2014年7月、長崎県佐世保市で高校1年生だった少女が同級生の女子生徒を殺害し、逮捕される事件があった。その約2カ月後、加害少女の父親は自ら命を絶った。娘との写真が交流サイト(SNS)で拡散され、自営業の仕事を続けることも困難になった。被害者遺族への謝罪書面で「生きる自信さえ喪失しかけている」と吐露していた。 失業や自己破産、進学断念に加え、根拠なき中傷―。事件が起きれば、被害者側だけではなく、加害者家族の生活も一変する。過去には自殺する事例も相次いだ。「加害者と一蓮托生」として、家族を追い込む風潮が根強い日本。その背景には何があるのか。動き出した家族支援のあり方とは。現状を取材した。(共同通信=武田爽佳) ▽「人ごろし」の落書き 加害者家族への誹謗中傷はSNSの普及前からあった。1998年に和歌山市で4人が死亡した毒物カレー事件が起きると、林真須美死刑囚=殺人などの罪に問われ、再審申し立て中=が子どもらと同居していた自宅の壁は「人ごろし」「ふざけるな」といった落書きに埋め尽くされた。