運送会社「軽急便」元所長ら逮捕、荷物とともに荷主従業員を無許可運送疑い 全国初摘発

依頼された荷物を貨物自動車で配達する際、依頼元の従業員を車に同乗させて無許可で人を運んだとして、警視庁交通捜査課は道路運送法違反の疑いで、運送会社「軽急便」(名古屋市中区)東京営業所元所長、橋川達哉容疑者(32)=埼玉県越谷市=ら2人を逮捕し、法人としての同社を8日、書類送検した。橋川容疑者は「得意先の要望に応え、専属的な契約を結ぶためだった」と容疑を認めている。 貨物運送業者が荷主を助手席などに同乗させて荷物とともに運ぶ「同乗案件」の摘発は全国初という。 軽急便は、軽ワゴン車などで荷物の配達を行う運送会社。同課によると、同社東京営業所では電気機器メーカー2社から依頼を受けてテレビモニターや作業用工具を配達する際、配達先で作業を行うメーカー従業員を助手席に乗せて荷物とともに運送していた。 自動車で人を有償で運ぶ場合は、国に「一般旅客自動車運送事業」の許可を得る必要があるが、軽急便は同事業の許可を得ていなかった。同社は平成31年以降、メーカー2社から違法営業によって計約1億円を得ていたとみられる。 橋川容疑者の逮捕容疑は共謀の上、昨年3月、国の許可を得ずに、依頼主の需要に応じて有償で人を運ぶ事業を計10回行ったとしている。交通捜査課は、軽急便東京支店長とドライバー、電気機器メーカーの契約担当者ら計10人も道路運送法違反や同幇助(ほうじょ)の疑いで書類送検した。 ■無許可営業「リスク多い」 軽急便などが届け出や許可取得を行っている「貨物自動車運送事業」は、タクシーなどが有償で人を運ぶために許可が必要な「一般旅客自動車運送事業」とは異なる。そのため、軽急便のような貨物運送業者や引っ越し業者などが、依頼主を行き先まで同乗させることは無許可の営業として違法になる。 本来、依頼主は貨物自動車に同乗せず、自家用車やタクシーなどで移動することが必要。交通捜査課によると、軽急便は郊外の支店では「同乗案件」を行っていなかったが、東京近郊においては需要に応じて依頼主の従業員を同乗させていた。東京近郊では駐車場代などが高額になるため、依頼主側も「同乗案件」によって経費を削減できるメリットがあったとみられる。 捜査幹部は「金銭を受け取って人を運送するためには免許や許可が必要」と指摘。「乗る側も幇助罪に問われる可能性があるだけでなく、事故が起きた際の補償問題など、多くのリスクがあることを理解する必要がある」と話している。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする