いよいよ4月18日に公開が迫った劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』。2024年の『名探偵コナン100万ドルの五稜星』同様、ラストに衝撃的な事実が我々を待ち構えているかもしれない。しかし、それがどう“サプライズ”なのかわかっていたほうがさらに作品を楽しめるというもの。 特に本作には長野県警のメンバーなど、毎年の劇場版だけを追う観客としては馴染みのないキャラクターがメインとして登場する。そこで“ミリ知ら”でも本作が楽しめるよう、改めて思い出しておきたい重要な要素や登場人物の関係性をおさらいしていこう。 ・主役は毛利小五郎と長野県警 今回の舞台は長野。長野県警捜査一課の大和敢助が八ヶ岳連峰未宝岳でとある男を追跡中、ライフルが放たれる。その弾が左眼をかすめ、それと同時に発生した雪崩に大和は巻き込まれてしまう。それから10カ月後、国立天文台野辺山で襲撃事件が発生。雪崩事故から生還した大和は部下の上原由衣と現場に駆けつけていた。一方東京では、“ワニ”と呼ばれる毛利小五郎の警視庁時代の同僚が未宝岳の雪崩事故を調査しており、その事件ファイルに小五郎の名を見つける。これについて話すべく後日会うことを約束した“ワニ”と小五郎だったが、待ち合わせ場所に響いたのは銃声だった。 大和が左眼と脚を汚した経緯はすでに原作漫画・アニメで触れられていた(「風林火山 迷宮の鎧武者」)が、今回は彼がキーパーソンとなり、その事故に焦点を置きつつ現在との繋がりに触れていく。また、そこに小五郎が大きく関わっていることから彼が劇場版『名探偵コナン 水平線上の陰謀』以来、20年ぶりの主役となる作品でもあるのだ。 ・敏腕刑事だった毛利小五郎 いつもは“眠りの小五郎”な彼も、眠らない宣言をしている本作。普段は“迷探偵”な彼だが、実はその昔、警視庁捜査一課で優秀な刑事だったことを忘れてはいけない。娘の蘭の強さばかりがいつも目立ってしまうが、小五郎も柔道及び射撃の腕はピカイチだ。大学時代は強豪である米花大学柔道部に所属し、大会では成績を出していないものの全国優勝した友人に練習で一度も負けなかった腕前である。 そして射撃の腕は警視庁1、2を争うものだったとも、劇場版『名探偵コナン 14番目の標的』で明かされている。妻である妃英理が犯人の人質になった際、彼女を守るためにあえて脚に発砲することで、逃走犯にとって足手纏いにし解放させようとしたのだ。加えて『警察学校編 Wild Police Story』では小五郎のことが「最初の試射で満点、つまり20発全弾を的の真ん中に的中させた天才」と言及され、警察学校時代から射撃が上手かったことが判明している。 警視庁時代の上司である目暮に言わせれば「いくつもの事件を迷宮入りにしてきた」こともあり、やはり推理力はイマイチ。しかし、劇場版『名探偵コナン 水平線上の陰謀』ではコナンがミスリードにつられる中、最初から真犯人を言い当て、単独で対峙するなど時おり“覚醒状態”になることも。コナン(工藤新一)に比べ、その長い人生経験の差で真相を掴むことも多い。普段はギャンブル・酒・女にだらしない印象も強いが、不器用ながらに貫く妻への愛や、邪険にしつつも大人としてコナンを世話するなど、カッコいい部分も多いのだ。 ・小五郎と長野県警組の出会いで明かされていた大和敢助の事故 そんな小五郎の警視庁時代の話と、『隻眼の残像』で深く関わってくるのが通称・長野県警組。特に隻眼の刑事・大和敢助は小五郎と並ぶ主役の立ち位置にいると考えて間違いないだろう。大和と彼らの初めての出会いは、「風林火山 迷宮の鎧武者」編。“風林火山”を模した連続殺人事件が発生し、小五郎と服部平次がそれぞれの被害者である長野の名家・龍尾家と虎田家の依頼で聞き込み調査をする。 このシリーズが長野県警組の原点と言われ、『隻眼の残像』を観るうえで最も知っておくべき重要エピソードである所以は、大和が怪我を負った雪崩事故についての言及があるからだ。つまり、劇場版はこの事故の真相を描くものとなっている。「風林火山」で語られた事故の経緯は、「仮出所中に逃亡した男を目撃した通報があり、彼を追跡中に八ヶ岳連峰未宝岳で何者かが発砲したライフルが大和の左眼をかすめた。そしてその際に雪崩に巻き込まれて半年間行方不明になっていた」というものだった。 この事故が、大和の幼なじみであり、部下であり、彼に想いを寄せる上原由衣、そして同じく幼なじみでライバルとも言える諸伏高明(この3人で通称「長野県警組」)にも関わってくるのだが、まずは「風林火山」で上原由衣が「虎田由衣」として登場したことにも注目してほしい。 ・上原由衣の秘めた強い想い 「風林火山」は、龍尾家と虎田家という先祖代々対立関係にあった両家の人間が次々に不審死を遂げていく連続殺人事件に迫る物語である。この時、由衣は最初に亡くなった虎田家の跡取り息子・義郎の妻として物語に関わってくるのだ。しかし、由衣は大和に対して幼なじみ以上の感情を抱いている。『隻眼の残像』では彼らの“大人なラブコメ”にも注目してほしい、と上原由衣の声優を務める小清水亜美が4月13日開催のファンミーティングで明かしていたが、ではなぜ大和のことが好きなのに由衣は別の男(義郎)と結婚していたのか。 それは大和が雪崩に巻き込まれ、行方不明になった際に彼が死んだと思っていたからだった。2人は子供の頃から慕っていた警察官(甲斐巡査)が数年前に不審な事故死を遂げたことについて調べていた。しかしそんな折に大和がいなくなり、残された由衣は彼の代わりに真相に近づけるよう、甲斐巡査の死に関係があると感じた虎田家の人間に近づくため、義郎と結婚し刑事を辞めたのだ。つまり、大好きな人との約束を果たすために違う男と捜査の延長線上で結婚までしているということで、そこに由衣が大和に抱く感情の強さが窺える。頭脳明晰で観察力及び洞察力にも優れ、乗馬の腕もある彼女だが、実はかなり大胆で思い切りがあるのだ。 そして大和が生きていることがわかった後も、虎田義郎の妻として生きなければいけない状況にいたことがなんとも……言い難い。結果的に夫は連続殺人事件で亡くなり、由衣は未亡人となって本件の解決とともに大和から復職を勧められ、今は旧名の上原由衣として刑事に復帰している。