黎智英氏の最終弁論延期 4年8カ月に及ぶ収監で健康悪化、トランプ氏も早期釈放要求へ

香港国家安全維持法(国安法)違反の罪などで起訴された香港紙、蘋果(ひんか)日報(アップルデイリー)の創業者で著名な民主活動家、黎智英(ジミー・ライ)氏(77)の裁判が15日、香港で再開された。香港の言論弾圧を象徴する事件として国際社会からも注目され、2023年12月に始まった同裁判は結審に向けて最終弁論に入る予定だったが、裁判官が黎氏の健康状態を懸念し18日に延期された。 黎氏の国安法を巡る裁判は約5カ月ぶりとなる。もともと14日に再開されるはずだったが、豪雨の影響で1日延期。この日も前日同様、傍聴券を求める多くの市民で長蛇の列ができた。 報道によると、法廷に現れた黎氏はかなり痩せてみえたという。収監されて約4年8カ月がたっている。 開廷後、最終弁論に入る前に裁判官が黎氏の健康問題を提起した。弁護側がこれまで、糖尿病を患う黎氏の体調が長期にわたる獄中生活で悪化していると訴えてきた経緯がある。 法廷では、黎氏が今月7日に専門家の診断を受けた結果、心臓の状態をモニタリングする装置の使用を勧められたことなどが報告された。黎氏は獄中で動悸のあまり倒れそうになることがあったという。 裁判官はこれを受けて、黎氏に装着する携帯型心電図装置を準備するため、最終弁論を18日まで延期することを決め、閉廷した。 黎氏の健康問題を巡っては三男の黎崇恩氏(30)が今回の裁判を前に、英BBC放送に対し「父の年齢と健康状態を考えると獄中で死んでしまう」と危機感を露わにしていた。 これまで146日にわたって審理が行われた裁判では、検察側が「黎氏は蘋果日報などを通じて外国政府に中国や香港への制裁を求め、国家の安全を脅かした」などと主張したのに対し、黎氏は全面的に否認。52日に及ぶ黎氏の被告人質問が終わった今年3月中旬から休廷していた。 黎氏の逮捕・起訴と長期にわたる収監は、20年6月の国安法施行後の香港で加速する言論弾圧や人権侵害の象徴といえる。香港の旧宗主国で黎氏が国籍を保持する英国や、米国などが黎氏の早期釈放を中国・香港政府に要求している。 黎氏の健康悪化を受け、国際社会による中国側への圧力がさらに強まるのは必至だ。さらに、トランプ米大統領が今月14日、「(黎氏を)救うためにできる限りのことをする」と米メディアで語っており、習近平国家主席に直談判する可能性も取り沙汰され始めた。(藤本欣也)

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