【詳報】市原ホテル従業員殺害 48歳被告に懲役19年判決 千葉地裁「残酷な犯行」計画性は認めず 検察側は懲役22年求刑

千葉県市原市のホテルで昨年11月、元同僚の女性従業員=当時(56)=を殺害し、現金を盗んだとして、殺人や窃盗の罪に問われたホテルの元アルバイト従業員、江川敦被告(48)=同市=の裁判員裁判の判決公判が30日、千葉地裁であり、池田知史裁判長は「危険で残酷な犯行」として懲役19年を言い渡した。検察側は懲役22年を求刑し、弁護側は懲役14年を求めていた。 池田裁判長は判決で「計画性は認められないが、殺人は強固な殺意に基づく非常に危険で残酷な犯行」と非難。被告が知的障害とそうでないはざまの「境界知能」と診断されている点については「(被害者に会うためにホテルを訪れたことを)店長にばれて怒られたくない」「被害者も自分をだましているのか」などと考えたことには境界知能の特性が現れているとしつつ、殺害を決意して遂げたのは「もっぱら被告の意思によるもの」と指摘した。 一方で、被告が犯行を認めて反省の態度を示していることなども考慮した。 判決の最後に、池田裁判長は「命の大切さについてよく考えて、罪を償ってください」と説諭した。 判決によると、被告は昨年8月上旬、このホテルで夜間のアルバイトを始め、ホテルの同僚で被害者の女性従業員に好意を寄せるようになった。勤務終了後に居残り、勤務中のこの女性従業員と会話をしたりしていたことで、この女性従業員の相談を受けたホテルの店長から注意を受けたが、被告はこの女性従業員が自分に好意を持っていると思っていた。 昨年10月中旬からはホテルのアルバイトを無断欠勤していたが、ホテルで勤務中のこの女性従業員に会って連絡先を聞きたいと考えた。「店長にばれたくない」「何かあったら(この女性従業員を)縛ろう」などと思い、別の勤務先からビニールひもと結束バンドを持ち出してホテルに向かった。 昨年11月1日午前1時ごろ、ホテルの事務室でこの女性従業員に連絡先を尋ねるも断られた被告は、仕事に戻ろうとしたこの女性従業員を引き止めようとして首にひもを巻いた。その際、この女性従業員から「落ち着いて、話なら聞くよ」と言われたが「(女性従業員に会うためにホテルを訪れたことを)店長にばれて怒られたくない」「女性従業員も自分をだましているのか」などの思いから殺害を決意したという。 被告は事件前、好意を抱いた動画配信者の女性に送金を続けていたが、連絡が取れなくなったことなどからこの配信者の女性にだまされていたと感じていた。 被告の逮捕後の精神鑑定を務めた医師は、22日の公判で、被告が動画配信サイト上で気に入った女性たちとSNSで直接やり取りをする中で「病院に行く金がない」「携帯料金を払えない」といった求めに応じ、資金援助を繰り返していたことを明かしていた。 判決によると、被告は昨年11月1日午前1時25~55分ごろ、ホテルの事務室で、勤務中だった女性従業員の首をビニールひもで絞め付けた上、包丁で腹を複数回刺し、首を多数回切り付けて殺害した。さらに同室のレジ内からは現金1万2600円を盗み、客室の精算機にバールのようなものを差し入れて現金を盗もうとした。 (井田心平)

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