「Aさんとは結婚を考えていました。(Aさんが)高校を卒業するタイミングで、何かしらの動きを取ろうと思っていました」 「死にたい」と訴えた当時15歳の女子高生Aさんに「いっしょに死のう」と持ちかけ、連れ回したとして逮捕された41歳の男は、公判で「Aさんとの将来を考えていた」と驚きの言葉を述べた。 「’25年5月16日、千葉県警は愛知県居住の住中隼(すみなか・じゅん)被告を未成年者誘拐の疑いで逮捕しました。住中被告はチャットアプリで知り合った女子高生Aさん(当時15歳)に自殺願望があることを利用して呼び出し、5月13日から16日までの4日間にわたってAさんを連れ回し、ホテルに滞在させるなどして誘拐した疑いです。 13日夜にAさんの母親から行方不明届が出され、防犯カメラの映像などから住中被告が浮上。検察は6月6日に住中被告を未成年者誘拐の罪で起訴。その後、不同意性交等で2度、追起訴しています」(全国紙社会部記者) 9月9日、千葉地裁でこの事件の第2回公判が開かれ、被告人質問が行われた。弁護人の質問に答えるかたちで、住中被告はAさんと知り合ったきっかけと、親密になっていった経緯について話し始めた。 「昨年の夏ごろ、職場で上司が変わったことから、環境が変化しました。その変化に僕自身がついていけず、このままでは潰れてしまうと思い悩む日々が続いていました。昨年末ごろから社内の相談室に相談したりもしましたが、結局、何の変化もないままだったのです」 職場での人間関係に悩むなか、ランダムチャットでAさんと知り合ったという。 「Aさんとは今年の4月に知り合いました。1日に数回、趣味のことなどを話していましたが、徐々にやり取りの回数が増えていきました。メッセージのやり取りが増える中で、Aさんが僕に甘えてくるようになり、『あなたからも甘えてほしい』とも言ってくれました。 僕自身、他人に頼ったり弱さを見せるのが怖かったので、最初のほうは悩んでいました。しかし、少しずつAさんに甘えることで、(Aさんとのやり取りの場が)安心する空間になってきたのです」 4月下旬に初めて顔を合わせた2人は、その日、性行為に及んだという。 ◆「死にたい」と訴えるAさんに… 弁護人の「あなたとAさんには、かなりの年齢差がありますが、そのことについてはどう考えていたのですか?」という質問に、住中被告は次のように答えた。 「Aさんと会う前も、会ってからも、自分のことを受け入れてくれるのか、ずっと不安でした。それでも会って話すうちに、だんだんとAさんのほうから体を寄せてきてくれたりしたので、自分のことを受け入れてくれていると思ったのです。 性行為については、法律的にまずいと悩む部分もありましたが、自分とAさんとの関係性が本当なのか、確かめるために行動に移してしまいました」 Aさんと「ずっと、いっしょにいたい」と考えるようになった住中被告。弁護人の「Aさんとの関係をどう考えていたのか」という質問に冒頭のように「結婚を考えていた」と述べ、こう続けた。 「子供がまだ学校に通っていたので、一段落したら、妻に離婚を切り出そうと考えていました」 その頃、Aさんは家庭内の問題で思い悩み、自殺未遂をしたこともあったという。「死にたい」と訴えるAさんに対し、住中被告は「高校での3年間でいろんなことに挑戦して、夢を見つければいいんだよ」と励ましたりもしたが、「もう限界だと感じたら、僕もいっしょに死ぬよ」と伝えたのだという。 そして、そのときの気持ちを、こう明かした。 「私自身、会社での悩みなどがあって、死にたいという気持ちがありました。いつでも死を受け入れられる状態だったのです。もちろん、親の承諾なしに連れ出すことが犯罪だというのも理解していました」 「もし自殺するのであれば、全部を捨てて行くよ」と伝えた住中被告に対してAさんは「自殺」を実行に移すことには躊躇していると取れるような返答をしていた。 ◆「自殺するから避妊の心配はいらない」 そして5月13日の朝、前夜からつないだままにしていたLINE電話で、Aさんが泣きながら「学校に行きたくない」と訴えたことから、住中被告は「会いに行く」と答えたという。そのとき、このような決意があったと話した。 「自分の本気を行動で示したかった。本気で死ぬということを示したいと思いました。会社に休みの電話を入れ、すぐに新幹線で東京に向かいました。家族に置き手紙をする余裕はありませんでしたが、家を出たとき、肩の荷が下りたような感じで、背負っている責任から逃げられたっていう感じがしました」 検察官の「13日の朝、どんな気持ちで東京に向かったのか」という質問には、「Aさんに、自分の命を捧げるつもりでした」と並々ならぬ決意で向かったと主張した。 Aさんに、位置情報で居場所がバレないよう携帯電話の電源を切るように指示すると、自身の携帯電話の電源も切り、待ち合わせ場所である秋葉原駅に向かった住中被告。そして秋葉原駅でAさんと合流すると、Aさんが制服だったことから、着替えのため近くのホテルに入ったという。そこで住中被告はさっそく性行為に及んでいる。 Aさんから避妊を求められたものの、住中被告は応じなかったとして、検察官は避妊しなかったことに「同意がなかった」と指摘した。 「被告人は5月13日、被害者と合流した後、秋葉原駅付近のホテルで性交しようとした際、避妊を求められましたが、『どうせ自殺するから避妊の心配はいらない』という旨の説得をし、避妊せずに性交。以後も避妊せずに性交しておりました」(検察官) その後、ホテルから出た2人は東京駅から新幹線に乗り、仙台へと向かったのだった。 【後編】では、被告の証言に対する検察官の厳しい追及などについてふれている。 取材・文・写真:中平良