外国で取得した運転免許を日本の運転免許に切り替える「外国免許切替(外免切替)」制度。この制度を使って日本の運転免許を取得した外国人による悪質な交通事故が先月、県内で発生した。制度の問題点に対する指摘もあり、警察庁は制度の厳格化に向け検討を進めている。背景にはホテルを住所に免許の取得ができることや、交通ルールの理解が不十分でも合格できる可能性がある「知識確認」の仕組みがある。 先月18日午前11時ごろ、亀山市の新名神高速道路下り鈴鹿トンネル付近で、逆走する乗用車が追い越し車線の車2台と衝突。逆走車は逃走した。走行車線では車4台が絡む玉突き事故も発生し、四人がけがをした。 県警は逆走して事故を引き起こしたとして、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の疑いなどでペルー国籍の男(34)を逮捕した。男は約10年前に外免切替制度を利用して日本の運転免許を取得していた。 警察庁などによると、外免切替制度は外国の運転免許を保有している人が運転免許試験の一部を免除される制度で、運転技術を確かめる「技能確認」と日本の交通ルールを問う「知識確認」などに合格する必要がある。 昨年、県内では前年比384人増の1610人が同制度で日本の運転免許を取得した。取得者数は増加傾向で、平成26年(589人)と比べても約2・7倍となり、9割以上が外国人だった。 外免切替では住民票の写しや在留カード、パスポートなどから住所を確認する。しかし、観光客などの短期滞在者がホテルをはじめとする一時的な滞在場所を住所とし、運転免許を取得することが可能になっている。 技能試験では、運転免許センターの技能試験官が同乗し、交差点の通行方法やS字走行などの運転技術を確かめる。警察庁によると、技能確認の通過率は約29%(令和5年)にとどまる。 一方で、知識確認の通過率は約91%(同)。○×形式の設問が10問出題され、7問以上正解すれば合格となる。そのため、仮に交通ルールを全く理解せず、10問全てを無作為に答えた場合でも、約17・2%の確率で合格する可能性がある。 通常の学科試験は100点(95問)中90点が合格基準で、無作為に解答して合格するのは事実上不可能とされる。これと比べると、外免切替の知識確認は問題数が著しく少ない。 警察庁は住所確認を原則、住民票の写しですることなどを視野に、外免切替制度の厳格化に向けた検討をしている。知識確認についても、同庁運転免許課は「申請者が日本の交通ルールを十分に理解しているかを適切に審査できる内容とする」として、見直しを進めている。