8月20日、大阪・関西万博の現場責任者だった竹中工務店の元総括作業所長・河井辰巳容疑者が、約1400万円の水増し請求による背任容疑で送検された事件は、建設業界に大きな波紋を広げている。 「河井容疑者は、昨年、万博会場内の仮設事務所の内装工事費を下請け業者に複数回にわたり水増し請求させた容疑が持たれています。 河井容疑者に協力した下請け業者は、大屋根リングのトイレ工事も請け負っており、警察は慎重に捜査を進めています。また、河井容疑者の自宅は同じ下請け業者によってリフォーム工事がおこなわれており、その際の請求先は “大屋根リング” だったと報じられています」(事件担当記者) ゼネコンという立場を利用し、下請け業者を通じて不当に利益を得るーー。まさに古典的とも言えるような手法だが、今回の事件に “大きな謎” があると指摘するのは、大手ゼネコン関係者だ。 「いちばんの謎は、“逮捕された” ということなんですよ。こうした事例そのものは、建設業界ではあまり珍しいものではないんです。建設業界において、現場所長の権限は絶大です。大手ゼネコンは案件ごとに独立採算制を採っているケースが多いですから、ひとつの工務店の社長のような立場なんですよ。下請け業者としても、『次の現場で優遇してやる』とアメをぶら下げられれば、危ない橋を渡って不正に協力してしまいます」 大手ゼネコン界隈では、数年に一度は、こうした “不正” が発覚するという。 「とはいえ、業界内の噂だけで済むケースがほとんどです。なぜなら、こんな不正は当然社外に公表したくないんですよ。もし今回の事件でも、竹中工務店が先に事態を把握していたなら、絶対に民事上の手続きや社内処分で済ませていたはずですよ。 これが表沙汰になれば、会社の管理体制やマネジメント能力が問われ、企業そのものに深刻なダメージが及びますからね。それが、今回はたったの1400万円で逮捕されて、顔写真までニュースに流れているわけですから」(前出・大手ゼネコン関係者) 疑われるのは、河井容疑者に協力した下請け業者が “キレた” 可能性だ。 「明確な見積書や伝票などの証拠を把握したからこそ、警察は逮捕という強行手段に踏み切れたわけでしょう。となると、下請け業者が何らかの情報提供をおこなった可能性が高い。散々不正に協力させて、“アメ” をぶら下げていたにもかかわらず、河井容疑者が事前に約束していた現場の発注を取りやめたとか、そういう裏切りがあったのかもしれませんね。なにか強い恨みがないと告発にまでいたることはありませんから。実際、下請け業者も “共犯” として名前が表になる可能性もあるわけですから」 報道されている「約1400万円」という被害額についても、実際の暗部ははるかに大きいと言い切る。 「万博という巨大現場で、何百人もの社員が動くなかでの事件です。河井容疑者は61歳で、長年同じ手法を繰り返してきた可能性も高いでしょう。1400万円程度で警察がわざわざ動くとは考えにくく、実際に還流された資金は数億円規模にのぼる可能性も考えられます」 今後、捜査が進むにつれて、さらに大きな暗部が噴出するかもしれないーー。