警察官の職務は、地域住民を危険から守り、社会の安全を維持することにある。もちろん、職務の執行に際しては、法律で定められた手順を踏まなければならない。法律の定めた範囲を超えて活動することもできない。ごく、当たり前のことである。 例えば、個人の住宅に立ち入って捜査する場合は、原則、裁判所が発付する「捜索差押許可状」が必要だ。憲法35条が定める「令状主義」と呼ばれるもので、捜査機関による強制処分については、あらかじめ裁判官のチェックを受けさせ、捜査の行き過ぎに歯止めをかけるための仕組みだ。 ところが今年3月、こうした枠組みを警察自らが崩壊させる事件が東京都江東区で起きた。警察官が、裁判所の許可なく住宅のカギを破壊して侵入し、家にいた97歳の女性を連れ去ったのだ。連れ去られた女性は何かの犯罪に関わっていたわけではない。 女性は現在も行方不明のままだ。なぜ、警察権力の暴走は起きたのか。にわかには信じ難い、警察による重大事件の謎を追った。