「人間関係に嫌気がさした」…勤務する保育園に火を放った31歳保育士を犯行へと駆り立てた〝衝動〟

10月21日の朝、埼玉県警草加署から警官に付き添われて姿を現した1人の女。毛先が少し茶色くなった長い髪を後ろで1つに束ね、ふっくらとした顔立ちは優しそうにもみえる。なぜ、彼女は勤務していた保育園に火を放ったのか──。 10月19日、埼玉県警吉川署は、勤務先の保育園に放火しようとしたとして、保育士・今成沙弥香容疑者(31)を建造物侵入と非現住建造物等放火未遂の疑いで逮捕した。今成容疑者は18日の夜10時20~25分ごろ、勤務先である埼玉県松伏町の『ゆたか保育園』に侵入して放火しようとしたという。 「同日午後10時半ごろ、保育園の近隣の住民から『外を見たら保育園の2階から、オレンジ色の光が見えた』という通報があり、消防が駆けつけると、1階の職員室と2階図書室のカーペットの一部が焼けていたそうです。正面玄関のカギがあいており、警察は防犯カメラの映像をもとに、現場を立ち去った不審な女を今成容疑者と特定し逮捕しました。犯行時間が5分ほどと短いことから、計画的な犯行とみられています。 逮捕された今成容疑者は、この保育園に10年間勤務していたといいます。『人間関係に嫌気がさした』と供述しており、容疑を認めているとのことです。警察では職員間のトラブルについても調べています」(社会部記者) 犯行の理由を「人間関係」に疲弊したことだと供述した今成容疑者。犯人が「ストレスを感じたから」という理由で起きた放火事件は多い。直近でも7月に「カートのエンジン音がうるさくてストレスだった」と、東京・江東区の外国人観光客に人気の公道カートの管理会社に、隣接する会社の社員が放火した事件が起きた。 同月には住所不定の男が、「私生活がうまくいかず、ストレス解消でやった」と、東京・大田区の東京モノレールの高架下で新聞紙などに放火した事件も起きている。ストレスと放火の関係について新潟青陵大学大学院教授(社会心理学)の碓井真史氏に聞いた。 ◆ストレスから放火する人の〝心理〟とは 「放火にはいろんな動機がありますが、その1つにふだんの生活で強いストレスを感じたときに放火して、火が燃えるのを見ることで爽快感のようなものを感じる人たちがいます。これが癖になると放火癖とか、放火症などの診断名がつくことがあります。 物を壊すとストレスが解消するというのは、多くの人が共感できるところだと思います。例えば、むしゃくしゃしてお店の看板を蹴飛ばす人がいますよね。放火も同様にそういった破壊行為の一つになる場合があるのです。 ただ、営業しているお店の看板を蹴飛ばすのには、なかなか度胸や腕力が要ります。その点、放火は1人でこっそりできてしまう。弱者が、物を破壊したいとか、相手を困らせたいときに火をつける。簡単にできるわりに、全てを灰にしてしまう放火は破壊行為の中でも徹底したものなのです」(碓井氏) 今回の事件で容疑者は自分の職場に放火していることから、職場やその組織への復讐という動機もありうるという。 「容疑者からすれば、『私はこんなに怒ってるんだ、こんなに傷ついてるんだ、分かってよ』という表現なのかもしれません。しかし、放火によって生じる結果は看板を壊すことよりはるかに大きいですし、殺人と同じように非常に重たい罪ですから、どんな恨みを抱えていようと、絶対にやってはいけないことです。普通はそれを理性で抑えているわけですが、抑えられなくなってしまった結果、起きる。 本当に無差別に殺そうと思ったら昼間に行ってガソリンをまいて火をつけるでしょう。そこまでの気持ちはないけれども、怒りなのか絶望なのか悲しみなのか、自分のどうしようもない心の傷を分かってほしいという思いを晴らすために放火をしてしまうケースはあると思います」(同前) 今成容疑者を苦しめた「人間関係」とはどんなものだったのだろうか。とはいえ、無関係な園児たちを巻き込む可能性のある保育園への放火などはあってはならない。 ※「FRIDAYデジタル」では、皆様からの情報提供・タレコミをお待ちしています。下記の情報提供フォームまたは公式Xまで情報をお寄せ下さい。 情報提供フォーム:https://friday.kodansha.co.jp/tips 公式X:https://x.com/FRIDAY_twit

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