司法取引、導入7年で利用判明6例のみ 得た供述の公判での「信用性」認定に課題

群馬県桐生市役所の新庁舎建設を巡る汚職事件で、日本版「司法取引」(協議・合意制度)が成立したことが判明した。捜査協力の見返りに刑事処分を軽減したり、立件を見送ったりするものだが、導入から7年で、利用が判明したのは今回を入れて6例のみだ。司法取引で得た供述が公判で慎重に吟味される傾向にあり、犯罪の首謀者追及など、当初期待された効果を挙げるためには課題も多い。 ■日本は「捜査・公判協力型」 事件を巡っては埼玉、群馬両県警の合同捜査本部が今年6月以降、公契約関係競売入札妨害容疑で群馬県議と建設会社側を、官製談合防止法違反などの容疑で桐生市の前副市長らを逮捕。司法取引を使い、工事を落札した業者とは別の業者が県議らの関与を供述する代わりに、立件が見送られたとみられる。 日本版司法取引は、共犯者ら他人の犯罪の捜査・公判に協力することで自身の処罰を減免してもらう「捜査・公判協力型」だ。強引な取り調べを回避しつつ事件関係者の供述を引き出し、首謀者の追及や犯罪組織の解明に寄与することを期待され、平成30年6月に導入。日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告を巡る役員報酬の過少記載事件でも使われた。 ただ、これまで制度の活用が判明しているのは6事件に限られる。なかなか広がらない背景にあると考えられるのが、司法取引で得た供述が、公判の場で十分に信用されない点だ。 ■「新たな司法取引」導入検討も ゴーン事件を巡っては、同社元代表取締役のグレゴリー・ケリー被告が過少記載に関与したとして1、2審とも有罪判決を受けて上告している。 検察側が重要証拠として挙げたのは、司法取引で得た元秘書室長の供述だった。しかし、東京高裁は「有利な取り扱いを受けたいとの思いから検察官の意向に沿うような供述をしてしまう危険性をはらむ」と指摘。供述の信用性を「慎重に検討すべきだ」として、裏付けるほかの証拠がない大部分を採用しなかった。 結果、検察が起訴した8年分の過少記載のうち、認められたのは1年分だけのみ。検察内部からは「判決は信用性を過剰に低く見積もっている」との不満も出た。

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