「医師としてあってはならない」“みとり医”で死因偽装 信頼揺るがす病院の『殺人隠蔽』が社会に問いかけたのは… みちのく記念病院殺人隠蔽事件【青森・激動2025】

激動2025、3回目のきょうは「病院の殺人隠蔽事件」です。 病院の責任者が死因を偽り、殺人事件を隠蔽した前代未聞の事件は、社会に大きな問いを投げかけました。 八戸市のみちのく記念病院の患者の間で起きた殺人事件から、およそ2年。 ★青森放送 木下玲斗 記者 「理事長が、家から捜査員とともに出てきました」 ★青森放送 成田栞寿 記者 「捜査員に連れられて、医師の男が出てきました」 医療法人の当時の理事長と、主治医が逮捕されました。 患者の命を救うはずの医師にかけられたのは、殺人事件を隠した疑いでした。 前代未聞の事件に、衝撃が走りました。 ★近所の人 「ちゃんと、すぐ警察を呼べばよかったのにね。何か隠したいことがあったのか分からないけど」 ★別の入院患者の家族 「びっくりしました。私、やっぱりここは、そういう病院だったって」 発端は、精神科の患者が、同じ部屋の患者を歯ブラシで刺して殺害した事件です。 警察への正式な通報はなく、死亡の8時間後、内部通報で事件が発覚しました。 遺族には、死因を「肺炎」と偽った、うその死亡診断書が渡されていました。 RABの独自取材で、偽装の核心が明らかになります。 ★みちのく記念病院 関係者A 「死亡診断書を書いて署名した医師は、『認知症』の疑いがありました」 「事件当日、医師として勤務していたものではなく、みちのく記念病院の入院患者として病院にいた人物です」 認知症を悪用して、死亡診断をさせていたのか。 この医師は「みとり医」と呼ばれていました。 ★みちのく記念病院 関係者A 「直ちに119番されていれば、八戸市民病院などに救急搬送され、被害者は助かった可能性が高いと、病院内のどの職員も言っています」 「死因を偽るということは、医師としてあってはならないことです」 「何のために、医師だけが人の死を決められるのでしょうか。極めて疑問です」 みとり医の名前が書かれた死亡診断書は、200枚以上。 死因の7割が「肺炎」でした。 ★みちのく記念病院 関係者B 「いま騒がれている隠蔽は、いまに限らず、過去ずっと前からありました」 「字が書けなくて、2人羽織で書かせていたことも、正直、見ていました」 「それも院長の指示で、逆らえない状況でした」 「みとり医」は少なくとも3人。 行為は、常態化していました。 ★青森放送 木下玲斗 記者 「元理事長の男が、裁判所へと入っていきます」 なぜ、殺人事件を隠したのか。 裁判で語られた動機は――。 「病院を守りたかった。悪い評判は作りたくなかった」 うその死亡診断書は、元理事長の指示で、 看護師の手の上に、認知症の医師の手を置き、書かれていました。 裁判所は、 「病院ぐるみの不正行為で、医療への信頼を大きく揺るがした」 などと厳しく非難し、 懲役1年6か月、執行猶予3年を言い渡しました。 県は9月、医師の勤務を把握せず、うその報告をするなど、 適正を欠く運営があったとして、医療法人に改善措置命令を出しました。 ただ、チェック体制の甘さも浮き彫りになりました。 ★八戸市保健所 北村政則 副所長(当時) 「死亡診断書の部分まで、立ち入り調査で確認できていたかというと、実際には、そこまで見られていなかった」 病院関係者は、再発防止のためには、行政監督の改善が不可欠だと訴えます。 ★みちのく記念病院 関係者 「令和7年度の立ち入り検査も、3か月前に日程が通知されていました」 「これでは、不正は見抜けません」 「死亡診断書を、誰が書いているのか」 「国のマニュアルにない項目でも、県や市が独自に検査すべきです」 『地域医療の最後の砦』と言われる病院で起きた隠蔽事件は、 医療の透明性と、行政監督の体制に大きな課題を突きつけました。

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