社会を震撼させたオウム真理教による地下鉄サリン事件。事件解明の突破口になったのは石川県で逮捕された一人の男の供述でした。男に声をかけ逮捕につなげた捜査員の証言です。 麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚率いる「オウム真理教」 住民を驚かせた能登での幹部逮捕。 林郁夫を見かけた人 「草履はいて上下白着てここ散歩していたし、別荘の人やなと思っていた」 逮捕に関わった捜査員が、当時を語ります。 職務質問した捜査員 「明らかに逃げたわね。パトカーの前をびゅっと、こう横切るように」 ■教団は石川県で“会社乗っ取り” 武器の密造へ 30年前=1995年の3月20日。一般市民を狙った未曽有の無差別大量殺人、地下鉄サリン事件。東京の地下鉄内で当時のオウム真理教の信者が猛毒「サリン」をまき14人が死亡、6300人以上が重軽傷を負いました。 松本元死刑囚事件の3年前、能美市の鉄工会社の会見に姿を現した松本元死刑囚。 松本元死刑囚 「出来るだけ誠意を持った回答をしたいなと考えております」 教団は会社を乗っ取り、武器の密造のため機械類を持ち出していたのです。会社に残っていたのは注射器や薬品、そして、教祖のポスター。 後に、この鉄工会社は倒産、教団の崩壊とともに社屋は取り壊されました。 ■「教団の崩壊」へ… オウム真理教幹部の逮捕 「教団の崩壊」。これに大きく関わったのが石川県内で逮捕された1人の男です。地下鉄サリン事件翌月の4月8日、教団内で「治療省大臣」の肩書を持つオウム真理教の幹部・林郁夫受刑者が旧・中島町で逮捕されました。 地下鉄サリン事件の捜査が難航する中、林受刑者は自らが実行犯の一人であることに加え、オウム真理教の実態を告白。 その全面的な自供が事件の解明と教団の崩壊に繋がりました。 職務質問した捜査員 「10分や20分ほど、街灯がほとんど無くて、月灯りを頼りにしながら名前・住所、何しに来たかとか聞いたな」 石川県警の57歳の男性警察官。30年前=当時27歳の頃、林受刑者に行った職務質問が、逮捕に繋がりました。 記者 「捜査員が国道を北上していたところ、パトカーに気づき突然空き地へと逃げ込む自転車に乗った2人組の男が現れました」 逮捕前日、1995年4月7日、夜。検問をしていた小隊長の指示によりこの男性警察官ら4人は、国道249号を北上しながら目撃情報のあった不審者を探していました。 職務質問した捜査員 「パトカー見たらすぐに逃げたわね、2人連れで」 穴水町に近い旧中島町の海沿いの道路、近くには、のと鉄道の線路があったといいます。パトカーを見るなり空き地へと逃げ込んだ自転車に乗った2人組。逃げた1人を他の3人が追い、残る1人に対しこの男性警察官が声をかけました。 それが、林受刑者でした。