16歳で妊娠させられ中絶、だけど大人は助けてくれなかった…24歳女性が「顔出し」で性暴力を告発した理由

14歳から19歳の間、児童養護施設で性暴力を受けたとして、24歳の女性が施設側に計2200万円の損害賠償を求める裁判を起こした。2025年6月、地元・熊本市内で開いた記者会見に、女性は「マスクのみの顔出し」で出席した。訴訟に臨む覚悟を、ノンフィクションライターの三宅玲子さんが取材した――。(第2回/全2回) ■少女に対する性暴力は約5年続いた 性暴力は平山ひかりさん(仮名、24歳)が14歳の時から始まった。熊本県荒尾市にある児童養護施設「シオン園」で、父親のように慕っていた12歳年上の男性職員がある日を境に常習的に性的行為をするようになったのだ。 避妊はほとんどされず、16歳のときに妊娠。加害者は当然のように「おろせ」と言い、相手は「ネットで会った知らない人」と説明するように指示した。 平山さんが19歳で施設を出るまで続き、加害者は2021年11月に児童福祉法違反の容疑で逮捕、2022年7月に懲役1年10月の実刑判決が確定した(詳細は第1回)。 判決確定後の2022年秋、シオン園を運営する社会福祉法人慈愛園(熊本市)の幹部と平山さんは面会した。場所は、平山さんをサポートする井上莉野弁護士の所属する福岡法律事務所だった。 ■キリスト教にルーツを持つ社会福祉法人 慈愛園の出席者はシオン園施設長(当時)、事務局長、代理人弁護士など複数名。平山さんには井上弁護士が同席した。 社会福祉法人慈愛園のルーツは、ルーテル教のアメリカ人宣教師モード・パウラスが大正期に熊本で始めた社会福祉活動だ。その歴史とともに日本の社会福祉分野では知られている。 面会での幹部たちの様子は、事案の深刻さとかけ離れていたという。井上弁護士が説明する。 「謝罪に訪れた幹部たちの一部は、自分たちの運営する児童養護施設で性的虐待を受けた元園児と顔を合わせているというのに、謝罪に訪れた人の態度ではありませんでした。ほかの人からは謝罪の言葉がありましたが、謝罪の方向性が違うように感じました」 謝罪の方向性は、どのようにずれていたのか。

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