「通り一遍の謝罪は誰の心にも響かない。生涯を通じて罪の重さを認識し、何ができるかを考え続けてほしい」 裁判長は判決の最後に被告をこう諭したという。 11月4日、東京地裁は過失運転致死傷などの罪に問われているトラック運転手の降籏紗京(ふりはた・さきょう)被告(29)に懲役7年6ヵ月の実刑判決を言い渡した。降籏被告の運転していた大型トラックは昨年5月、首都高で渋滞していた車列に突っ込み車6台が巻き込まれる大事故に。3人が死亡、3人が重軽傷を負った。 「公判で、降籏被告は『たくさんの人々の命を奪ってしまったことに重い責任を感じます』と謝罪しています。弁護側は、勤務していた運送会社の管理体制にも問題があったと主張しました。 起訴状などでは、事故の3日前から被告に風邪の症状があったうえ、前日の深夜まで不倫相手とLINEをして睡眠不足だったことが明らかになっています。検察側は、運転中も不倫相手とLINEする『ながら運転』をしていたと主張。交通規範の意識が乏しく『最上限の刑が必要』と訴えたんです」(全国紙司法担当記者) 『FRIDAYデジタル』は発生直後に、6人が死傷した痛ましい事故を取材。「ぶつかった時も意識はなかった」とする、降籏被告の戦慄言動や事故の詳細を振り返りたい――。 ◆38度以上の熱で風邪薬をのんで運転 現場はすぐに猛火につつまれたという。周辺に響く複数の爆発音。トラックに追突された乗用車は黒焦げになった。 5月14日の朝7時半過ぎ、首都高速道路で大規模な交通事故が起きた。現場は埼玉県戸田市の美女木ジャンクション、池袋(東京都豊島区)方面へ向かう首都高5号線下りだ。渋滞中の車列に大型トラックが突っ込み、車6台が巻き込まれ3人が死亡。別のトラックを運転していた3人が負傷した。 「警視庁交通捜査課が、自動車運転処罰法違反(過失致死)で現行犯逮捕したのが降籏被告でした。現場にはブレーキ痕がなく、降籏被告は減速せずに突っ込んだとみられます。現場に設置されたカメラには、10mほど前からスピードを落とさずに走る降籏被告のトラックが映っていました。 降籏被告は逮捕後に戦慄の供述をしています。『(現場から約1km離れた)戸田南インターチェンジあたりから意識がありませんでした』『ぶつかった時も意識はなかった』と。当日は38度以上の熱があり、風邪薬をのんで運転していたようです」(全国紙社会部記者) 降籏被告が所属していた運送会社代表の説明などから、事故前の尋常ではない様子も明らかになっている。 ◆「言い訳にならない」 「降籏被告は、事故前日の早朝5時から昼前まで勤務していたそうです。しかし正午の点呼の際に『気分が良くない』『2~3日前から体調が悪い』と申告。早めに帰宅していました。 その後は降籏被告から連絡がなかったため、会社は翌日の予定を変更することはなかった。通常は営業所から運転手が出発する前にアルコールチェックや体調確認をするそうですが、降籏被告が早朝4時にスタートしたため実施されなかったそうです」(同前) 元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が解説する。 「体調が悪いうえに不倫相手とLINEする『ながら運転』では、起きて当然の重大事故です。ご遺族の方にとっては、事故とはいえ親族が殺害されたことと同義でしょう。懲役7年6ヵ月は軽いと感じるのではないでしょうか。 被告が所属していた運送会社の責任も重い。たとえ早朝のスタートであっても、運転手の体調確認をしなかった言い訳にはなりません。どんな時間のスタートでも、運転手の健康状態を把握するのが運送会社の責務だと思います」 降籏被告に交通規範の意識があり、運送会社の管理体制がしっかりしていれば――。避けられたかもしれない事故により、3人の尊い命が奪われてしまった。