医療用麻薬のフェンタニルを乱用したとして、警察当局が平成28年以降の10年間で少なくとも6件を麻薬取締法違反容疑などで立件し、医師ら5人を逮捕していたことが産経新聞のまとめで分かった。自らに注射して死亡した医師や、貼り薬で死なせた容疑もあった。 フェンタニルは合成麻薬性鎮痛薬で、主に手術中や術後に点滴静脈注射で使用される。容量を間違うと、多幸感を引き起こし、その後、無気力になったり、場合によっては死に至るため、厳重な管理が求められている。 28年には横浜市の病院の男性医師が、フェンタニルと同系統のレミフェンタニルを抜き取って所持していたとして神奈川県警が麻薬取締法違反容疑で逮捕した。「ストレスを解消するため使用したことがある」と容疑を認めた。 29年には埼玉県行田市の病院の男性医師がフェンタニルを所持していたとして県警が麻薬取締法違反容疑で逮捕。やはり「ストレス解消のため」と供述した。同じ年には愛知県春日井市の病院の女性看護師が自分に注射するためにフェンタニルを盗んだとして、県警が窃盗容疑で逮捕した。 平成31年には仙台市の病院で女性医師が死亡しているのが見つかった。遺体の近くには使用済みのフェンタニルの容器と注射器があり、遺体からフェンタニルなどが検出されたため、翌年、宮城県警が容疑者死亡のまま麻薬取締法違反容疑で書類送検した。 令和4年、東京都内の女性が交際していた男性にフェンタニルの貼り薬を数枚貼り付けて死亡させたとして、警視庁が翌年に傷害致死と麻薬取締法違反の疑いで逮捕した。 今年1月には、仙台市の病院で手術の休憩中に倒れた男性医師がフェンタニルを自分に注射していたとして、宮城県警が麻薬取締法違反容疑で逮捕している。 米国では密造されたフェンタニルによる中毒者が増えて社会問題になっている。密輸拠点が日本にあったとの報道があるが、日本でフェンタニルの密輸が摘発された事例はない。