「勝者総取り政治」「不幸な大統領」を生む憲法構造の限界 [韓国記者コラム]

【05月13日 KOREA WAVE】韓国で1987年の憲法改正で誕生した現行体制、いわゆる「87年体制」は、韓国における民主主義の基盤を築いた。しかし一方で、大統領権限の過度な集中や勝者総取りの政治構造といった副作用も顕在化し、制度的限界が明らかになっている。今後の憲法改正議論では、87年体制の問題を克服し、この約40年間の時代変化を反映させる必要があるという指摘が出ている。 特に注目されるのが、大統領制そのものに関する改憲論だ。1987年の改憲以降、直選制で選ばれた8人の大統領のうち、4人が逮捕され、残りも本人や親族が権力型不正に巻き込まれるなど、「悲劇的結末」が繰り返されてきた。これらはすべて、行政府や公共部門に強大な影響力を持つ「帝王的大統領制」の構造的弊害とされる。 特に2024年12月3日に発生した「非常戒厳」宣布の後、権限集中の弊害を是正し、大統領権限を分散すべきだという世論が高まっている。パク・クネ(朴槿恵)氏に続き、ユン・ソンニョル(尹錫悦)氏も弾劾されるなど、制度改革の必要性はもはや無視できない段階に達している。 代案としては、首相が内政を担当し、大統領と相互牽制する「責任首相制」の導入が議論されている。大統領の任期を現在の5年単任制(再選なしの1期5年制)から「4年重任制」に変更し、中間評価を導入する案も浮上している。 また、現在の国会にも改革の必要性がある。憲法上、国会には行政・司法を牽制する機能があるが、国会自体を牽制する装置は存在せず、「一方通行」の権力行使が問題視されている。実際、ユン政権下では約30件の高官に対する弾劾案が可決され、公務に支障をきたす事態が続いた。 現行の「小選挙区制」による国会構成も、巨大政党の二極体制を固定化し、政治の分断と対立を煽る要因となっている。そこで、一つの選挙区から複数人を選出する「中・大選挙区制」や、比例代表制の廃止、上下両院制の導入など、多党制への転換を目指す声も高まっている。 そのほかにも、地方分権の強化、市民参加型の改憲プロセスの制度化、柔軟な改憲要件の導入などが課題として挙げられる。1987年憲法で取り上げられなかった5・18光州民主化運動や6月抗争といった歴史的精神を明記し、少子高齢化、AI時代への対応、デジタル権利の明文化なども今回の改憲で盛り込むべきだという声がある。 これについて、高麗大学法学専門大学院のチャン・ヨンス教授は「大統領制改革を一度に成し遂げるのは困難なため、まずは過度な権限集中を是正し、勝者総取りの構造による政治的極端化を解消することから始めるべきだ。大統領中心のアプローチでは限界がある。国民的合意と与野党の合意が得られる現実的な部分から、段階的に憲法改正を進めるのが望ましい」と提言した。【MONEYTODAY キム・フンナム記者】 (c)KOREA WAVE/AFPBB News

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