中国語の〝愛の言葉〟で世界遺産に落書き「先人踏みにじる行為」春日大社 過去にも被害

奈良市の世界遺産・春日大社の本殿東回廊(国重要文化財)の柱に2人分の名前とみられる漢字と、中国語で「いつまでも仲良く」といった意味の漢字が落書きされているのが見つかり、奈良県警が文化財保護法違反などの疑いで調べている。 国の天然記念物「奈良のシカ」が生息する奈良公園(奈良市)に隣接し、連日多くのインバウンド(外国人観光客)らでにぎわう春日大社は、平城京を守護する神々を祭り、1250年前に創建された。藤原氏の氏神の社として発展し、広く信仰を集めてきた。北野治権禰宜(ごんねぎ)は長い歴史に思いをはせ、「建物を守ってきた先人や、今守ろうとしている人たちの心を踏みにじる行為。ただただ残念に思う」と話した。 捜査関係者によると、落書きは地上から高さ約120センチの場所にあり、3文字の人名とみられる漢字が2行、その下に「恩」「愛」「永遠」とみられる漢字がいずれも青色の文字で書かれていたという。 落書きは9日午前11時10分ごろ、参拝者から職員に申告があり発覚した。奈良県警は今後周辺の防犯カメラ映像などを確認し、落書きした人物の特定を進める方針。 ■春日大社、修復方法を検討へ 春日大社は、被害を受けた回廊について、落書きをどのように消すのかなど文化庁や県、奈良市と修復方法を検討していく。 被害は今回が初めてではない。春日大社では令和4年にも境内の石灯籠(いしとうろう)にペンキのようなものが塗られているのが見つかったほか、5年には東大寺(奈良市)の二月堂参(さん)籠(ろう)所(国重文)でも落書き被害があった。 文化財の相次ぐ被害に、春日大社では「落書きなどの再発防止に向けて、どういうことができるか検討していく」とする。 ■過去にも有名社寺が被害 5年には奈良市の唐招提寺金堂(国宝)の柱に傷を付けたとして、奈良県警が文化財保護法違反の疑いでカナダ国籍の少年(17)=当時=を書類送検した。少年は家族と一緒に旅行で奈良市を訪れており、木製の柱に爪で「J」「Julian」と彫って傷をつけたという。少年は当時「退屈しのぎだった」と話していた。 奈良だけでなく、過去には全国の有名社寺がターゲットになる事件も発生している。平成27年には唐招提寺や東大寺(奈良市)、清水寺(京都市)といった世界遺産などで油のような液体がかけられる被害が確認された。現場の防犯カメラの映像などから、千葉県警は同年6月、建造物損壊容疑で、日本国籍で米国在住の当時50代の医師の男の逮捕状を取った。男は「お清め」と称して全国の寺社をめぐり、液体をかけた疑いが持たれている。

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