夢を追い、夢を失い、夜で1億円を得た──Toi Toi Toi星野ティナ 再出発のステージに映った“色のない景色”

6人組アイドルグループ「Toi Toi Toi」の星野ティナが、スポニチ東京本社でソロインタビューに応じた。青春をささげた前グループの突然の解散、その後キャバクラ嬢として1億円を売り上げた過去。そして、自ら選び直した夢のステージは「色のない景色」から始まった。(「推し面」取材班) もう一度、夢を追いかけたい。そう願って5年ぶりに戻ってきたアイドルのステージ。目の前に広がっていたのは、かつて知っていた風景とはまるで違っていた。 観客はいる。けれど、自分のファンを示す黄色の光が見当たらなかった。 「ペンライトが、ほとんど光ってなかったんです。“あ、ヤバい”って思いました」 昔は当たり前のように受け取っていた熱い声援が、沈黙に変わっていた。戻ってきたはずの場所が、こんなにも温度差を突きつけてくるとは思わなかった。 その理由には、思い当たる節があった。前職が「1億円キャバ嬢」だったからだ。 アイドルの原点は「monogatari」というグループ。中学高校の6年間、修学旅行や文化祭もほぼ参加せず、365日をレッスンとライブに注いだ。けれど、ある日突然プロデューサーが逮捕され、解散が決定。最後のライブは新型コロナ禍で無観客。「このまま進めば日本武道館だって行ける」と信じた少女の夢は突如として終わった。 「1年ぐらい、人間不信になっていました」 失意で飛び込んだ夜の街。キャバクラ嬢として3年半で売り上げた額は「1億円」。だが、大金を得ても心の空白は埋まらなかった。 「お金は手にしても、私の中で夢は見えなくて。だから“もう1回、自分のために後悔しない人生を”と思ってオーディションを受けました」 華やかに見えて孤独な世界から、再びステージへ。5年ぶりに浴びたスポットライトは前と変わらずまぶしかったが、観客は正直だった。「キャバクラ出身」を理由に離れてしまったファンも多い。 「やっぱり過去があるせいで推してもらえない。そこをどうにか認めてもらえるように頑張ってるんですが、今もすごい手こずってます」 折れそうな背中を起こしてくれるのは、母の言葉だ。「ティナちゃんは、どこでも輝けるから大丈夫」。短いたった一言が、星野にとって最善の“おまじない”になっている。 生活面の不安はある。「キャバクラ時代と同じ家に住んでるんですけど、今の稼ぎじゃ完全に赤字です(笑)。貯金を切り崩してますけど、どんどん減っています。でも“絶対売れるから大丈夫”って自分に言い聞かせてるんです。やっぱり楽しいし、自分のやりたいことだから頑張れる」 再出発の人生。色のない景色の中で光を見つけた1人のアイドルが、いまステージの上で笑っている。 「貯金がゼロになったら、そのときまた考えればいい」。そう言って笑った顔に、強がりだけではない確かな決意がにじんだ。信じることをやめなければ、ペンライトの光は必ず増えていく。

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