神戸市中央区のマンションで8月、会社員の女性(24)が刺殺された事件は11日、殺人容疑などで逮捕、送検された谷本将志容疑者(36)の勾留期限を迎え、神戸地検が刑事処分を決める。容疑者は女性と面識がなく、事件2日前から一方的にストーカー行為を続けていたとされる。知らぬ間にストーカーの標的とされた場合、身を守る術はあるのか。専門家が提唱するのは、「ダブルターン」と呼ばれる手法を使った危険回避だ。 「犯行の手口が異様だ」。今回の事件をこう分析するのは防犯アドバイザーの京師美佳氏。谷本容疑者が過去にも別の女性へのストーカー事件で逮捕歴があった経緯を踏まえ、「繰り返すごとに犯行が凶悪化、悪化している」とし「女性を襲うというより、追跡して襲うことに執着していると感じる」という。 捜査関係者によると、谷本被告は事件2日前の8月18日朝、JR元町駅(同区)付近で女性を見かけ、職場まで尾行。その後も女性の出勤、退勤の時間帯に合わせて尾行したり、職場周辺を見張ったりしていた。事件当日も、職場から電車を2度乗り換えるなどして帰宅する女性の後を約1時間にわたりつけていた。 ■「ながらスマホ」はやめる 京師氏は「普通に生活していると、後をつけられていることに気づきにくい」としたうえで、尾行されていると感じた際には、2回角を曲がる「ダブルターン」と呼ばれる手法が有効だとする。「2つ角を曲がってまだ後ろにいることはほぼない。たまたま同じ方向の可能性もあるが、その時点でコンビニエンスストアなど人が集まる場所に逃げるべきだ」と呼びかける。 歩くときにスマートフォンを操作する「ながらスマホ」などは、不審者に気づきにくくなるため、やめるべきだとも指摘している。 ストーカー被害の相談件数は2万件前後で高止まりしている。警察庁によると、平成23年は1万4618件にとどまったが、翌24年は1万9920件と急増。その後も2万件前後で推移し、令和6年は1万9567件。同年におけるストーカー規制法違反容疑での摘発件数は、同法が施行された平成12年以降最多となる1341件に上った。 警察は相談を受けた事案で被害防止に向け対策を強化してきた。25年以降、警察署がストーカーの相談を受けた際に署と警察本部が情報共有する仕組みを導入。昨年5月には警察庁が事案の危険性を過小評価していないかを注意するよう各都道府県警に通達した。