最近、「私も動物保護施設を作りたいんです」というお話をいただくことが増えてきました。とってもうれしいことだなと思う半面、リスクをきちんとお伝えするのも自分の責任だと思うので、今回は活動の理想と現実について書いてみたいと思います。 まず、今年だけでも、保護猫ボランティアさんにまつわる大きな事件が2つも起きています。1つ目は、愛媛県今治市のボランティア団体の代表の方が、資金面で行き詰まってしまい、約70匹の保護猫をシェルターに残して自死してしまった事件。 2つ目は、熊本県で引き取りを行っていたボランティアが、保護した猫13匹に餌を与えずに死なせた疑いで逮捕され、自宅からは猫の死骸が約130匹分も見つかったという、痛ましい事件でした。 こういった問題の背景には、世間に蔓延する「シェルター神話」があると感じています。動物保護施設(以下シェルター)を運営する人は愛にあふれたすごい人で、多くの支援者に支えられ、シェルターは猫の楽園のような場所なんだ-という、根拠のないイメージです。 実際には、運営しているのは同じ生身の人間ですし、相当な努力と経営能力を有している団体でない限り、寄付もほとんど集まりません。猫はそもそも多頭飼育されるのが苦手な動物なので、たくさんの猫が保護されているシェルターは、猫にとっても決して楽園などではありません。 ねこから目線。の大阪本社には有料のシェルタールームがあります。保護猫さん専用のペットホテルのようなイメージで、「ノラ猫さんを保護して自宅で飼いたいけれど、先住猫がいるので〝検疫期間〟として1カ月だけ預かってほしい」といったニーズがあります。 ここでは1泊1200円+初期費用で保護猫さんの預かりをしていますが、どれくらいのコストがかかるかを試算してみましょう。満室20匹くらいの小規模なシェルターですが、1回のお世話には大体2時間ほどかかります。お世話は朝晩しますので、仮に人件費を時給1200円とすると、1日あたり4800円で、1カ月で14万4千円。フードやトイレの砂、消毒や掃除道具など消耗品が1匹あたり1カ月5千円とすると、20匹で10万円。さらに家賃や光熱費がかかるので、かなり少なく見積もっても、30万円以上のランニングコストが毎月かかります。 保護団体さんの場合は、預かりではなく引き取りや直接の保護で対応されている所がほとんどですので、医療費も追加で数十万円単位でかかってくるはずです。普通に会社を起業し、運営していくのと同レベルの経営能力が必要なんです。