12歳で結婚させられDV被害の「児童婚の花嫁」、死刑免れる イラン

【AFP=時事】イラン司法府は9日、12歳で結婚させられた夫の死をめぐり、死刑が確定した女性死刑囚について、被害者の遺族から「許し」を受けたため、死刑を執行しないと発表した。 現在25歳のゴリ・コウカンさんは、パキスタン、イラン、アフガニスタンに居住するイラン系民族バルチ人。今月死刑を執行される予定となっていた。 コウカンさんは12歳で強制的に従兄(いとこ)と結婚させされ、13歳で自宅で助産師や医師が立ち合わない無介助分娩(ぶんべん)によって息子を出産した。 「農家の嫁」として農作業に加え家事をさせられた上、長年にわたり身体的・精神的暴力を受けてきたとされる。 そして2018年5月、夫は18歳のコウカンさんと5歳の息子を殴打した。 コウカンさんは助けを求めたが、駆け付けてくれた夫の従兄弟、モハメド・アビルさんと夫の間で争いとなり、最終的に夫が殺害された。 イランの人権状況担当の特別報告者や、女性・少女差別に関する作業部会のメンバーを含む国連の人権専門家らは先週、「コウカンさんの事件は、イランの刑事司法制度において、児童婚やドメスティックバイオレンス(DV)の被害者となった女性が直面する組織的な性差別を如実に表している」として執行停止を求めた。特別報告者らは国連人権理事会などによって任命されるが、国連を代表する立場にはない。 司法府の公式ニュースサイト「ミザン・オンライン」は、「司法制度の仲介と被害者の両親の同意によって彼女は許された」と述べ、書類に署名する儀式の動画を掲載。被害者の両親がコウカンさんに「新しい人生」を与えたと述べた。 イランのシャリア(イスラム法)で、故意による殺人は「同害報復刑」の対象となるが、被害者の相続人が「血の代償金(ディヤ)」を受け入れれば、死刑を免れることができる。 国連の専門家らは、コウカンさんの命を救うには、「血の代償金」を集める必要があると述べていた。 コウカンさんの弁護人、パランド・ガラダギ氏はインスタグラムへの投稿で、「血の代償金」は当初の約10万ユーロ(約1820万円)から約8万ユーロ(約1460万円)に減額され、個人や慈善団体からの寄付で到達したと報告した。 ミザン氏の報道は、血の代償金には触れていない。 ノルウェーに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマンライツ(IHR)」のマフムード・アミリモガダム代表は、「彼女の事件は、死刑に直面しているイランの多くの女性が経験する性差別と構造的暴力を反映している」と述べた。 IHRによると、イラン当局は今年だけで40人以上の女性を処刑しており、その多くは貧困、児童婚、DVの被害者だという。 アミリモガダム氏は、「裁判では、コウカンさんの結婚当時の年齢、DVの履歴、逮捕・尋問中に弁護人との面会ができず、当時読み書きができなかったという事実が全く考慮されなかった」と述べた。 IHRは、コウカンさんと同じく死刑を言い渡された夫の従兄弟のアビルさんは「依然として死刑囚監房で拘束されており、処刑の危険にさらされている」と述べた。 アムネスティ・インターナショナルなどの人権団体によると、絞首刑を採用しているイランの死刑執行数は、中国に次いで世界で2番目に多い。【翻訳編集】 AFPBB News

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