大谷翔平投手(31)を擁するドジャースが悲願のワールドシリーズ連覇達成――。その熱狂の裏で、ロサンゼルス市が再び揺れている。米放送局「FOXニュース」によれば、3日(日本時間4日)にドジャースタジアム周辺で行われた世界一連覇パレードには推定22万5000~25万人が殺到。逮捕者はわずか2人というポジティブデータとは裏腹に交通網は完全にマヒし、市中心部は大混乱となった。 この〝カオス〟を解決すると期待されていたのが、同市内のダウンタウンにあるユニオン駅とドジャースタジアムを結ぶ総工費5億ドル(約780億円)のゴンドラ建設計画だ。2018年に構想が浮上し、ドジャースが「革新的プロジェクト」と期待を寄せたもののAP通信によれば、ロサンゼルス市議会はついに「交通当局へ計画中止を求める決議」を12対1の圧倒的多数で可決。長年の争点だった同計画はまたも「凍結」の危機に立たされた。 支持派は「1時間あたり5000人を運べる」「渋滞を一気に軽減」「環境に優しい」と胸を張る。しかし批判派はUCLAの研究室である「モビリティ・ラボ」が示した〝冷たいデータ〟を突きつける。同研究室によれば、ゴンドラの実際の利用者数は想定より大幅に少なく、車の交通量削減にはほぼ影響なし。むしろ多くのファンは「車でダウンタウンまで行ってゴンドラに乗る」と予測され、渋滞悪化の可能性すら指摘されている。 さらに沿線の低所得地域には巨大な鉄塔が立ち並ぶ「景観破壊問題」が重くのしかかる。非営利団体「ストップ・ザ・ゴンドラ」は「財務計画が曖昧すぎる。最終的に納税者負担になるのでは」と強烈に反対。かつてプロジェクトの一部負担を約束したドジャース元オーナーのフランク・マッコート氏(72)の関与も〝疑念〟を深めているという。 同計画は今年5月にも裁判所が環境影響報告書の承認を却下するなど、法廷でも逆風が続いていた。今回の決議で事実上「白紙」に戻る可能性が高まり、再燃しては頓挫するゴンドラ計画は再び暗礁へと乗り上げる〝負のループ〟が続く。 当初は大谷らスーパースター属するドジャースが生み出す爆発的な人気が「交通インフラ再編」すら動かすと見込まれていたシナリオ。しかし現実は熱狂のパレードが示した〝25万人の渋滞〟を前に、市議会がついに「NO」を突きつけた形だ。大谷効果がポストシーズンを沸かせた一方でロサンゼルスのゴンドラ計画は、絵空事に終わりそうな気配だ。