金融庁「暗号資産制度WG」が初会合、金商法移行など本格議論へ──ビットコイントレジャリー事業もテーマに

金融庁は7月31日、金融審議会のもとに設置された「暗号資産制度に関するワーキング・グループ(WG)」の第1回会合を開催した。 これは、加藤勝信金融担当大臣から「暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討」が諮問されたことを受けたもので、暗号資産を決済手段だけでなく本格的な「投資対象」として捉え、制度全体を見直す包括的な議論が開始された。 会合では、金融庁事務局より、今年4月に公表済みのディスカッション・ペーパーの内容が改めて説明された。その最大の焦点は、暗号資産に関する規制の枠組みを、現行の資金決済法から金融商品取引法(金商法)の体系に移行させることの是非である。 金融庁は、投資家保護上の課題に対処するため金商法の活用を提案しており、その中で、暗号資産を資金調達の有無といった性質に応じて分類し、それぞれに適した規制を課すという考え方が改めて示された。 これらの論点を巡り、メンバーによる討議が行われた。 京都大学公共政策大学院の岩下直行教授は、「必ず思い出すのは2018年1月のコインチェック事件」と切り出し、過去の流出事案に言及。 「盗まれた暗号資産がどこにあるか明確に確認できたにもかかわらず、我々は何もできなかった。資産はロンダリングされ、ビットコインに変えられ、闇に消えていくのを見守るしかなかった。その後もZaif、DMM Bitcoinと流出事件はやまず、何より犯罪の首謀者は誰一人として逮捕されていない。大きな値上がり益の裏には深い闇がある」と述べた。 その上で、「暗号資産の悪用事例はなくならない。本質的にクリーンにはなり得ない。それでも値上がりする限り、投資家は買うでしょう。そうした不正に投資家は関係ないですから。だからこそ業界や投資家の希望をどう叶えるかではなく、社会全体の安全を守る視点が必要」と主張した。 また、一般企業によるビットコイン(BTC)投資の目的について、西村あさひ法律事務所の有吉尚哉弁護士から質問が上がった。 これに対し、日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)リーガルアドバイザーの河合健氏は、企業が財務戦略としてBTCを大量保有する「ビットコイントレジャリー会社」の動向に言及。 実態としては長期的な値上がり益を期待する「投資会社」のようになっていると解説した。 一方で同氏は、これらの企業の株式価値が、保有するBTC価値の3倍、4倍にまで膨れ上がる事例を挙げ、「株式市場側で過剰な期待が生まれている」と指摘。この動向がバブルである可能性について、今後注視が必要との見解を示した。 また、会合では業界団体からのヒアリングも実施された。JCBAは、グローバルで400兆円を超える市場規模や機関投資家の参入といった市場の最新動向を報告。 日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)は、新規銘柄の審査や会員に対するモニタリングなど、自主規制活動の実態について説明した。 会合は、活発な討議により予定時刻を25分超過して閉会した。 今後もワーキング・グループによる議論が進められ、年内にも報告書が取りまとめられる見通し。来年の通常国会での法改正案提出が視野に入る。 |文:栃山直樹|画像:Shutterstock

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