米ホワイトハウスは3日、同国のスティーヴ・ウィトコフ特使とウクライナの交渉代表ルステム・ウメロフ国家安全保障・国防会議書記が4日に米フロリダ州マイアミで、ウクライナでの戦争終結に向けた協議を行うと明らかにした。 アメリカが提案したウクライナの和平案をめぐっては、前日にロシア・モスクワでウラジーミル・プーチン大統領らとアメリカの交渉担当者らが5時間にわたり協議したが、具体的な成果を得られないまま終了した。クレムリン(ロシア大統領府)は妥協点を見いだせなかったとしている。 モスクワでの協議には、アメリカ側からはウィトコフ氏と、ドナルド・トランプ大統領の義理の息子ジャレッド・クシュナー氏らが臨んだ。 トランプ氏は米ロ協議について「そこそこうまくいった」としつつ、今後どうなるかを語るには時期尚早だと発言。「タンゴは2人で踊るもの」なのでと付け加えた。 一方、ウクライナのアンドリー・シビハ外相は、ロシアは「流血を終わらせる」必要があるとし、プーチン氏は「世界の時間を無駄にしている」と非難した。 トランプ氏は記者からの質問で、プーチン氏が戦争終結を本当に望んでいるとウィトコフ特使とクシュナー氏は信じているのかと聞かれると、「(プーチン氏は)戦争を終わらせたいと思っている。そういう印象を、2人は受けた」と答えた。 ホワイトハウスの発表に先立ち、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は3日、ウクライナとアメリカの交渉団が「数日以内に」協議するだろうと述べていた。 ゼレンスキー氏は3日、ソーシャルメディアに声明文と動画を投稿。「今まさに、世界はこの戦争を終わらせる現実的な機会が訪れているとはっきり感じている」とした。 ただし、交渉については、「ロシアに圧力をかけて後押しされる」必要があると付け加えた。 2日のクレムリンでの米ロ協議は、アメリカがウクライナやヨーロッパの指導者らと数日間にわたって協議した後に行われた。アメリカが提案した和平案をめぐっては、その内容がロシア側の要求に偏り過ぎているとの懸念が上がっていた。 ロシアのユーリ・ウシャコフ大統領補佐官(外交担当)は、「アメリカの提案の一部はおおむね受け入れ可能に思えるが、さらなる議論が必要」だとしつつ、ほかの点についてはプーチン氏が公然と批判したとしている。 ウシャコフ氏はそれ以上語らなかったが、ロシアとウクライナの間には少なくとも二つの主要な争点が残っている。ロシア軍に占領されたウクライナ領土の運命と、ウクライナに対する安全の保証だ。 ウクライナとヨーロッパのパートナー国は、和平合意が成立したとしても、ロシアが将来、再び攻撃するのを抑止する最も効果的な方法は、ウクライナを北大西洋条約機構(NATO)に加盟させることだと考えている。 ロシアはこの提案に強く反対しており、トランプ氏もウクライナをNATOに加盟させる意図はないと繰り返し示唆している。 クレムリンは3日、モスクワでの協議で「重要な問題」として取り上げられたのはウクライナのNATO加盟の見通しだったと明らかにした。 ロシアのウシャコフ大統領補佐官は、ロシア軍が最近戦場で成功を収めたことで、交渉におけるロシアの立場が強化されたことをほのめかした。 ロシア兵は「和平調停への道筋をめぐる我々の外国のパートナーの評価を、より適切なものにすることに貢献した」と、ウシャコフ氏は述べた。 米交渉団のクレムリン訪問に先立ち、プーチン氏は軍服姿でロシア軍司令部を訪問。ウクライナ東部の戦略的要衝ポクロフスクや周辺地域の制圧について司令官から報告を受けた。 ポクロフスクでは戦闘が続いており、ロシア軍が街全体を支配しているわけではない。それでもロシア当局は、軍事的成果があったというメッセージがアメリカに伝わったと確信しているようだ。 ロシア軍はウクライナ東部で徐々に前進し、ここ数週間で攻勢を強めているとみられる。