ミャンマーを舞台にした国際的な詐欺事件で、現地から特殊詐欺の電話をかける「かけ子」をしたなどとして詐欺容疑で逮捕された、ともに住居不定、無職の石川翔紀(32)、谷地智成(22)の両容疑者=詐欺罪で起訴=について、愛知県警は19日、詐欺容疑で再逮捕し、発表した。2人の認否を明らかにしていない。 県警の取り調べで、2人がいたミャンマーの犯行拠点の様子が明らかになってきた。拠点は有刺鉄線に囲まれた場所にあり、かけ子たちには「ノルマ」が設定され、達成できなければ電気ショックなどによる暴行を受けていた。敷地にはコンビニや病院などもあったという。 県警によると、2人の再逮捕容疑は、他の者と共謀し、1月14日から15日の間、神奈川県大和市の男性(65)の携帯電話に、警察官などになりすまして電話をかけ、「あなたには資金洗浄のために口座を売った容疑がある。身の潔白を証明するには、口座にお金を振り込む必要がある」などとうそを言って、現金160万円を指定口座に振り込ませてだまし取ったというもの。 2人はSNS上で「高額報酬」をうたった「闇バイト」の募集投稿を見て、昨年12月ごろに、現地に渡航し、詐欺グループの一員として、ミャンマーにある詐欺拠点で犯行に加担させられていたという。 この詐欺拠点は有刺鉄線がある塀に囲まれ、周囲を銃を持った軍人風の格好をした見張り役が見回りをしていた。時折、銃声なども聞こえ、敷地の外に出ることは難しかったという。敷地内には、詐欺電話をかける作業場のほか、宿舎やレストラン、スーパー、コンビニ、病院があり、日本人も複数人いたという。 「かけ子」は詐欺被害額の2~4%を報酬として受け取っていた。被害が高額の場合は、1千万円ごとに追加報酬を支払われる約束となっていた。報酬は週に1回支払われ、だますことができなければゼロのことも。ノルマを達成できないとスタンガンなどによる暴行を受けていた。報酬の大半は食費や生活費に使われ、ほとんど手元に残らなかったとみられる。2人の逮捕時の所持金は1万円に満たない額だったという。 2人は、2月に保護されて帰国した愛知県の少年(16)がいたのと同じミャンマー東部の詐欺拠点から、かけ子をしていたとみられ、3月にタイ当局に拘束された。県警は4月、2人を日本に移送し、別の男性から現金990万円を詐取した疑いで逮捕していた。(高橋俊成、野口駿)