「大阪だけ合格率突出」 実習生の替え玉受験、日本語試験で横行か

ベトナム人技能実習生による「替え玉」受験が問題化し、大阪府警がこれまでに依頼者や実行者ら少なくとも5人を入管難民法違反などの疑いで逮捕した。 技能実習生がより好条件で働いたり日本に長く滞在したりするには、在留資格の変更が必要だ。その際に日本語試験での合格が条件になる場合がある。 日本語の不自由な実習生が、日本に長く滞在しているベトナム人らに代理受験を依頼しているとみられる。仲介役の存在も確認され、府警は在日ベトナム人社会で不正な手口が横行しているとみている。 「大阪の会場だけ突出して合格率が高い。替え玉が疑われる」 発端は日本語試験の主催者「国際交流基金」が抱いた違和感だった。通常の合格率は4割程度だが、一時期の大阪会場は受験者ほぼ全員が合格していた。 基金から相談を受けた府警は2024年12月、別人になりすまして受験したとして、ベトナム人女性(31)を逮捕した。この女性は「これまで10回ほどやった」と供述し、替え玉受験が広まっている疑いが強まった。 事件の中心的な役割を担ったのは、依頼者となりすましの実行役をつなぐ仲介役だ。 試験を受けるには、受験者本人の在留カードなどが必要だ。仲介役は交流サイト(SNS)などで依頼者と連絡を取り、在留カードなど必要な資料を入手。実行役に渡して代わりに受験するよう指示していたという。 今回の事件に関与したとされるグループでは、依頼者が16万円を支払い、そのうち10万円は仲介役、6万円は実行役が受け取るルールだった。仲介役は複数人いるとみられ、府警は6月にベトナム人男性1人を逮捕した。 多くの技能実習生が日本語試験にこだわるのは、在留資格の違いで就労条件が大きく左右されるためだ。 技能実習生は入国時に日本語試験がない一方で転職が禁止され、平均月給も約18万円となっている。 19年から導入された特定技能の在留資格は転職が可能で、平均月給も約21万円と技能実習に比べて高い。 24年時点で技能実習の外国人は約45万人、特定技能は約28万人。国籍別では全体のそれぞれ4割超をベトナム人が占める。SNS上ではベトナム語で替え玉受験を求める投稿も多くみられる。 なりすましを繰り返していた女性は法廷で、事件に加担した理由をこう語った。 「日本で働きたい人の助けになりたかった」【川地隆史】

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