当事の特捜副部長「熱心な取り調べ」明らかになった検察の認識、指定弁護士「組織の問題」

大阪地裁で10日に始まった特別公務員暴行陵虐事件の公判で、普段は刑事責任を追及する現役検事が「被告」として法廷に立った。「検察官の職務として取り調べを行い、陵虐の意図はなかった」。スーツ姿で証言台に座り、こう淡々と述べた田渕大輔被告(54)。指定弁護士側の証拠調べでは、罪に問われた取り調べが検察内部でどう受け止められていたかが明らかにされた。 被告が取り調べを行ったのは、不動産会社「プレサンスコーポレーション」(当時)が絡む学校法人の21億円の業務上横領事件。令和元年12月に特捜部が同社元部長ら5人を逮捕した後、主任検事は取り調べを担当する複数の検事に1本のメールを送った。 《本当に悪い奴の処分をどうするか》。特捜部の最大のターゲットは、事件の首謀者とみていた同社社長(当時)の山岸忍氏(63)=無罪確定=だった。メールの2日後、山岸氏の事件への関与を否定する元部長に対し、「検察なめんな」などと声を荒らげた取り調べが行われた。 特捜部の事件では、逮捕後の取り調べの全過程が録音・録画される。この映像は上司のほか、検察改革の一環として、地検内部の「総括審査検察官」2人がチェックする体制になっていた。 だが総括審査検察官は当時、「机をたたくなどの言動は自白の任意性を損なうものではない」との意見を特捜部に提出。指定弁護士側が行った補充捜査でも、当時の特捜部副部長が「度を越えた厳しさはなく、熱心な取り調べをしていると感じた」と述べたという。 指定弁護士の高山巌弁護士は初公判後に会見を開き、「こうした点に検察組織の問題がある。容疑者に対して、どこまでの行為が許されるかを問う裁判だ」と話した。 田渕被告に対する付審判を申し立てた山岸氏は初公判の傍聴後に大阪市内で記者会見し、「検察内部で誰も取り調べを問題視していなかったことが明らかになり、驚いた。今後も繰り返されるのではないか」と懸念を示した。 山岸氏は特捜部に逮捕・起訴されたものの無罪が確定。検察の違法性を問う国家賠償請求訴訟を起こしたが、1審大阪地裁で敗訴し、大阪高裁に控訴している。

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