介護現場で高齢者の財産が狙われるトラブルが後を絶たない。財産管理の名目で不正を働いたり、身の回りを世話する立場を悪用したりするケースが相次いでいる。 高齢者の財産を勝手に使い込むことは経済的虐待と定義される。 厚生労働省によると、介護施設の職員から経済的虐待を受けた高齢者は2023年度に424人確認され、前年の55人から急増した。一つの施設で多数の被害者がいる事案が発覚したためで、例年は50人前後で推移している。 大阪市鶴見区の介護施設で24年6月、利用者の高齢姉妹の口座から現金計2000万円を無断で引き出したとして、施設の運営会社の元社長が業務上横領の疑いで逮捕された。元社長は姉妹を信じ込ませて財産管理契約を結んでいた。 21年には福岡市博多区の有料老人ホームの施設長が入所者(当時80代)のカードを勝手に使って1000万円以上を盗んだとして窃盗罪に問われた。 日本高齢者虐待防止学会で理事長を務める池田直樹弁護士(大阪弁護士会)は「福祉業界では人手不足だったり、事業方針がビジネスに傾いていたりする場合などに、職員の資質に差が出ることがある。施設側が研修などで職業倫理を周知徹底することが必要だ」と訴える。 利用者に対しては「金銭関係など大事な話こそ家族のほか、弁護士など財産管理の専門職と共有してほしい。財産管理を周囲がフォローすることで被害の防止につながる」と注意を呼びかけた。【斉藤朋恵、大坪菜々美】