再審無罪の前川彰司さん、裁判長の話「うれしくて眠れず」 父に報告

福井市で1986年に女子中学生を殺害したとして服役し、裁判をやり直す再審で無罪とする判決を受けた前川彰司さん(60)が19日、報道各社の取材に応じた。「大変うれしい判決をいただき、ほとんど眠れなかった。ただ、いい朝を迎えた」と語った。 名古屋高裁金沢支部は18日、1995年の懲役7年の有罪判決を支えた知人らの供述について、捜査機関が見立てたストーリーに合うように誘導した疑いがあると指摘。「信用できない」と断じ、有罪判決を導いた警察の捜査や検察の訴訟活動について、「不正、不当」と批判した。 法廷では判決言い渡しの後、増田啓祐裁判長が事件発生以降の前川さんの苦労や奪われた時間に言及し、「これからの前川さんの人生に幸多からんことをお祈りしています」と述べた。 夜になり、福井市内の自宅に戻った前川さんはベッドに入っても、この言葉が脳裏に焼きついていたという。うれしくて、感極まって涙がこみ上げる中、朝を迎えた。 いつもの教会のミサに参加し、先祖の墓参りに。大阪市東住吉区で95年に起きた女児死亡火災で無期懲役が確定後に再審無罪となった青木恵子さん(61)と向かった。 墓には、逮捕直後の87年4月に勾留理由開示を請求してくれた祖父の募さんや、最初の再審請求前月の2004年6月に亡くなった母の真智子さんが眠る。「無罪を勝ち取りました」と話しかけて、手を合わせた。 昼過ぎには高齢者施設で暮らす父の礼三さん(92)を訪ねた。ニュースで「再審無罪」を知っていた父は「よかった、よかった」と笑顔をみせて握手。一方で、「事件に長年苦しめられてきた」と語り、青木さんたちに38年前の逮捕の日の家宅捜索の様子を、涙を浮かべながら説明したという。 再審無罪が出たが、まだ確定はしていない。前川さんや弁護団は、検察側に上告しないよう求めている。前川さんは父に「たぶん、大丈夫だから」と伝えたという。(荻原千明)

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