に至る事例もあるという。 ■逮捕した男の自宅から5千錠押収 SNSの投稿や知人からの誘いで、ODに至る例が相次いでおり、こうした若者を狙った薬の「売人」の捜査も進む。 府警は5月、ミナミの「グリ下」(グリコ看板下)で知り合った15歳と17歳の少女に、睡眠導入効果がある市販薬など計60錠をホテルで譲り渡したとして、大阪府東大阪市の無職の男(40)を医薬品医療機器法違反の疑いで逮捕した。 男は容疑を認め「生活保護で診療を受けて処方された薬です」などと供述。男の自宅から処方薬などの薬が少なくとも十数種類見つかり、計約5千錠を押収したという。 男は「グリ下」で若者たちから「薬屋さん」と呼ばれていたという。府警は2人以外の未成年にも薬を譲り渡したり、売ったりしていたとみている。 捜査幹部は「ほかにもグリ下で少年に薬を売る人間がいる」とみる。 府警少年育成室の城島剛喜室長は「子どもたちはいろいろな悩みがあると思うが、安易に薬に頼らず、周囲の人に勇気を出して相談してほしい」と話した。(西崎啓太朗、黒田陸離)

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