ガザで戦闘開始2年の現在地 英仏の武器供給しながら「国家承認」は“偽善”の指摘も

悪化する一方のガザの状況に対して、英仏が「パレスチナ国家承認」への動きに出、トランプ大統領がネタニヤフ首相と会談し和平案を発表した。今後どうなるのか。AERA 2025年10月13日号より。 * * * 「ベイトハヌーンの住民へ告ぐ。身の安全のために、ただちに自宅を出て、既知の避難所へ向かうこと。これは警告である。イスラエル国防軍」 2023年10月8日未明、ガザ北部のベイトハヌーンに住む29歳の薬剤師、オマル・ハマドさんの携帯電話に届いたイスラエル軍からのメッセージである。前日の7日、ガザのイスラム組織ハマスによるイスラエル南部への越境攻撃があった。 しばらくして、イスラエル軍の空爆がガザ全域で始まった。オマルさんは日記に次のように書いた。 「東も西も、南も北も、ガザ中が空爆されていた。だが一番爆撃がひどいのは僕の美しい故郷、ベイトハヌーンだった。突然、このジェノサイド全体で初の虐殺の発表があった。ベイトハヌーンで22人が殉教した」 これはガザ戦争2年を前に、9月末に出版された『オマルの日記 ガザの戦火の下で』(海と月社)の初日の記述である。オマルさんは1年後の2024年10月6日、次のように書いた。 ■死者の大半が非戦闘員 「まる1年、365日、8760時間の苦しみ。50万分を超える苦悶。このジェノサイドの間に僕が目撃したものは、どんな人間でも、たとえスマホの画面越しであっても正視に耐えないだろう。頭のない子どもの遺体、蒸発して空に昇る子ども、重さ75キログラムのバラバラの肉塊を詰めた袋、家族全員ががれきの下に埋もれたままの崩れた家──」 オマルさんは生き延びているが、ガザ戦争は開始から2年がたち、さらに悲惨な状況になっている。9月末までの死者はガザの保健省の集計で6万5千人。うち2万人が子ども、1万人が女性、5千人が高齢者という内訳。明確な非戦闘員だけで、死者の半数を超える。 2024年11月、国際刑事裁判所(ICC)はネタニヤフ首相に「民間人を意図的に攻撃した」として戦争犯罪と人道に対する罪で逮捕状を出した。 ガザの状況が悪化したのは、今春以降。イスラエルとハマスは1月に停戦で合意したが、3月にイスラエル軍が一方的に停戦を破棄し、攻撃を再開し、地上戦を開始した。一方でイスラエル軍はガザを封鎖し、食料搬入を停止した。ガザで飢餓が蔓延し、これまでに450人以上が餓死している。うち150人が子どもという惨状になっている。

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