『ダンダダン』『光が死んだ夏』『ゲ謎』が同時期に “因習村”がシンクロする2025年の夏

現代の常識では受け入れられない風習やしきたりが残り続けていて、そこに足を踏み入れた者に災いをもたらす……。近年ではそんな舞台設定が“因習村”と呼ばれており、さまざまなホラー作品の題材となっている。 2025年の夏もいろいろな作品で因習村を思わせる設定が登場しているので、その作中での扱われ方を紹介していこう。 ■生きた人間を生贄に捧げる村……『ダンダダン』第2期 『ダンダダン』はオカルトオタクの少年・高倉健(オカルン)と念動力を操る女子高生・綾瀬桃(モモ)を主人公としたアニメ。7月より放送中の第2期ではモモの幼なじみ・円城寺仁(ジジ)と、その家族が住まう「大蛇村」をめぐるエピソードが展開されていく。 舞台となる「大蛇村」は、火山の麓にある一見のどかな温泉地。しかしその実態は外界から隔絶された閉鎖的な共同体で、鬼頭家という横暴な地主によって牛耳られている。 第13話ではモモが温泉に入っている最中、ほぼ全裸の恰好をした一族の男衆が集団で湯船に入ってきて、あわや暴行寸前という事態に。その一方で一族を率いる鬼頭ナキは、ジジの家で勝手に井戸端会議を開き、脅迫まがいの言動を行うのだった。 しかもより悪質なのは、鬼頭家が地元警察と癒着していること。男衆が温泉でモモに襲いかかった事件に関しては、もみ消しを図ったと思われる警察官が「あんま無茶されると困るんすよ、後処理大変なんすから……」と軽口を叩いており、ナキがジジたちに猟銃を突きつけている姿を見ても我関せずというスタンスをとっていた。 鬼頭家の横暴が許されている背景には、「大蛇伝説」が関係している。この村では大蛇が災いをもたらす存在とされており、怒りを鎮めるには“供物”を捧げる必要があると信じられていた。そこで鬼頭家は、村人を生きたまま生贄にする儀式を200年にわたって続けていたのだ。 作中では「大蛇伝説」の真相が暴かれるとともに、生贄の風習によって蓄積された怨念が最悪の形で発露するところも描かれている。まさしく因習村と呼ぶにふさわしい展開だろう。 どちらかといえばコミカルなノリが多い同作だが、「大蛇村」のエピソードは単体でホラー作品として成立するほどの作り込みで、思わず息を呑んでしまう。 ■青春と因習が交錯する『光が死んだ夏』 同じく7月から放送が始まった『光が死んだ夏』も、因習村を思わせる舞台設定のアニメだ。 同作は累計350万部を突破している人気マンガが原作。田んぼや山々に囲まれた「クビタチ村」で暮らす少年・よしきが、親友・光と奇妙な日常を繰り広げる青春ホラーとなっている。 光は半年前に山で行方不明になったが、その時期を境によしきは強い違和感を抱くようになる。実は光の中身は、得体の知れない“ナニカ”とすり替わっていたのだ。大切な人を失ったことを認めたくないよしきは、いつも通りの日常を送ろうとするが、集落では次々と異様な事態が起きていく。 舞台となる「クビタチ村」は美しい自然の風景を見せる一方、どこか不穏な空気に満ちている。第1話ではそのことを象徴するように、光を見た老婆が「ノウヌキ様が山から降りてきとるやないか」と泣きながら叫ぶ異様な光景が描かれていた。 また第2話では村人たちの会話から、光の失踪にとある“儀式”が関わっていたことも判明。この土地には何やら不可思議な習俗が伝わっているようだ。 あくまで物語の主軸は光に化けた“ナニカ”とよしきの関係にあるのだが、だからこそ集落の謎が徐々に染み出してくるような描き方に恐怖を感じざるを得ない。因習村×青春という新機軸のホラーと言えるのではないだろうか。

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