内乱事件を捜査するチョ・ウンソク特別検察官(特検)チームは10日、平壌(ピョンヤン)への無人機浸透作戦を主導した尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領とキム・ヨンヒョン前国防部長官、ヨ・インヒョン前国軍防諜司令官に一般利敵容疑などを適用し起訴した。一般利敵罪は刑法の外患罪に定められている犯罪で、大韓民国の軍事上の利益を害したり、敵国に軍事上の利益を提供した場合に適用される。今回の起訴は12・3内乱事態後、捜査を通じて外患容疑が初めて適用された事例だ。 ■尹前大統領、キム前国防部長官、ヨ前防諜司令官に一般利敵容疑適用 特検チームは尹前大統領とキム前長官、ヨ前司令官に一般利敵と職権乱用容疑を適用して追起訴し、無人機作戦を実務的に指揮したキム・ヨンデ前ドローン作戦司令官には軍用物損壊教唆、軍機密漏洩などの容疑で在宅起訴した。パク・チヨン特検補はこの日のブリーフィングで「尹前大統領とキム前長官などが共謀し、戒厳宣布の条件を作るために南北間の武力衝突の危険性を高めるなど、大韓民国の軍事上の利益を阻害した」とし、「これは国民の安全に危険を招きかねない絶対に容認できない行為」だと述べた。 特検チームは7月に再拘束された尹前大統領などに外患関連容疑を適用し拘束令状を追加で請求する計画だ。令状が発付されれば、来年1月初めに満了する尹前大統領の拘束期間は増える。 ■特検「『まさか』が事実に…衝撃と恐怖」 内乱事件を捜査しているチョ・ウンソク特検チームは、「平壌(ピョンヤン)の無人機浸透作戦は、尹錫悦前大統領とキム・ヨンヒョン前国防部長官らが共謀して北朝鮮を軍事的に挑発し、非常戒厳宣布の名目を作る目的でおこなったもの」だと結論付けた。最初から提起されていた疑惑を事実として確認したというのが特検チームの説明だ。パク・チヨン特検補は「証拠を通じて『まさか』が事実だったと確認される過程は、捜査に参加する全員に失望を越えて惨憺たる気持ちを抱かせた」とし、「国民の立場としては、非常戒厳を宣布したこと以上の衝撃と恐怖があると考えられる」と強調した。 特検チームは、昨年10〜11月に行われた平壌無人機浸透作戦が戒厳宣布の名目作りのためだったと判断した主な根拠として、ヨ・インヒョン前防諜司令官の携帯電話のメモを提示した。ヨ前司令官は尹前大統領、キム前長官と同じ「忠沖高校同門」(忠沖派)で、特検チームはヨ前司令官が戒厳宣布のための軍事作戦という意図を明確に認知した状態で、無人機浸透作戦全般に関与したとみた。 特検チームが確保したヨ前司令官のメモによると、ヨ前司令官は昨年10月18日午後2時6分、携帯電話(のメモ)に「不安定な状況で短期間に効果が見られる千載一遇のチャンスを探して攻略しなければならない」として、その方法として「面目がつぶれて必ず対応せざるを得ないターゲティング」などと書いた。対象としては、平壌▽核施設2カ所▽三池淵(サムジヨン)など偶像化の本拠地▽元山(ウォンサン)外国人観光地▽金正恩(キム・ジョンウン)の休養所などが挙げられており、メモの下段には「最終状態は低強度ドローン紛争の日常化」だと記載されている。非常戒厳宣布に先立ち、平壌の主な施設に無人機を送り、北朝鮮の対応を引き出す方式で、南北間の軍事的衝突を誘導したととれる内容だ。 とりわけ、ヨ前司令官のメモに昨年10月27日付で「布告令違反最優先検挙および家宅捜索」とあること、昨年11月9日には「李在明、チョ・グク、ハン・ドンフン、チョン・チョンネ、キム・ミンソク」など戒厳時に防諜司の逮捕対象となっていた人物の名を列挙していることなどを考えると、平壌無人機作戦は非常戒厳の条件づくりが目的だったことは明白だというのが特検チームの判断だ。ただし、無人機作戦を実行したキム・ヨンデ前ドローン作戦司令官には一般利敵容疑が適用されなかった。パク特検補は、「一般軍事作戦の場合、過剰だとしても意図が重要だ。(キム前司令官には)当時、北朝鮮の汚物風船への対応だという認識があった可能性がある」とし、「(外患罪の起訴は一般利敵の)目的意識を持った人に限られる」と説明した。 ■特検、尹前大統領の非常戒厳謀議時期を「2023年10月」と結論 また、特検チームはノ・サンウォン元情報司令官の手帳のメモを根拠に、尹前大統領の戒厳論議と準備の時期を、軍将軍人事が断行された「2023年10月」頃と結論付けた。ノ元司令官のメモに「ヨ・インヒョン、小型機(防諜司参謀長赴任)、パク・アンス、キム・フンジュン(陸軍本部参謀部長)、ソン・シク(地上作戦司令官)」などの将官の名前が列挙されているが、いずれも2023年10月前後の進級または人事対象者だった。これに先立ち、検察の特別捜査本部は尹前大統領が昨年3月、ソウル鍾路区三清洞(チョンノグ・サムチョンドン)の安全家屋での会合から非常戒厳を話し合っていたと尹前大統領の起訴状に記載しているが、この5カ月前にすでに戒厳が議論されていたということだ。パク特検補は「ノ・サンウォン手帳は、漠然と荒唐無稽だったというよりは、事実として明らかになった部分もあり、計画段階があったと考えられる」とし、「ある程度実現された面があるため、確実に把握された部分は犯罪事実に含めた」と説明した。 カン・ジェグ記者 (お問い合わせ [email protected] )