5月14日の午後4時過ぎ。埼玉県三郷市の長閑(のどか)な住宅街で下校中の小学生の列に1台の車が突っ込んだ。 車を運転していたスキンヘッドの男は、剃り上げた頭に手を回しながら車を降り、呆然とする子供に煩わしそうな表情で声をかけた。 「ここは邪魔だから別の場所へ移動する」 片言でそう言い残すと、何事もなかったように運転席に戻り、悠然と事故現場を後にした。 社会部記者が当時の状況を解説する。 「事故に遭ったのは、近隣の小学校に通う小学6年生の児童たちでした。4人が負傷し、うち1人は右足甲を剥離骨折する重傷を負っています。現場には、足から血を流す子供の姿もあった。車から現れた2人の男は通報や救護活動をせずに走り去りました」 逃走の瞬間は防犯カメラなどによってまざまざと捉えられていた。捜査の末、事故翌日には現場から約2キロ離れた民家の駐車場で車両が発見、押収された。 「見つかったのは英国ジャガー・ランドローバー製の高級SUV車『ディフェンダー』でした。オフロード性能が高いモデルで人気もあり、中古車でも1000万円以上の値段がつくことは珍しくない」(同前) SUV車が停められていた民家は、築33年の木造3階建て。高級車は、事件の前からたびたびこの民家で目撃されていた。近隣住民が語る。 「あそこは東京の建設業者の寮なんです。4年くらい前に一度、アジア系の社長らしき男性が菓子折りをもって挨拶にみえた。5人くらいの外国人の方が住んでいて、自転車で出入りするのを時々見ます。SUVは3月くらいから停まっているのを見かけるようになりました」 建設業者の取引先が取材に応じた。 「事故後、社長から『車に同乗していたのはうちの実習生なんだ』と打ち明けられました。しかし彼は『あんな車が寮に停めてあったなんて全く知らなかった』とも言っていた。発覚後は同乗していた実習生を懇々と叱ったと聞きました」