平祐奈と丸山隆平がW主演を務める新感覚刑事ドラマ「FOGDOG」(毎週月曜深夜1:29-2:09、読売テレビ/TVer、Leminoほかにて配信)の最終話となる第10話が、9月22日に放送された。未解決事件の捜査に当たる狗飼錐(平)と猿渡響(丸山)が、周囲の仲間と捜査を繰り広げた。(以下、ネタバレを含みます) ■欠落を武器に変える“バディもの”刑事ドラマ 本作は、相貌失認(そうぼうしつにん)を抱える休職中の警察官と破天荒な先輩刑事が、未解決事件の“霧”を晴らす完全オリジナルのサスペンス。気鋭の制作スタジオBABEL LABELの澤口明宏とナカモトユウ、そして「絶メシロード season2」(2022年、テレビ東京系)などの名倉良祐の3人が監督となり、バディものの刑事ドラマならではの軽妙な掛け合いをアップデートする。 狗飼錐(平)は、“人の顔を識別できない”相貌失認を抱える23歳で、現在休職中の警察官。もう1人の主人公・猿渡響(丸山)は、捜査一課で抜群の検挙率を誇るも、度重なる暴力行為から左遷されてしまった“昭和の熱血刑事”。世の中とうまくなじめない凸凹コンビだが、錐の驚異的な記憶力と、猿渡の型破りな行動力で難事件に立ち向かう。 ■“カッパ男”横河を巡る問いに揺れる登場人物たち 錐(平)は生活安全課の横河泳太(波岡一喜)に、車で連れ去られる。段ボールの中に閉じ込められたまま連れ去られるも、錐は環境音や匂い、気配を全て記憶。踏切のベルと電車の到着音、シャッターの上げ下げ、遠くのトランペット練習のフレーズ、さらに「カレーとラーメンの匂い」などから、自らの現在地をほぼ精確に猿渡に報告していた。かくして錐を救出した猿渡は、無事に横河を取り押さえたかに見えた。 逮捕現場に現れた鬼頭康臣(高橋克典)は、錐と猿渡を現場から離れさせ、横河と二人だけの状況をつくる。狗飼十四郎(山口馬木也)を殺した横河を、自らの手にかけることを計画していたのだった。錐は一度現場から離れるも、鬼頭から火薬の匂いを嗅ぎ取り、鬼頭の異変を察知。錐が鬼頭を止めるために放った言葉は、父・十四郎の言葉――「俺たちの仕事は真実を突き止めることだ。人を裁くことじゃない」というセリフと重なり合う。鬼頭はその言葉にかつての相棒を思い出し、拳銃を下ろすのだった。かくして最大の敵“カッパ男”との対決は幕を閉じた。 エピローグでは、それぞれの日常が少しずつ動き始める。錐は一人暮らしを決意し、獅子王雅人(福山翔大)の不器用な思いに「今度、デートしてみる?」とさらっと応える。解体されていた未解決事案総合対策管理室には猿渡が異動願いで復帰し、牛尾健司(梶原善)・豹頭敦史(八村倫太郎)と〈みかん部屋〉が再始動。錐と猿渡、そして周囲の人物が描く“欠落を武器に変える”物語は、希望の色を帯びて続いていく。 ■ “救済”を装う擬似的なバディがあぶり出す歪みに、錐と猿渡が“相棒のかたち”を示す 最終回の肝は、横河=“カッパ男”が掲げる「救い」が、関係の主従を固定する“擬似バディ”だったとあらわになる点だ。家に居場所のない子どもたちの欠落に入り込み、「連れ出す」ことで支配へすり替える。その一方で物語は、錐と猿渡が互いの弱さを補い合う“相棒”のかたちを繰り返し提示する。顔が読めない錐は〈声・匂い・音〉で状況を共有し、がむしゃらな猿渡は彼女の感覚を信じて動く。同じ“欠落”が、支配の温床にも、補い合いの回路にもなるという対比が鋭い。 カッパ男は捕まる瞬間まで“相棒不在”の人々を挑発する存在でもあった。とりわけ、相棒・狗飼十四郎を失ってバランスを欠いていた鬼頭は、それゆえに“私刑”へと傾きかける。だが、錐は図らずも父・十四郎の言葉を呼び戻すことで、鬼頭に“相棒の言葉”を届ける。相貌失認という欠落を抱えながら、感覚と記憶を手繰り寄せることで生きてきた錐。そんな錐の言葉が、カッパ男の仕掛けた擬似的な絆を無効化し、〈真実を突き止め、人を裁かない〉という捜査の原点へ全員を引き戻した。欠落を武器に変えること。それは誰かの弱さを支配することではなく、弱さ同士を橋渡しすることだ――。このドラマに流れる通奏低音を、最もクリアな輪郭で描き切る最終回だった。 ■ クライマックスの疾走感と“相棒”の着地に「胸熱」「ハラハラ」の声が集中 最終回のスピーディな展開に「ハラハラドキドキ」「リアタイで固唾をのんだ」「カッパ男って(『セブン』の)ジョン・ドゥ的な感じするね」などと盛り上がりが加速。公式や出演者のポストも拡散され、深夜帯ながらハッシュタグは活発に更新された。 特に続編に向けた布石とおぼしき最後の演出には「桃太郎になぞらえてるのにキジだけ出てこないなあと思ったら、ついに!」「ちょっと待ってどういうことなの?」といった反応も多く、シーズン2への期待が広がった。 ◆文=ザテレビジョンドラマ部