「PDF編集ソフトで通帳の写しを精巧に偽装…犯罪行為を容易に察知することが出来なかった」 立場を利用して成年後見制度を悪用 専門家による着服はなぜ繰り返されるのか 広島

成年後見人として管理していた財産から400万円を横領したとして逮捕されていた弁護士の男(67)が、業務上横領の罪で29日起訴されました。これまでにもたびたび悪用されてきた成年後見制度。どんな落とし穴があるのか、専門家に聞きました。 広島弁護士会の弁護士の男(67)は、10月、成年後見人として管理していた財産から400万円を横領したとして、業務上横領の疑いで逮捕・起訴されています。逮捕当初は、「今はいう気になれません」と供述していたということですが、その後の調べでは、概ね容疑を認めているということです。 この事件については、28日、広島地裁で、被害者の女性側が弁護士の男に対して損害賠償を求めた民事裁判の判決がありました。 この訴状などによりますと、弁護士の男は、広島弁護士会の推薦を受け、2009年に広島家庭裁判所から女性の成年後見人に選任されました。 男は、財産を適正に管理していると装うため、PDF編集ソフトで通帳の写しを精巧に偽装し、家裁に提出していたということです。2015年ころから約8年間で1億円を超す着服を繰り返していたとされています。 ■後を絶たない成年後見制度の悪用…資料を偽造する例も 成年後見制度は認知症や知的障害がある人たちを親族のほか弁護士などの専門家が「後見人」になって財産管理などの手続きをサポートする制度です。 「後見人」に弁護士がなるケースでは、弁護士会から特定の弁護士が推薦され、家庭裁判所が選任するのが一般的です。選任した後は後見人からの定期的な報告書を家庭裁判所がチェックします。 民事事件の訴状などによりますと、今回の事件では、業務上横領を隠蔽するため、家庭裁判所に対し、成年被後見人の解約前の定期貯金証書の写しや偽装した預貯金通帳写しを都度、添付していました。 偽装された預貯金通帳は不自然な切り貼りの形跡がなく、通帳の枠線や着色台紙部分をそのまま生かして、PDF編集ソフトで改ざんするなど、高度な手口で偽装されていたということです。 広島家庭裁判所では、「弁護士の男から提出された書類を審査していたが、このように極めて精巧な偽装が施されていたことから、犯罪行為を容易に察知することが出来なかった」としています。

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