「知らない人に声をかけないようにする」尾行した女性にわいせつ未遂の男が法廷で語った"身勝手思考"

ナンパした女性を尾行し、わいせつな行為をしようとして住居侵入、不同意性交等未遂の罪に問われた草野大地被告(26)の公判が10月9日、東京地裁で開かれた。 起訴状などによると、草野被告は’25年5月、深夜に都内の路上で20代の女性にナンパ目的で声をかけた。連絡交換を求めたが、断られたため自宅まで尾行。女性がドアを閉めるタイミングを見計らい部屋に侵入し、わいせつな行為をしようとしたという。 「今年8月には、神戸市のマンションのエレベーターで住人の女性が刺殺された事件が日本を震撼させました。この事件で逮捕された谷本将志容疑者(35・逮捕時)は、好みの女性の後ろをつけ、オートロックをすり抜ける“共連れ”の手口で侵入し、行為に及んでいます。今回の事件は、谷本容疑者の犯罪を連想させます」(全国紙社会部記者) 法廷では路上を歩いていただけの何ら落ち度のない女性を恐怖に陥れた犯行の一部始終が明らかになった。 小柄な草野被告はオーバーサイズの黒色のTシャツを着用。猫背で出廷し、着席すると不安げな視線を法廷に向けた。その様子からどこか幼さを感じさせた。 検察側の証人質問でナンパの目的を問われると、 「好みの女性で友達や彼女がほしかった。その時点では性交したいと思っていなかった」 と答えた。連絡交換をしようとしたが、断られたため女性を尾行。尾行した理由については、 「よく笑ってくれたので、会話をしていくうちに仲良くなったと感じた。解散するとなった時にまだ話したいと思って衝動的についていった」 と説明。しかし、検察側は女性は〈相手を刺激しないように会話を合わせていた〉(女性の供述調書より。〈〉は以下同様)と指摘。つまりは「仲良くなったと感じた」のは、草野被告の勝手な思い込みだったわけだ。 草野被告の思い込みは歪んだ形で暴走する。女性の後をつけ、1人住まいの部屋に到着し、玄関のドアを閉めるタイミングを見計らい部屋に侵入。女性を押し倒し馬乗りになり、女性の両手首をつかんだという。女性が脅えながら「やめて」と懇願し、草野被告はようやく女性が怖がっていることに気づき、未遂となった。 しかし、女性の心の傷はあまりにも大きかった。〈レイプされるのではないか。殺されるのではないか〉という恐怖から、ストレス障害の診断を受けたという。さらに部屋の玄関を見るだけで恐怖を思い出し、引っ越しを余儀なくされている。 ◆「仕事に専念します」 検察から、再犯の可能性について問われた草野被告は、 「もう一度犯行することはないと思います。被害者から『やめて』と言われて、やらなかった」 と主張。更生のため地元・栃木に戻り、親と一緒に暮らし仕事を探すと答えたが、親とは連絡が取れていないという。 質問人が裁判官に代わってもチグハグな問答が続く。「再犯をしないためにはどうするべきか?」と問われると草野被告は、 「知らない人に声をかけないようにする」 と回答。裁判官が、「知らない人に声をかけても犯罪にはならない。犯罪まで至ったのはあなた自身にどういう問題があったのか」と再度質問。しかし、 「相手に恐怖を与えてしまったことを申し訳なく思います」 と質疑がかみ合わない。 「草野被告は反省の言葉を述べていましたが、法廷での発言は被害女性への配慮が欠けるものでした。女性の愛想笑いを自身への好意と勘違いし、尾行して家まで侵入していることの重大性を理解していないのかもしれません。更生のため実家で両親と暮らすと言っていましたが、両親の了承を取らずに決めているわけですから裁判所の心証もよくない。更生プログラムを受けることも必要でしょう」(前出・記者) 検察側は、「執拗かつ卑劣な犯行。未遂に終わっているが、その恐怖は計り知れない。また引っ越しを強いられるなど経済的損失も出ている」として懲役4年を求刑した。一方、弁護側は犯行について争わないとしながらも「前科、前歴はなく26歳ということも考慮し更生の機会が与えられるべき」として執行猶予を求めた。裁判官から「最後に言っておきたいことはありますか」と発言の機会を与えられると、草野被告は、 「恐怖を与えたことを反省し二度と同じ過ちを犯しません。仕事に専念します」 と述べた。女性は日常生活に支障をきたすほどの心の傷を受け、今も苦しんでいる。仕事に専念することで罪の償いとはならない。

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