米シンクタンクの戦争研究所(ISW)のデータを基にしたAFP通信の分析によると、ロシア軍は11月に約701平方キロメートルのウクライナ領土を占領。現在ではウクライナ領土の19.3%を支配下に置いているという。 クレムリンは3日、プーチン氏は「必要な限り何度でも」アメリカと協議する用意があると表明した。 米ロ関係がより友好的なものになる一方で、ロシアとヨーロッパの溝は広がっている。 プーチン氏はヨーロッパについて、ロシアとアメリカの関係を妨害し、ロシア政府が受け入れられない要求を提示し、和平プロセスを阻害していると非難している。ウィトコフ氏やクシュナー氏らとの協議の直前には、プーチン氏はモスクワで開催されたフォーラムで、欧州との対立は望まないが、「戦争の準備はできている」と述べた。 イギリス政府関係者は、「和平を真剣に考えていない大統領による、クレムリンの新たなたわ言」だと、プーチン氏の発言を一蹴した。 マルク・ルッテNATO事務総長は、ベルギー・ブリュッセルで3日に開かれたNATO外相会議で、和平交渉が行われているのは前向きな動きだとしつつ、ウクライナは「戦いを継続するために最も強い立場」に置かれる必要があると述べた。 欧州連合(EU)加盟国はこの日、2027年末までにロシア産ガスへの依存を完全に断つことで欧州議会と合意に達した。 欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「新時代の幕開けだ」と称賛した。この合意により、ロシアとの長期的なガスパイプライン契約は2027年9月から、液化天然ガス(LNG)の長期契約は同年1月から、それぞれ禁止される。 「我々は欧州のエネルギー安全保障と自立を選んだ。もはや脅迫も、プーチン氏による市場操作もない。我々はウクライナを強力に支持する」と、EUのダン・ヨルゲンセン・エネルギー委員は3日に述べた。 欧州委員会はまた、ロシアの戦争が続く中でウクライナの軍事と基本サービスを支援するために900億ユーロを拠出する計画を提案している。 この計画の実現には、ウクライナのためのいわゆる「賠償ローン」にブリュッセルの金融機関に保管されているロシアの凍結資産を充てることにベルギーが同意するか、国際的な借り入れによって資金を調達するかのいずれかが必要となる。 これはウクライナが今後2年間に必要とされる資金の3分の2をまかなうもので、ウクライナのユリア・スヴィリデンコ首相は提案を歓迎している。 ベルギーは、ロシア資産が保管されている決済機関ユーロクリアに対してロシアが法的措置に出た場合に責任を負う可能性を懸念し、計画に反対している。欧州中央銀行(ECB)も、自分たちは「賠償ローン」のバックストップ(防御策)としての役割を担うつもりはないと反対している。 欧州委員会が提案した内容は、当初計画されていた1400億ユーロより小規模だが、ドイツのヨハン・ヴァーデプール外相は、「我々はこれを支持するし、当然ベルギーの懸念も真剣に受け止める」と述べた。 こうした中、米ニューヨークの国連本部では3日、アメリカがほかの90カ国と共に、ロシアに対して「強制的に移送・送還したすべてのウクライナの子どもたちを即時に安全かつ無条件で帰還させ」、このような慣行をやめるよう求める国連決議を支持した。 ウクライナ政府によると、これまでに1万9000人以上のウクライナ人の子どもがロシアへ強制的に移送された。英政府は、ウクライナ人の子ども約6000人がロシア国内の「再教育キャンプ」ネットワークへ移されたと推定している。 国際刑事裁判所(ICC)は2023年、ロシアが占領したウクライナの地域から子どもたちをロシアへと不法に移送しているなどとして、ウクライナ侵攻をめぐる戦争犯罪容疑で、プーチン氏らに逮捕状を出した。プーチン氏とロシア政府は戦争犯罪疑惑を否定している。 (英語記事 Ukraine and US negotiators to meet in Florida after Moscow talks, White House says)