「今は嫁と静かな生活を送ってるから…」“消えた天才ボクサー”渡辺二郎が私に語ったこと…波乱の人生「渡辺の王座を剝奪する」31年前のトラブル

“伝説のボクサー”渡辺二郎とは何者だったのか? 現役引退後5度の逮捕、そして“永久追放”……。一方で、日本人として初めて海外で防衛するなど、通算10度の世界王座防衛を遂げた。天才ボクサー、波乱の人生とは。【NumberWebノンフィクション全3回の中編/前編、後編も公開中】 ◆◆◆ 筆者は過去2度、渡辺二郎本人と会っている。2021年秋、『沢村忠に真空を飛ばせた男』(新潮社)で講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞した直後、次なる著作を模索する過程において、仲介者を通して面会の機会を得たのだ。2021年10月15日、場所は大阪市内のホテルの喫茶店。眼前に現れたのは、紛れもなく渡辺二郎本人だった。 1971年生まれの筆者にとって、渡辺二郎はボクシングに夢中になる奇貨を与えてくれた、少年時代の憧れの存在である。饒舌かつ物腰も柔らかく、往時の印象に違わぬ魅力的な人物だった。身を持ち崩した様子はまるでなく、余裕のありそうな暮らしぶりも伝わってきた。ただし、彼自身は自身の評伝が著述されることにまったく乗り気ではなく「今は嫁と静かな生活を送ってるから、そっとしといて欲しいなあ」と筆者の顔を覗き見るように言った。その後、筆者自身も別の著作に同時に着手したこともあって「保留にします」と告げたまま4年が経過した。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする