《ブラジル》カタギリ「ボルソナロは刑務所へ」=右派運動の分裂が鮮明化

かつて若手右派運動・ブラジル自由運動(MBL)の顔として注目を集めた日系3世の連邦下議、キム・カタギリ氏(29歳、ウニオン)が、ジャイル・ボルソナロ前大統領(自由党・PL)とその家族を公に批判した。ボルソナロ前大統領は国家転覆未遂の訴追に絡み、刑務所に服するべきだと主張。かつては右派運動内で接点があったカタギリ氏が、ここまで距離を置くのは異例と見られ、右派勢力の分裂と再編を鮮明に示していると28日付BBCブラジルなどが報じた。 カタギリ氏はBBCのインタビューの中で、「ボルソナロ氏を再び支持することはない」と述べ、「彼の家族の誰にも投票しない」とも語った。「ボルソナロ家は自分たちのことしか考えていない覇権的権力プロジェクトで、国のことなど考えていない」と批判した。 同氏は19歳でMBLの創立メンバーとして政治活動を始めた経歴を持つ。インタビューでは、ボルソナロ氏が「真に右派として一貫した政権を築く機会を浪費した」と指摘し、「自身の価値観を裏切り、有権者を裏切り、選挙公約を裏切った」と断じた。具体例として、行政不正行為防止法の緩和や連邦警察の指揮権変更などを挙げた。 ボルソナロ氏が最高裁(STF)で国家転覆未遂の罪に問われている件について問われると、カタギリ氏は「審理には手続き上の欠陥があった」と述べ、STFが「手続きを踏み越えた」と批判した。弁護側に提供された約70テラバイトに及ぶ証拠量を問題視し、「過剰で非現実的だ」との見方を示した。だが、同氏は「ブラジルは、陸軍司令官が〝イエス〟と言えばクーデターが起きていたほどの危機的状況にあった」とも認めている。 「ボルソナロ氏は実際にクーデターを試みたと思う」との見方を明らかにし、その経緯を「極めてずさんなやり方」と評した。「彼は大統領府のプリンターでクーデター計画の草案を印刷し、軍の司令官たちの意見も聞かずにそれを提示した。三軍の司令官に文書を回したが、陸軍司令官が『実行すれば逮捕する』と警告したため前に進めなかった」とも。 ボルソナロ氏が健康上の理由で自宅軟禁中であることについて、カタギリ氏は「刑務所に入るべきだ」と強調。「現時点では彼が特例に該当するとは見えない。重い病気を抱えているが一時的なもので、必要に応じて病院で受診すれば十分だ」との見解を示した。 カタギリ氏は下議2期目を務めており、MBLが立ち上げた新党「ミッソン」の公式登録を選挙高裁(TSE)が審理するのを待つ。同裁判所は審理を30日に予定している。 同氏は以前、現サンパウロ州知事のタルシジオ・デ・フレイタス氏(共和者・RP)を「26年大統領選における右派の最有力候補」と評していたが、現在は「唯一支持するのはMBL全国コーディネーターのレナン・サントスだ」と明言。ミッソンはサントス氏を大統領選候補として擁立する方針を示している。 カタギリ氏はブラジルにおける政党設立の困難さにも触れ、「ブラジルでは新政党や新しい競争相手が生まれないように多くの障壁が設けられている」と語った。MBLは23年から新党設立に向けた署名活動を続けているが、未だ正式な登録は認められていない。 ウニオンを離れて新党で選挙戦を行うことについては、「政党は活動家精神と目的に基づくべきものであり、本来のあるべき姿だ」と説明。「私にとっては、テレビ放送枠や250万レアルの選挙資金が保障されるウニオンに残る方がはるかに楽だ。だが、私は権力に居座るために政治をしているのではない。使命を果たすためにここにいる」と語った。

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